今日は一年で一番日が長い日だから、それだけ吉羅と長く一緒にいられるような気がする。 今日もふたりだけの静かにデート。 ふたりで都会のオアシスである公園でのんびりと散歩をする。 今日の香穂子は涼しげなキャミワンピースに、サンダル。髪はおろしている。 まるでリゾートに来ているかのようなスタイルだ。 吉羅と手を繋ぎながら美しい草花を見るのが、最近のデートの楽しみだった。 「こうやってのんびりと暁彦さんと一緒にいられるのが嬉しいです。今日は陽も長いですから、本当にのんびりと出来て幸せです」 「それは良かった」 「陽が長いと長く暁彦さんと一緒にいられるような錯覚が起こります」 香穂子は苦笑いを浮かべると、吉羅に寄り添った。 まだ正式に付き合い始めて浅いせいか、一緒に住んだりはしていない。 そのため、日曜日の夜にはタイムリミットがあるのだ。 しかもいつものデートよりも早い時間で帰ってしまうことになるので、香穂子は切なくなる。 今日ぐらいはいつもよりも遅く帰りたいと思う。 折角、日が長いのだから。 「暁彦さん、今日だけは、空の明るさで家に帰る時間を決めたいんです」 「そうだね。たまには良いか」 吉羅もまた同意をしてくれて、さり気なくその躰に寄り添った。 「有り難う暁彦さん…」 「私も君と一緒にいたいからね」 吉羅は握り締める香穂子の手を更に強く握り締めてくれる。 まるで返事を貰ったような気がした。 「香穂子、今夜はキャンドルの灯が素晴らしいレストランに行こうか。夏至だからキャンドルを灯しながら、食事をしようか」 「有り難うございます」 吉羅はまるでシンデレラをエスコートするようにしてくれた。 まるで夢見心地の気分だ。 日曜日のデートだけは、レストランに行く時間が早い。 今日も5時に予約がしてあるのだ。 まだまだ明るい時間に、ふたりはレストランに入る。 だが今日は夏至だから。 8時ぐらいまでは、ずっと一緒にいられるはずだ。 空を見上げると、まだスカイブルーの美しさだ。 目が染みるぐらいに綺麗なペールブルーだ。 空が美しく姿を変えて、安らかな闇に包まれる様子を、じっくりと見ることが出来る。 それが香穂子には嬉しいことだった。 吉羅と夜景が楽しめる席に腰を掛けて、少し早いディナータイムが始まる。 今日は食事が終わってからも、吉羅とゆっくりと一緒にいられるのが嬉しかった。 「今日はキャンドルの灯だけなんですね。ピアノの生演奏があるのも嬉しいです。本当に有り難いなあって思います。有り難うございます」 香穂子は嬉しくてつい笑顔になる。その様子を吉羅がじっと見つめてきた。 吉羅の魅惑的なまなざしで見つめられてしまうと、胸が苦しくてたまらなくなる。 ときめき過ぎて、息が出来なくなるのだ。 「…あ、あの…」 じっと熱いまなざしで見つめられてしまうと、心臓がいくらあっても足りないのではないかと思うほどに、鼓動は激しくなる。 こんなにも強く見つめられたら、躰が吉羅の視線だけで蜂蜜のように蕩けてしまうではないか。 しかも今夜の吉羅はとても綺麗だ。 キャンドルの光に照らされた吉羅は、なんて美しいのだろうかと思う。 まるでロマンス映画に出て来る俳優のようだ。いや、それよりも素敵なのかもしれない。 香穂子は、吉羅に見つめられるだけで胸がいっぱいになるのを感じた。 琥珀色に輝く吉羅は、なんて素敵なのだろうか。 それ以上に言葉なんてない。 「吉羅さん…本当に綺麗です」 吉羅はフッと笑うと、香穂子の頬に触れた。 「知っているかな。キャンドルに照らされた女性は、とても美しいんだよ。特に君はその肌が美しい。