蛍が見える美しい山郷があると聞き、吉羅に連れていって貰った。 都心から高速で二時間も走れば、静かな山里に到着する。 水が美しく、そして緑が目に鮮やかに息づいているリラックス出来る場所。 日々の様々な悩みなんて、そこにいくだけで一気に吹き飛んでしまいそうになる。 通された旅館は老舗で、用意された部屋からは蛍が見られるという。 素敵な縁側もあり、香穂子はうっとりとした。 しかも部屋には温泉が引いてあり、ゆったりとすることが出来る。 「凄く綺麗ですね! ここならゆったりとすることが出来そうです」 香穂子が喜んで縁側に座ると、吉羅もその横に腰を掛けた。 「随分と気に入ったみたいだね。それは良かった。ここは落ち着くからね。疲れを癒してゆっくりとするのには良いことだと思ってね」 「本当にまさにその通りの場所ですね。ゆったりと出来るのがとても嬉しいです」 「日頃、君はとても頑張っているからね。ご褒美だよ」 「暁彦さんこそ! 毎日、かなりの激務ですから、お疲れでしょう?」 「だから、私もご褒美を貰うんだよ。君と過ごす時間が、私には掛け替えのないご褒美だからね」 「私もです…」 ふたりで顔を見合わせて笑顔になった後で、香穂子は吉羅に寄り添う。 それがとても楽しくもあり、幸せでもある。 「蛍がメインではあるが、向日葵畑も有名でね。一緒に向日葵を見に行こうか」 「有り難うございます。私も向日葵が大好きです」 「じゃあ、今から早速、行こうか」 「はい」 吉羅が立ち上がると、香穂子もそれに続く。 吉羅とのんびりと楽しむこの連休は、何よりも幸せだと思った。 吉羅は、旅館から車で10分ほど走らせたところにある向日葵畑に連れていってくれた。 「うわあ!」 畑にはびっしりと向日葵が埋められていて、見ているだけで幸せな圧倒感を感じた。 どの向日葵も太陽に向いて美しく咲き誇っている。 向日葵は本当に真っ直ぐで美しい。 太陽に恋焦がれる花。 太陽しかほんとうに見ていない。 まるで吉羅にしか恋が出来ない自分のようだと、香穂子は思わずにはいられなかった。 「凄く綺麗です。向日葵はほんとうに太陽だけを見つめているんですね。太陽の方向だけに向いています。まるで暁彦さんしか見えていない私みたい」 香穂子が苦笑いを浮かべながら言うと、吉羅もまた笑みを浮かべると。 「私も同じだけれどね。全く君しか見えていないからね」 吉羅がフッと笑みを浮かべる。 「君は私の太陽だからね」 「私の太陽も暁彦さんですよ」 香穂子は嬉しさとはにかみを滲ませながら、吉羅を見上げた。 ふたりで手を繋いで、向日葵畑を行く。 本当に綺麗です美しく素晴らしい畑だ。 ふたりで手を繋いで歩いていると、素敵な気分が味わえる。 吉羅とこうして一緒にいるだけで、幸せな気分を味わえた。 熱中症にならない程度に向日葵を堪能した後、ふたりは旅館に戻った。 「汗を流して、食事をしながらゆっくりと蛍を観賞しようか」 「はい」 温泉に入り良い汗を流して後で、ふたりは庭が見える縁側に集まる。 香穂子は浴衣を用意して、それを何とか自分で着付けた。 風呂上がりのベビーパウダーを着けて、とても快適でノスタルジックな気分を味わった。 髪を手早く上げて、雰囲気だけでも浴衣に似合うようにする。 デートならばもっと念入りにお洒落をするのだが、今夜は湯上りだからしょうがない。顔もローションを塗って 保湿をしただけだ。 吉羅には素一の顔は見られているし、高校生の時は日焼け止めを塗っているぐらいだったので、見せても平気だ。 香穂子は湯上がりの姿を見られるのがほんの少し恥ずかしいと感じながら、客室へと戻った。 