こんなにも暑くなると、水が恋しくなる。 プールに入って涼みたい。 海は慣れてはいないから、あくまでもプールだ。 そんなことを考えてしまう。 ゆったりサッパリしたい。 かなでは海かプールに大地と遊びに行きたいと、のんびりと考えていた。 大地とのデートの帰り、偶然にも海の話題になった。 「大地先輩、今度、大学のみんなで海かプールに行こうかという話になっているんです。横浜に来てから、2年間はコンクール漬けで海にもプールにも遊びに行かなかったから、1日ぐらいは行こうかってことになったんです」 かなでが楽しい気分で話をしていると、大地は急に不機嫌な表情になった。 大地にはかなり珍しい表情だ。 「…ひなちゃん、海もプールも行かないほうが良い。危ないから。俺が良いプールを知っているから、そこに一緒に行こう」 「はい」 どうして大地がみんなと一緒に行くのを嫌がるのか、かなでには分からない。 大地と行くのも仲間で行くのも同じなのに。 ただふたりで行けば、甘い時間を過ごす事が出来ることは間違いないのだが。 「俺と一緒じゃないと、海やプールは行かないほうが良いよ。危険だから。行きたかったら、俺が一緒に行くから」 大地は握り締めていたかなでの手に更に力を込める。 その強さに、かなではドキドキした。 仲間と一緒に行くよりも、甘いときめきが得られるのは間違いないだろう。 「…私も大地先輩と一緒に行きたいです…」 「うん、行こうか。ひなちゃんが大丈夫な日を教えて」 「はい」 「ふたりのスケジュールがあう日をセッティングするよ」 大地は笑顔で言うと、かなでを官能的に見つめた。 「楽しみにしていますね」 「俺も楽しみにしているよ」 ふたりはお互いに見つめ合うと、にっこりと微笑みあった。 暫くして、大地からのお誘い電話があり、次の日曜日にプールに行くことになった。 そうなると大変なのが水着選びだ。 かなでは慌てて、ニアに着いてきて貰い、横浜駅近くのファッションビルに水着を見に行った。 余りにたくさんの種類の水着があり、かなでは驚いてしまう。 「こんなにも沢山の水着があると目移りしちゃうね…」 「だが、榊大地が好きなのは、気品があって凛としてはいるが何処か可愛い水着だと思うぞ。後、余り露出しないものが良いな…。かといって、余り子供っぽいものもな…」 「うん、そうなんだ…」 ニアの意見を聞きながら、かなではかなりの種類の中から水着を選び出す。 「これならどうだ? 大人びて見えて、何処か可愛らしさもある。パレオも着いているな…」 「…これにしようかな」 さわやかな白に、花の可愛らしいプリントが着いたデザイン。パレオも着いているので安心だ。 「ニア、これに決めるよ」 「ああ。榊大地もとても喜ぶだろう。後で襲われないように気をつけることだ…」 ニアが色気のある声で笑うものだから、かなでは恥ずかしくて仕方なかった。 大地は本当に気に入ってくれるだろうか。 気に入ってくれたら、本当に嬉しいのに。 「…榊大地に襲われないように、せいぜい気をつけるようにな…」 ニアが喉をくつくつ鳴らしながら笑うものだから、かなでは恥ずかしくてしょうがなかった。 大地と一緒にプールに行く日、かなでは夏らしいワンピースを着て出掛けた。 子供の頃にプールに行った時とは違う緊張が、かなでを包み込む。 決して嫌な緊張ではない。 むしろ息苦しくなるような甘い緊張だ。 かなでが待ち合わせ場所で待っていると、大地が爽やかさと官能を滲ませながら、現われた。 「ひなちゃん、お待たせ」 「はい」 「じゃあ行こうか」 「はい」 ふたりはしっかりと手を繋ぐと、プールへと向かった。 大地が連れて行ってくれたのは、屋内プールだった。 騒がしくなくて、のんびり出来る雰囲気だ。 かなでも、騒がしいよりもこうして大地と楽しくのんびりするほうが良い。 「大地先輩、この雰囲気が気に入りました。嬉しいです」 「君が気に入ってくれて良かった」 大地は優しい笑みを浮かべると、かなでを眩しいほどのまなざしで見つめてくれた。 そんなまなざしで見つめられたら、喉がからからになる。 「じゃあプールサイドで待っているから」 「はい」 かなでは更衣室に向かうと、水着に着替える。 大地は気に入ってくれるだろうか。 そんなことばかり考えるとドキドキしてしまう。 かなでは水着に着替えた後、上からパーカーを羽織った。 やはり堂々と水着姿を見せるのは恥ずかしい。 かなでは緊張しながら、プールサイドへと向かった。 プールサイドには既に大地が待っていた。 大地もパーカーを着ていたが、鍛えられた綺麗な胸元が刺激的で、かなでは息が詰まりそうなぐらいにドキドキした。 かなでは大地に手を振りながら駆けていく。 「大地先輩!」 「ひなちゃん!」 かなでが一生懸命走ると、何もないところについ躓いてしまった。 「あっ…!」 「ひなちゃんっ!」 大地が逞しい胸でしっかりと受け止めてくれたから、かなでは怪我をせずに済んだ。 「…ひなちゃん、慌てなくて大丈夫だよ」 「…ごめんなさい…」 かなではしゅんとうなだれながら、大地のパーカーを握り締めた。 大地は優しくかなでの髪を撫でてくれる。 「…ひなちゃん、落ち着くと良いよ」 「はい…」 不意に大地の逞しい胸が目の前にあることに気付く。 かなでは恥ずかしさと甘い緊張に、心臓を跳ね上げさせ、耳まで真っ赤にさせる。 恥ずかしい。 だけどもう少しだけすがりついていたい。 かなでは矛盾する官能的な感情に、ついうろたえてしまう。 「大丈夫?」 「だ、大丈夫デス…」 「うん、じゃあ行こうか」 大地は明るく言うと、かなでの手をしっかりと握り締めてくれる。 こうしているだけでいつも以上に大地を意識してしまった。 行き交う女性たちが、みな、羨望のまなざしで大地を見つめている。 整った顔立ち、鍛えられているバランスが取れた逞しくも美しいスタイル。 どれを取っても、プロのモデルか何かだと思う。 それに対して自分はといえば、小さい子供のようだ。 全然色気もない。 かなではしょんぼりとした。 「ひなちゃん、一緒に泳ごうか。だけど俺のそばは絶対に離れないように」 「はい」 大地は何処か厳しくかなでに言うと、パーカーを脱ぐ。 かなでもそっとパーカーを脱いだ。 恥ずかしくて、大地のまなざしをまともに見る事が出来なかった。 「ひなちゃん…」 大地は何処か感嘆の声を漏らすと、かなでをプールに誘ってくれた。 ふたりで夢中になって手を繋いで泳いだりする。 本当に楽しい時間だった。 ふと水着姿を熱く大地に見つめられる。 「…ひなちゃん…やっぱり可愛い過ぎて、君の水着姿は誰にも見せたくない…」 大地は低い声で呟くと、思い切りかなでを抱き締めてきた。 息が出来ないぐらい抱き締められた後、プールから上がるように促される。 「…ひなちゃん…。俺のマンションに行こう…。これ以上誰にもひなちゃんを見せたくない…。俺だけで独占したい…」 掠れた艶のある声で囁かれて、かなでは小さく頷く。 「有り難う…。君の水着姿を誰にも見せたくはなかったんだよ…」 「…はい」 大地の甘い甘い独占欲は、かなでを幸せな気分にさせてくれる。 かなでははにかみながら大地に寄り添った。 |