*君と過ごす週末*


 今週末は、吉羅とたっぷりと過ごすことになっている。

 金曜日の夜から、先に吉羅の家に行って待っているようにと言われて、香穂子は吉羅の家で過ごしている。

 とはいえ、吉羅は仕事で遅くなってしまうため、今夜は香穂子一人での夕食だ。

 ひとりでスーパーに行って、夕食を作る。

 ひとりきりだと味気無いのだが、忙しい吉羅と結婚をすれば、このようなことは日常茶飯事だと思ている。

 そうすると、香穂子も満更でもなかった。

 少しくすぐったい気持ちになる。

 くすりと笑いそうになって、香穂子は慌てて引っ込める。

 今日も仕事はとても忙しいのだが、なるべく早く帰ると、吉羅は約束してくれていた。

 食事をして、課題をこなし、お風呂を沸かすと良い時間になっていた。

 だが、吉羅は帰っては来ない。

 恐らくは、仕事が逼迫しているのだろう。

 香穂子は吉羅が激務をこなしていることを知っているから、帰りが遅いことは咎めない。

 ただ、身体を壊さないかと心配なのだ。

 本当にそれだけだ。

 吉羅からメールが携帯電話に入ってきた。

 香穂子は慌てて、メールを見る。

 

 香穂子へ。

 仕事が立て込んでしまい遅くなる。

 先にお風呂に入って、寝ていてくれ。

 吉羅

 

 シンプルで用件しか書いていないメール。

 香穂子は吉羅らしいと思いながらも、ほんのりと寂しい気持ちになりながら、メールを読んだ。

 結局はかなり遅くなるということなのだろう。

 しょうがない。

 香穂子は言われた通りにお風呂に入って、先に眠ることにした。

 お風呂上がりに、楽しみにしていたドリンクを飲んだが、少しも美味しくはなかった。

 恐らくは、吉羅がそばにいてくれないからだろう。

 起きていても、寂しいと思ってしまうから、香穂子は早く眠ることにした。

 ベッドに入ったのだが、広すぎてなかなか寝付けない。

 吉羅とふたりならば、丁度良い広さだと思ってしまうのに。

 吉羅の腕の中で、お互いの温もりを感じながら眠る。

 これ以上に幸せな気持ちになれる瞬間はいつもないと思っている。

 香穂子は、ひとりだけのベッドで何度も寝返りを打ちながら、落ち着かない。

 吉羅に抱き締められていないと、広いベッドでは眠れなくなってしまった。

 それは香穂子にとっては、幸せで切ない気持ちにさせる。

 早く帰って来て欲しい。

 早く抱き締めて欲しい。

 早くおやすみのキスをして欲しい。

 どんどん欲張りになってしまう。

 吉羅はなかなか帰っては来ない。

 それが香穂子には辛かった。

 吉羅と二人で眠るだけでも幸せで、吉羅と一緒にいるだけでも幸せ。

 だから早く帰って来て欲しい。

 吉羅が眠る定位置はちゃんと開けておいて、香穂子眠る。

 まるでそこに吉羅がいるように思いながら、目を閉じる。

 だが、吉羅のロマンティックで大人の男らしい艶やかなムスク系の香りが感じられない。

 勿論、ベッドには吉羅の香りがほんのりとついてはいるが、本人が立ち込めさせる香りは、鼓動が早くなるぐらいにドキドキして素敵なものなのだ。

 それを知っているから、香穂子は物足りなかった。

 ベッドで色々と考えているうちに時間は確実に過ぎている。

 香穂子は、吉羅がこんなにも働いているのが、少しばかり心配だった。

 吉羅が帰って来るまでは待っていようとは思っていたが、余りに遅くて、香穂子は眠くなってしまう。

 いつの間にか、うとうととして、眠ってしまった。

 

 予定よりもかなり遅くなってしまった

 本当は、週末をたっぷりとのんびりと過ごすことが出来ると思って楽しみにしていたというのに、結局はかなり遅くなってしまった。

 仕事が予想以上に立て込んでしまい、忙しかった。

 すっかり深夜になってしまい、吉羅は車を走らせる。

 本当は、貴重な週末を、香穂子と二人で、出来る限り過ごしたかった。

 だが、仕事をかなり頑張ったお陰で、香穂子と二人で、週末をのんびりとたっぷりと過ごすことが出来る。

 それがとても幸せだ。

 早く帰って、愛する香穂子を抱き締めたい。

 早く帰って、愛する香穂子にキスがしたい。

 早く帰って、愛する香穂子を感じたい。

 吉羅は強く感じながら、車を走らせる。

 もうすぐ逢える。

 愛するものと二人だけの週末に向かって、吉羅は車を走らせた。

 

 家に着いたのは、午前1時を回っていた。

 香穂子が迎えに来なかったので、吉羅は寝室に真っ直ぐ向かう。

 寝室に入ると、ベッドの上で真ん丸になりながら、香穂子が安らかな寝息を立てて眠っていた。

 ぐっすり眠っている香穂子の寝顔が、無邪気でとても暖かくて可愛らしくて無防備で、吉羅は思わず微笑んでしまう。

 本当に可愛らしくてしょうがない。

 吉羅は円やかな香穂子の頬にキスを落とした後、バスルームへと向かった。

 香穂子がお風呂を沸かしてくれていたから、スムーズに入ることが出来る。

 吉羅が風呂上がりに飲めるように、ミネラルウォーターも補充してくれていた。

 その気遣いが嬉しい。

 香穂子のそのようなところが、吉羅は愛しくてしょうがなかった。

 ゆっくりと湯槽に浸るよりも、香穂子を抱き締めて眠るほうが良いせいか、どうしても早急に入ってしまう。

 吉羅はバスルームからでた後、ドリンクを片手に、香穂子が眠るベッドルームへと向かった。

 吉羅がベッドの前まで来ると、ぐっすりと眠る香穂子の姿が見える。

 香穂子は吉羅のスペースをきちんと空けて眠っている。

 それが可愛くてしょうがなかった。

 吉羅は、見つめているだけでも幸せでしょうがない。 

 本当に幸せで、飽きない。

 だが、今はそれよりも、香穂子を抱き締めたい衝動のほうが大きかった。

 吉羅は、空けられた自分のスペースに入ると、香穂子を直ぐにギュッと抱き締める。

 香穂子と一緒に眠ると、電気毛布なんて必要がないぐらいに、暖かくて、気持ちが良い。

 本当に最高の温もりだ。

 吉羅は香穂子の温もりが欲しくて、身体を密着させた。

 なんて幸せな瞬間なのだろうかと思う。

 これから月曜日の朝までは、香穂子と一緒にいられるのだ。

 それが嬉しかった。

 香穂子を抱き締めていると、どうしても直接、その肌に触れたくなってしまう。

 吉羅はそっと香穂子の温かで滑らかで優しく綺麗な肌を、じかに触れる。

 こうしていると、幸せすぎてどうしようもなかった。

 触れると、抱きたくなる。

「……ん……」

 香穂子が身動ぎをしながら、ゆっくりと目を開ける。

 吉羅を見つめるなり、寝惚けた表情で見つめてきた。

「……暁彦さん、お帰りなさい……」

 香穂子が起きたことを確認して、吉羅は一気に組み敷いた。

「……えっ!?」

 香穂子は流石に目が覚めたようだったが、吉羅はそれをチャンスにと、その柔らかくて滑らかな身体を愛し始めた。

 幸せな時間のファンファーレには最適だと思いながら。



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