もうすぐハロウィン。 子供たちのお祭。 テレビのアニメーションでハロウィンのことを知って以来、暁慈もあさひも、ハロウィンがしたいと声を揃えている。 今年のハロウィンは休日だから、父親である吉羅もたっぷりと一緒に過ごすことが出来る。 それも子供たちの気分を盛り上げている。 暁慈はといえば、カッコいいとばかりに、黒マントで変装をしたいと意気込んでいる。 あさひはといえば、可愛い魔女の格好がしたいと、盛り上がっていた。 「あさひねー、こういうとんがっちゃ帽子が被りたいのっ!」 「だったら用意しようか。当日は可愛いハロウィンになりそうだね」 「ママはちないの?」 「ママはお料理で忙しいかなあ。でっかいカボチャプリンを作りたいからね」 「でっかいって、どれぐらい?」 あさひが小首を傾げていると、暁慈が腕を使って大きさを示す。 「これぐらいだよー」 「にーちゃ、こーれぐらいかもちれないよっ!」 あさひは兄に負けじと、一生懸命手で円を作る。 「こーれぐらいかもっ!」 負けず嫌いな兄は、更に円を作っている。 腕を円にするだけでは、大きな円は表現が出来ないからと、大きく宙に弧を描いている。 「違うもんっ! もっちょ、もっちょ、大きいんだもんっ!」 あさひは更に大きい弧を描こうとする。 「もっとだよー」 暁慈は背伸びをすると、更に更に大きな弧を宙に描く。 ふたりの様子が本当に可愛くて、香穂子は思わず目を細めてしまう。 本当に息子と娘は、我ながら素直で可愛くて可愛くてしょうがなかった。 「可愛くて大きくて美味しいカボチャプリンを作ろうね」 「ぷりん」 「ぷりんっ!」 ふたりとも手作りプリンは大好きなので、更にはしゃいでいる。 ついこの間までは、運動会のことしか考えていなかったふたりなのに、今度はハロウィンのことしか考えてはいない。 それがまた子供らしくて可愛いと、香穂子は思った。 「ハロウィンの準備をそろそろしようね。飾り付けとかして、可愛いハロウィンパーティにしようね」 「あいっ!」 ふたりそろって手を真直ぐに上げる。 それがまた可愛かった。 ふたりが寝静まってから、吉羅が帰宅をした。 先ずは子供たちの様子を見に行く。 おやすみなさいの挨拶が出来るように帰ってきてくれることが多いが、やはり仕事が立て込んでくるとそうはいかなくなる。 吉羅は子供たちの寝顔を見つめながら、かなり癒されているようだった。 「…疲れが吹き飛ぶね…」 「そうですね」 香穂子は、吉羅の隣に寄り添いながら笑顔で答える。 暁慈のベッドにも、あさひのベッドにも、ハロウィンの衣装が大切に置かれている。 ふたりとも気に入り過ぎて、これを離さなかったのだ。 早く着たくてしょうがないらしい。 「ハロウィンの衣装かね?」 吉羅は微笑ましいとばかりに呟く。 「そうですよ。ハロウィンの衣装をどうしても着たいんですって。楽しみにしていて下さいね。かなり可愛いですから」 親バカなのは香穂子にも解ってはいたが、思わず笑顔で言ってしまっていた。 本当に、世界で一番可愛いハロウィンの妖精なのではないかと、香穂子は思ってしまう。 「楽しみにしているよ。可愛いのは解っているからね」 吉羅も相当可愛いと思っているらしく、このあたりは夫婦そろって親バカだと思わずにはいられなかった。 「楽しみだね、ハロウィン」 「はい」 子供たちが楽しみでしょうがない行事というのは、吉羅や香穂子にとってもかなりの楽しみなことだ。 子供たちの活躍が見られるのが、親としては嬉しいことだった。 「ハロウィンの日は、ランチタイムから家にいられそうだ。二時ぐらいには戻って来られるから」 「それは嬉しいです。有り難うございます」 家族水入らずで過ごすことが出来る素敵なハロウィン。 これほど楽しみなものは他にはないと思った。 ハロウィン当日は、吉羅家がお世話になっている教会でも、子供たち向けにイベントがある。 あさひも暁慈もそれに参加することをとても楽しみにしている。 イベントに使うお菓子入れを持参しなければならないので、香穂子はそれを手作りした。 暁慈はカボチャ大魔王とヴァイオリンをアップリケにして着けてやり、あさひには魔女とヴァイオリンとピアノを 同じようにアップリケにして着けてやった。 ちゃんと名前を刺繍して完成だ。 子供たちがこの袋を持って歩いている姿を想像するだけで、香穂子は幸せな気分になった。 こんなにも幸せで楽しい気分になるのは、子供たちのお陰。それ以上に夫である吉羅暁彦のお陰だと思った。 家族がいて支え合って生きている。香穂子にとっては、それは本当に幸せなことだ。 子供たちの世話や、吉羅と過ごす幸せな時間が、何よりも活力を与えてくれていた。 ハロウィンの当日、香穂子はかなり忙しくなっていた。 前日までに子供たちとリビングを飾り付けをしておいたから、セッティングは大丈夫だ。 朝からは料理の仕込みと、カボチャプリン作りだ。 子供たちは朝から一端にカフェエプロンを掛けて、香穂子の手伝いをする。 どちらもシェフ気分だ。 出来ることか限られているかもしれないが、こうして手伝って貰うことにかなりの意義があると、香穂子は思っている。 それに香穂子自身も、子供たちと一緒に料理をすることがかなり楽しかった。 泡立てて貰ったり、お昼用のサンドウィッチ作りを手伝って貰う。 夜はローストビーフの予定で、その下味付けも手伝って貰った。 ふたりともかなり真剣で、香穂子にはそれが可愛くてしょうがなかった。 小さなシェフたちに手伝って貰いながら、夕食昼食デザート作りに、午前中いっぱい掛かってしまった。 お昼のセッティングを終えたところで、吉羅が帰ってきた。 子供たちは大好きなお父さんが帰ってきたのを察し、玄関先まで迎えにいく。 「とーしゃん」 「おとーさんっ」 ふたりとも、父親と一緒にハロウィンを過ごすことが出来るのが、とても嬉しいらしく、くっついて離れなかった。 久し振りに家族揃ってランチを食べる。 栄養のバランスが考えられたサンドウィッチとスープを親子で食べた後、いよいよお楽しみのハロウィンミサだ。 ふたりはハロウィンの仮装をして、ご満悦だった。 親子四人で、教会へと向かい、子供向けの楽しいミサに参加した。 ゲームあり、礼拝ありのバラエティに飛んだ内容で、親子で楽しめた。 「トリッオアトリーッ」 「トリックオアトリートだよ、あさひ」 暁慈は妹に誇らしげに教える。 教会でキャンディーやクッキーを貰い、本当に嬉しかった。 家に帰ると、温かなハロウィンディナーだ。 みんなで、ローストビーフやカボチャを器にしたグラタン、サラダなどを楽しく食べた後、いよいよパンプキンプリンの登場だ。 「うわー!」 大きなプリンには、チョコレートで描いたカボチャ大魔王が笑っている。 これには子供たちは大騒ぎで、更には吉羅も驚いていた。 「食べるのが勿体ないね」 「食べるために作ったから、一緒に食べましょう」 ふんわりと泡立てた生クリームを上からかけて、みんなに取り分ける。 「おいちー! トリッオアトリーッ」 あさひが叫べば、 「おいしー! トリックオアトリート!」 暁慈も叫ぶ。 幸せなハロウィン。 香穂子はまた幸せが増えたとこころから思った。 |