彼の部屋

〜〜〜将臣〜〜〜


「将臣くんの新居って、ほーんと何もないよねぇ!」
「部屋に招待して、開口一番これかよ」
 コーヒーをいれながら、将臣は苦笑する。
 将臣がひとり暮らしを始めて初めてのお宅訪問。
 何もないらしすぎる部屋に、望美は感心すらやら呆れるやら。第一印象をずばり口にした。
「私も見習わないとなあ。棄てられないものがいっぱいあるもの! よくこんなに物を貯められるなあって、自分でも呆れるぐらいだよ」
「まあ、もの持ちが良いってことだろ? おら、コーヒー」
「有り難う」
 ピンクのマグカップに入れられているドリンクを見ながら、望美は目を丸くする。
 将臣に似合わない。
「どうしたのこれ?」
「百均だよ百均! お前がよく来るだろうと思って、適当に買ったんだよ」
 将臣が少しむきになるのが可愛い。望美はにんまりと幸福の笑みを浮かべた。
「有り難う。大事に使う」
「お前の物持ちの良さは折り紙つきだろ? 大事にしてくれるのは解ってる」
 将臣は望美の横にどっかり腰を据えると、長い脚を持て余すかのように胡座をかいだ。
 横に将臣がいる安心感と、男らしいほのかな薫りとセクシャルな雰囲気への高まりで、望美は訳が解らなくなった。
 -----落ち着かない。
 四六時中、傍にいたいはずなのに、全くと言っていいほど落ち着けない。
 いつの間にか、自分を追い越して、立派な大人になってしまったような気がする。
 それが寂しいような、嬉しいような、言葉では表現出来ない感情が渦巻いてしまう。
「望美?」
 将臣に顔をじっと見つめられ、望美は赤面のなかで何とか会話に参加する。
「そ、そうだね。私は物持ち良いもん」
 強引に起動修正を計り、将臣に深くは詮索されないようにした。
「だろ? 俺も物持ちが良いもんあるんだぜ?」
 将臣は窓から覗く空を見上げながら、幸福そうに瞳に笑みをたたえる。
「お前」
「え?」
「結局、ガキの頃から、お前だけは傍に置いて置きたかったんだよな、俺は。だから俺がずっと物持ち良かったのは、お前だな」
 照れてしまうようなことをストレートに言われて、望美はほうけたような、少しズレたにんまり顔を浮かべる。
「わ、私の一番の物持ちが良いものも、将臣くんだよ…。これだけは変わらないよ」
 嬉し恥ずかし照れ笑いをしながら、望美はカフェオレにしてもらったコーヒーを、やたらめったらスプーンでぐるぐるかきまわしてしまった。
「お互いに、赤ん坊の時から大切にしてきたものだからな。だろ?」
 将臣が確認するように言うものだから、望美はくすりと吹き出してしまう。
「そうだね、うん。私たちは産まれてからずっと、絆を持ち続けていたんだものね」
 望美が確信ある笑みを浮かべると、将臣はマグカップを置き、望美の躰を引き寄せてくる。
 気まぐれで突然な行動に、望美はドキドキせずにはいられない。
「ちょうどいいよな、俺達。物持ちが良すぎるお前と、余り物に執着しない俺とのバランス」
「そうだね。物の数はスッキリするかもしれないね」
 望美は一理あると、笑いながら頷いてみせる。将臣もまた笑いながら、望美の躰を抱き寄せた。
 一人暮らしには少しばかり広すぎる将臣の部屋。
 眩しい陽射しが入り込み、素敵な部屋に思える。だが、シンプル過ぎて、温かみを感じない。
「ひとりには広いね。2DKだなんて…」
「家賃は安いんだぜ。新築じゃねぇからな」
 将臣は腕の中に望美を強く閉じ込めると、耳たぶを甘く噛む。
「…んっ…」
 背筋がぞくぞくとする感覚に、望美はまだ馴れなくて、甘い吐息を舞上げる。それを面白がっているように、将臣は熱い吐息を吹き掛けてくる。
「…やめてよ…」
 抵抗をいくらしても、説得力なんてありはしない。望美の声は媚びるように甘いのだから。
「やめられねぇよ。もう、譲の目もねぇしな。お前と思う存分にヤレる」
「もう、知らないっ!」
 抵抗したくても出来ないぐらいに、将臣は魅力的で、抗うことなんて、望美には出来ない。