強く見つめたくなるぐらいに綺麗だ…。…このまま抱きたくなる…」 このまま、以降の言葉が囁かれると、香穂子はうっとりとした気分になった。 本当にこのまま抱かれたい。 熱くてとろとろに熱いハニーバターのような恋情が、一気に心に広がった。 恥ずかしいのに、嬉しい。 そんな気分を抱かずにはいられなくなった。 食事が運ばれる。 確かに味もとても素晴らしい。 だが、それよりもずっとキャンドルの光や、空の色が素晴らしいと思った。 やがて太陽が癒しの光を放ち、空は茜色に染まる。太陽の周りは茜色で、まだ名残が惜しいのか、青空が薄いピンクに染まってくる。 キラキラと輝くような美しい薄紫が空を支配する。 茜・青・紫。 空の美しきコントラストに、香穂子は心を奪われていた。 「本当に綺麗ですね。夏の夕方の空が一番好きなんですよ」 「確かに美しいからね」 「はい」 「だが妬けてしまうね。君の心を独占してしまうとはね」 吉羅は麗しく輝く空に向かって恨みがましく言う。 それが香穂子には可愛くてしょうがなかった。 やがて空は闇に包まれ、キャンドルの炎がいよいよ威力を発揮する。 とてもロマンティックで官能的な空間になっていた。 ロマンティックで素敵な時間ももうお終いだ。 明日は月曜日。 香穂子は家に帰らなければならない。 だが、まだまだ吉羅のそばにいたいと思ってしまう。 デザートまで食べ終わり、席を立たなければならない。 何だか胸が切ないほどに痛かった。 ふたりでレストランを出て、駐車場まで向かう。 手をしっかりと結んでいる間も、香穂子は寂しくて切なくてしょうがなかった。 車に乗り込むと、いよいよ横浜の自宅へと向かう。 香穂子は泣きそうなぐらいに寂しい気分になった。 何も話す事が出来ないぐらいに、切なくて寂しい。 「暁彦さん、今日は有り難うございます。このままずっとずっと一緒にいたいと思うぐらいに素敵な時間でした」 「私もだ。今夜はまだ君のそばにいたいと思っているよ…」 吉羅は静かに言うと、愛車を自宅マンションの駐車場に入れる。 いつもならばこのまま横浜に向かうのだが、今夜は吉羅な自宅に立ち寄る。 「…暁彦さん…?」 吉羅は車を停めると、香穂子を抱き締めてきた。 「このまま今夜はうちで泊まらないか…?」 「…暁彦さん」 ロマンティックが溢れた日だから、出来たら一緒にいたいのは 自分だ。 「…はい、一緒にいたいです…」 「…有り難う…」 吉羅は、香穂子のシートベルトを外すと、そのまま抱き寄せてキスをしてきた。 甘いキスに翻弄されてしまう。 こんなにもとろとろな想いは他にはなかった。 頭がぼんやりとしてしまうほどのキスに溺れた後、ふたりで手を繋いで吉羅の家に向かった。 「今夜の君はとても綺麗だからね。思わずずっと見つめてしまっていたよ」 「暁彦さん…」 「今夜は帰したくないと思った。明日の朝、君と一緒に出勤すれば良いんだからね」 「暁彦さん…」 ふたりで出勤するなんて拙いのではないだろうかと思いながら、香穂子は吉羅にそっと寄り添う。 「…ふたり揃って学院に行くのは拙くはないですか?」 「方法ならいくらでもあるから、大丈夫だ」 「…はい…」 まだ灯のついていない部屋に入り、ふたりでキャンドルを出して灯す。 香穂子が置いているアロマキャンドルだ。 その灯に照らされて、ふたりは抱き合う。 ロマンティックで官能的な幸せな時間だ。 キャンドルの炎に照らされて何度となくキスをした後、吉羅は炎を消して香穂子を抱き上げる。 キャンドルの明るさと同じような明るさの寝室のダウンライトをつけた後、吉羅は愛する恋人を愛し始めた。 |