今年も神社の夏祭りだ。 大地は神社の氏子であるから、色々と手伝いに忙しい。 今年も御守りを授ける社務所でアルバイトをするのだという。 かなでも手伝いをしたことがあるが、なかなか面白かった。 今年もまた大地とふたりでアルバイトをする。 アルバイトの時間が終わったら祭りを楽しむ予定にしている。 毎年、この行事がとても楽しみになっていた。 浴衣を着たりして、逝く夏を惜しむのもまたノスタルジックで良い。 かなでの髪も一年目よりは伸びて、綺麗にアップが出来るようになっていた。 かなでは巫女の装束に身を包む時に、髪を軽くアップした。 浴衣を着る時に便利だからだ。 華やいだ気分になれるのも良かった。 今年もふたりで待ち合わせて、神社に手伝いに行く。 かなでは浴衣を持って神社に向かう。 ハルの祖母が、着付けを手伝ってくれるのだ。 それがとても有り難い。 かなでも祖父母に甘えていた口なので、横浜の祖母として慕っているのだ。 「今年のお祭りも楽しみです」 「そうだね。楽しみだ」 かなでは笑顔になりながら、大地を見つめる。 大地とこうしているだけで楽しかった。 「今年もお世話になります」 「はいー」 かなでが声を掛けると、ハルの祖母がいそいそとやってきてくれた。 「あらあら。あなた方は本当に仲が良いわねえ」 微笑ましいとばかりに、ハルの祖母は言う。 かなでと大地はお互いに幸せな気分で顔を見合わせた。 互いに神職の格好をしてから、ふたりは社務所に入る。 並んで座ると、ハルの祖母がやってきた。 「ふたりで並ぶと本当にお似合いね」 ハルの祖母はしみじみと言うと、デジタルカメラでふたりの様子を撮影した。 「はい。綺麗に撮れたわ。もう一台」 大地がデジタルカメラを預けていたらしく、ふたりでもう一枚撮影をしてくれた。 「有り難うございます」 大地は礼を言うと、デジタルカメラを受け取った。 「ひなちゃん、毎年の記念だ」 「はい」 大地がにっこりと微笑むものだから、かなでも微笑む。 すると神主もやってきた。 「君達が結婚する時は、是非、神前でお願いしたいね。もちろんうちでね」 「かなでちゃんは白無垢が似合うでしょうからね」 ハルの祖母に言われて、かなでは嬉しさと照れ臭さでつい真っ赤になってしまった。 「そうですね。いつか」 大地がフッと魅力的に笑って言うものだから、かなでは恥ずかしくてしょうがなかった。 ふたりはちょこんと社務所に座って、御守りを売る。 大地が来るとやはり商売繁盛だ。 特に女性が多くやってくる。 相変わらずの集客力は健在だ。 しかも、大学で知り合った女子学生が多いのが気になる。 かなでは恋人だけれども、ついほんのりと嫉妬をしてしまう。 それはやはり、どうしようもないぐらいに大地を好きだからだ。 つい大地のことを考えずにはいられなくなる。 大地の恋人であることは確かだし、とても大切にして貰っている。 その上、愛されていることも解ってはいる。 だが、やはりほんのりと嫉妬をしてしまう。 大地を誰にも盗られたくはないという想いが強いのだ。 毎年のようにちらりと見ていると、大地がスッと目を細めてこちらを見た。 意識をし過ぎていることがバレているのだろう。 かなでは恥ずかしくて、俯いてしまった。 すると毎年と同じように、かなでの所に男子たちが御守りを買いにやってくる。 恐らくは、大地の列が女子たちでいっぱいなので、致し方がないんだろう。 だが、何故か大地が女子の接客の合間にちょこちょこと手伝ってくれる。 かなでが忙しいのでフォローをしてくれているのだろうと、ぼんやり思っていた。 