「…こうやって、何も気にせずにお前を抱きしめていられるのが、俺には嬉しい」
「うん…。私も気兼ねなくこうしていられるのが、凄く嬉しいよ」
 望美の首筋に唇を押し付けながら、将臣はブラウスのボタンをひとつ、ふたつを外してくる。
 開いたところから、将臣は手を入れると、下着の上から、望美の胸を掴み始めた。
「…やっん…。まだ、お日様が出ているよ…」
「んなこと、関係ねぇだろ?」
「でも…あっ…!!」
 尖りきった乳首を、将臣の指先がくりくりと円を描くように愛撫してくる。その甘さに、望美はとろとろに溶け出してしまいそうになっていた。
「…ダメっ…! したら、帰りたくなくなっちゃう…っ!」
 望美の切実な想いが溢れ出してしまう。
 帰るのが切なくて哀しくなるから。
「じゃあ帰らなければいいんだよ…」
 将臣は掠れた声で囁くように言うと、望美の脚を撫でる。
 そこから黒いタイツと下着が抜き取られた。
 スカートの下は、あられのない姿になってしまっている。
 恥丘をすっと撫でてくれる感覚がなまめかしかった。
「…やっん…!」
 花びらの表面を撫でられるだけで、恥ずかしい水音が響き渡った。
 将臣はくすりと笑うと、望美の濡れた襞の内側を指先で押し広げてくる。
「ぐしょぐしょに濡れてる…。これじゃあ帰られないだろ?」
「あっ…!」
 将臣は、クッションを置いている部分に望美を押し倒す。
 頭の部分だけがクッションで、躰はフローリングの状態だ。
「フローリングは冷たいよ…」
「俺が温めてやる」
 将臣は自分のシャツを脱ぎ捨てると、剥き出しになった膚で望美を強く抱きしめた。
 鼓動を直に感じ、望美は甘酸っぱい気分に浸る。
 唇を深く奪われれば、全身に温もりが流れいく。
「温かいだろ?」
「うん、あったかい〜」
 望美がぴったりと膚を寄せると、将臣は乱れた衣服を直してくれる風もなく、望美の熱い部分に指を這わせてくる。
「あ、んんっ!」
「お前のここもすげぇ温かいぜ?」
「やん、あああっ!」
 将臣は器用な指先で、望美の熱い部分を擽ってくる。
 少し焦るように肉芽を擽った後、将臣は望美の胎内に指を入れてきた。
「やあんっ!」
 とろとろに溶けた内壁を擽りながら、将臣は自分のジーンズを下げると、準備していたスキンを素早くつけてくる。
 まるで焦るように将臣は躰を重ねてくると、指を抜く。
「ま、将臣君?」
「…我慢出来ねぇ…」
 将臣は興奮したように熱い息を吐くと、望美の胎内に一気に入り込んでくる。
「…あ、あ、ああっ!」
 望美は力強い将臣の熱い楔に、思わず嬌声を上げた。
 頭が痺れるぐらいに感じる。
 じんじん痺れるような甘いうずきに、望美は腰をグラインドさせながら、将臣をとことんまで求めた。
 好き、すき、スキ、SUKI…。
 あらゆる種類の将臣への「スキ」が渦巻き、望美は将臣の腰に足を巻き付け、締め上げる。
「…望美…っ!」
 将臣の苦しげな顔を見せつけられると、自分までがエクスタシーを感じた。
「ああ、あああっ!」
 お互いの膚が熱を産み、快楽産みながら、ぶつかる。
 もう何も考えられないぐらいに、将臣に感じて。
 とことんまで貪って欲しくて、貪りたくて。
 望美は逞しい膚に爪を立てる。
「ああ、あああっ!」
 ふたり、獣になりながら、一気に高みに登り埋める。
「ああっ!」
 望美の躰が快楽に弛緩し、将臣もまた躰を仰け反らせる。
「…クッ…!!!!」
 後はふたりで、愛の楽園に行けばいい。

 まだ息が整わず、胸が上下している。
 将臣は望美の唇に軽くキスをすると、耳朶にそっと唇を寄せる。
「…一緒に暮らそう。俺たちなら部屋の具合が丁度ピッタリになるだろ? 俺の殺風景な部屋を、お前の荷物で満たしてくれ」
 望美は幸せが全身に満ちるのを感じながら、将臣にそっと頷いた-----
「一緒に暮らそう…」



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