*あなたの生まれた日*


 クリスマスからのホリディシーズンを、大好きなひとと一緒に過ごしている。

 この期間は、一緒に住んで、甘い時間を愉しんでいる。

 このままこの時間がずっと続けば良いのにと思いながら、香穂子は吉羅の寝顔をじっと見つめてしまう。

 こうして同じ朝を迎えるようになった最初の頃は、吉羅は決して香穂子に寝顔なんて見せなかった。

 だが、今は、こうして優しい寝顔を見せてくれる。

 無防備でとても艶やかな寝顔だ。

 今日は、吉羅の誕生日であり、お正月休みの最終日でもある。

 香穂子は今日はどのような一日にしようかと考えずにはいられない。

 バースディプレゼントには、ネクタイピンを買った。

 吉羅のスーツ姿が大好きだだから、そのネクタイに飾って欲しいと選んだのだ。

 探し回って見つけた、ヴァイオリンのネクタイピン。香穂子が一生懸命選んだものだから、早くプレゼントしたかった。

 香穂子がじっと吉羅を見つめていると、吉羅はゆっくりと目をあける。

「香穂子、起きていたのか。おはよう……」

「おはようございます、暁彦さん……」

 吉羅はフッと微笑むと、香穂子を抱き寄せてキスをしてくれた。

 唇が離れると、幸せな気持ちと同時に、どこか名残惜しいような気持ちになる。

「暁彦さんのお誕生日ですね」

「今日は外で食事をするから、君は何もしなくても構わないよ」

「暁彦さんのお誕生日に構わないのですか?」

「私は、君とずっと一緒に過ごすことが出来るだけで、良いんだよ。だから、気にしないように」

「はい」

 香穂子が素直に返事をすると、吉羅はギュッと抱きしめてくる。その抱擁の強さに、愛を深く感じずにはいられなかった。

「香穂子、明日の朝まで、私に時間をくれるかな?」

「はい。勿論ですよ」

「今夜はゆっくりいよう。それが私にとっては最高のバースディプレゼントだからね」

 吉羅は香穂子の艶やかな赤い髪を緩やかに撫でながら、愛しさを滲ませてくる。それが香穂子には何よりも嬉しかった。



 誕生日だからといって、吉羅は特に何も求めることはなく、夕方までふたりでのんびと過ごす。

 これだけで、香穂子は幸せでしょうがなかった。

 こうして二人きりでのんびりと過ごすことが出来ることが、何よりも幸せだと思わずにはいられなかった。


 夕方になり、吉羅に連れられて、レストランに向かう。

 いつもこうして、最上のロマンティックを用意してくれる。香穂子は、吉羅のさり気ないロマンティックな気配りに、感謝していた。

 いつも夢見るようなデートを準備してくれる。今夜も、夜景が美しいレストランに連れて行ってくれる。スーツ姿の吉羅はうっとりするほどに素敵で、香穂子はそれだけでもプレゼントを貰った気分だった。

「私がプレゼントを頂いたみたいですよ。有難うございます、暁彦さん」

「私は君をホリディシーズンに独占すると言う、一番のプレゼントを既に貰っているがね」

 吉羅は穏やかで深みのある微笑みを浮かべる。

 いつもはクールで気難しいイメージしかない吉羅ではあるけれども、香穂子にだけは甘くて柔らかな幸せな笑顔を向けてくれる。

 それが香穂子には嬉しい。

 愛されていると実感することが出来るから。

 ふたりで穏やかに話をしながら、慈しみを満ちたまなざしでお互いを見つめあう。

 これだけで、本当に幸せだ。

 温かな気持ちを交換し合うようなそんな気持ちになれるのが、何よりも嬉しかった。


 デザートが出てきた後、香穂子はバースディプレゼントをそっとバッグから出す。

「暁彦さん、ハッピーバースディ」

 香穂子はそっと吉羅に誕生日プレゼントを差し出す。すると吉羅は目を細めて優しい笑みを浮かべた。

「有難う。開けても良いかな」

「はい」

 吉羅は幸せそうな光を瞳を滲ませながら、吉羅は丁寧にパッケージを外してゆく。

 吉羅は箱を開けて、ヴァイオリンのネクタイピンを見つめると、更に優しい笑みを浮かべる。大切そうに、ネクタイピンに触れてくれる。まるで香穂子に触れるように官能的に触れてくれ、うっとりとした気持ちになった。

「有難う、香穂子」

 吉羅はネクタイピンを、香穂子がプレゼントしたものに着け変えてくれる。その優しさが嬉しかった。

「香穂子、私にプレゼントをもうひとつくれないか?」

「?? 何をですか?」

 吉羅が何を求めているのかが解らなくて、香穂子は小首をかしげる。

「-----今から、言うことに、必ず、”はい”か、”YES”と答えて欲しい」

「はい」

 香穂子は何を求められているのか解らないまま、頷いた。

 吉羅は笑顔で頷いた後、そっとジュエリーボックスを香穂子に差し出してきた。

「-----香穂子、結婚して欲しい」

「-----はい」

 香穂子は息を呑んだまま、ただ頷くことしか出来ない。大きな瞳を見開いたまま、ただ、吉羅を見つめることしか出来なかった。

「有難う。左手を出してくれるかね?」

「はい」

 香穂子が左手を差し出すと、吉羅は薬指に綺麗なダイヤモンドの指輪をはめてくれる。

「これで君は、もう私から離れられないよ」

「はい-----何だか私がすごいプレゼントを貰ったみたいです」

「すごいプレゼントを貰ったのは私だからね」

 吉羅は確信犯のような笑みを浮かべながら、呟く。

 吉羅にとっても、香穂子にとっても素晴らしいバースディになった。



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