かなでは、大地が手伝ってくれるのが嬉しくて、つい笑顔になってしまう。 そうすると余計に大地が手伝ってくれた。 本当に有り難い恋人だと、かなでは思わずにはいられなかった。 「あら、小日向さんと榊くん!」 明るく優しい声に顔をあげると、そこにはお馴染みの理事長一家がいた。 日野香穂子も吉羅も浴衣姿で子供たちの手を引いている。 お似合いであると思うと同時に、本当に羨ましい憧れの家族だと思う。 「家族の御守りを頂きたいの。みんなお揃いの無病息災で。あ、息子と暁彦さんは青で、娘と私はピンクでね。後は家内安全の御札を」 「はい」 かなでは嬉しくて、いそいそと御守りを準備した。 「ようこそお参り下さいました」 「はい、有り難う」 日野香穂子の笑顔に、かなでもつい笑顔で返した。 「あなたたちは本当に仲が良いわね。お似合いね」 香穂子は優しく言うと、にっこりと微笑んでくれた。 「有り難うございます」 大地がお礼を言えば、理事長夫妻は微笑む。 幸せそうな一家は、綿菓子やお面を買いに、夜店へと行った。 そのタイミングで交代となる。 「ご苦労様、大地くん、かなでちゃん。さあ、かなでちゃんは浴衣に着替えましょうか?」 「有り難うございます。お願いします」 かなでが浴衣に着替えに行く間、大地もまた着替えに行った。 浴衣姿を喜んでくれるだろうか。 かなではほんのりと期待しながら、浴衣に着替えた。 浴衣に着替えた後、かなではほんのりと化粧をした。 折角の和装だから、綺麗にしたかった。 折角、日本女性として生まれたのだから、和装の時ぐらいは華やぎたい。 いつも和装をする度に、かなでは日本人に生まれて良かったと思うのだ。 化粧も終わり、花は水嶋家を出た。 すると大地も男らしく涼しげな浴衣を着て待っていてくれた。 本当に大地の浴衣姿は素晴らしい。 かなではついうっとりとみつめてしまう。 こんなにもうっとりとするぐらいに素敵だなんて、見ていても飽きない。 大地は眩しそうにかなでを見つめた。 「ひなちゃん、今夜は本当に綺麗だよ。このまま連れさってしまいたくなるぐらいだ」 大地はうっとりとするような甘くて艶やかなまなざしで見つめた後で、かなでを見つめる。 こんな風に官能的に見つめられると、胸がいっぱいになってしまう。 ここまで綺麗にしてくれるなんて、浴衣の魔法は素晴らしい。 「ひなちゃん、行こうか」 大地は離さないとばかりに、かなでの手をしっかりと握り締めてくれた。 「さてと、ふたりで色々と見て回ろうか」 「はいっ!」 ふたりはお互いに顔を見合わせると、熱く見つめ合う。 「ひなちゃん、今夜はとても綺麗だよ…」 「…有り難うございます…」 今夜の大地は本当に素敵過ぎて、かなではついうっとりと見つめてしまう。 「大地先輩も素敵ですよ…」 「有り難う…」 大地は礼を言うと、かなでの手をしっかりと掴んで、夜店へと向かった。 夜店で色々なものを冷やかして、それはもう楽しい夏祭りだった。 ふたりは手を繋いで家に帰りながら、暖かで情熱的な気分になる。 「今日は本当に楽しかったです。小さな子供たちと騒いだのも楽しかったし、日野さんにも、理事長にもお会いすることが出来ましたし…」 「そうだね。だけど…」 大地はフッと微笑むと、艶のある笑みをかなでだけに向ける。 「今日のひなちゃんがとても綺麗なのが、俺には嬉しかった…」 「大地先輩…」 花ははにかんで微笑むと、大地を真直ぐ見つめる。 「ひなちゃん、今夜、俺のマンションに来ない…?」 大地の官能的な申し出に、かなではそっと頷く。 官能的な熱い夏の夜が始まる。 |