既に吉羅は部屋に戻っていて、堂々と浴衣を着こなしている。 縁側で佇んでいる吉羅に、まるでスポットライトのように夕陽が差し込んでくる。 その神がかり的な美しさに、香穂子はただ見惚れてしまっていた。 吉羅は香穂子を待っている間、手持ちぶさたになってしまい、縁側に出て空を見上げた。 空が茜色に染まり、吉羅はついうっとりと見つめてしまう。 何と美しい夕陽だろうか。 香穂子とこの夕陽を一緒に見られたら、こんなに素敵なことはないのにと、吉羅は思った。 不意に誰かに見られているような気がして、吉羅は振り返った。 すると魂を奪われるのかと思うほどに美しい香穂子がこちらを見ていた。 まなざしがとても綺麗で色っぽくて、吉羅はそのまま香穂子を奪いたい衝動に駆られる。 香穂子はなんて綺麗なのだろうか。 何度見つめても飽きないと吉羅は思った。 自宅から用意してきたのだろう浴衣が似合っていて、新鮮な美しさを覚える。 本当に色香が匂い立つようだ。 こんなにも綺麗な姿は、他の男には見せたくはないと吉羅は思った。 ただ熱いまなざしで愛する香穂子を見つめる。 そのまなざしの熱さで、香穂子の心までも焼尽くしたかった。 吉羅にじっと見つめられている。 こんなにも熱いまなざしで見つめられたら、このまま身も心も焼尽くされてしまいそうだ。 それぐらいに情熱的な瞳だった。 じっと見つめられると、本当に息が出来なくなってしまう。 こんなに息が出来なくなるぐらいに熱を感じるなんて、浴衣の成せる技なのだろうか。 吉羅がゆっくりと香穂子に近付いてきた。 「夕陽が綺麗だ。一緒に見ないかね?」 「はい…」 吉羅に手を差し延べられて、香穂子はそれを受け取る。 ふたりで手をしっかりと握り締めあうと、縁側で腰を掛けた。 「綺麗ですね。夕陽」 「夕陽の後は、いよいよ蛍を見られるね」 「楽しみです。自然が魅せてくれる光は、やはり美しいですね」 ふたりで寄り添って蛍を見ていると、部屋がノックされて食事が運ばれてきた。 「食事だよ。戻ろうか」 「はい」 ふたりは座卓の前に向かい合わせで座り、運ばれてくる食事を眺めた。 山の幸が豊富で、どれも美味しそうだ。 「お肉が凄く綺麗で、美味しそうですね」 「そうだね。ゆっくりと食べようか。そのうち蛍もやってくるから」 「はい」 食事をしていると縁側の向こう側に蛍がちらほらと見られ始めた。 「蛍ですよ! 本当に綺麗です」 香穂子がうっとりと見つめながら呟くと、吉羅もまた寄り添ってくれる。 「本当だね。食事をした後、ゆっくりと見ようか」 「はい。そうですね」 山の幸たっぷりの食事をした後で、ふたりは縁側に腰を掛けて見た。 「物凄くロマンティックです」 「そうだね。蛍を見ているだけで、こころが洗われるね…。だけど私は、…今の君のほうが美しいと思うよ」 吉羅に甘くて熱い言葉を囁かれて、香穂子はうっとりとする余りに、吉羅にそっと甘える。 「有り難うございます」 香穂子の言葉に吉羅は、そっと抱き寄せて来た。 先ずは甘くてしょうがないキス。 何度もキスをした後、吉羅は香穂子をそのまま座敷に押し倒す。 「君は本当に綺麗だね」 吉羅の手がそっと袷に入ってきて、香穂子の躰を愛し始める。 浴衣が乱れる。 そのまま乱されながら官能的な愛撫を受ける。 もう何もいらないと思えるぐらいに溺れた。 愛し合った後、ふたりでしっかりと抱き合いながら見つめあう。 蛍は本当に美しくて、幻想的だ。 「暁彦さん」 しっかりとふたりで抱き合いながら蛍を見つめた。 美しい夜。 これからは美しい夜が見られるのだ。 |