休みの日は香穂子も例に漏れず大好きだ。 温かなベッドの中で、大好きな男性といつまでも抱き合っていられるから。 お互いにいつもよりも少しだけ寝坊したのに、目はスッキリと覚めているのに、いつもよりもずっとずっと長くベッドの中に入っていたい。 吉羅と脚を絡ませて眠るのが最高に幸せだ。 「何だかこうやって脚を絡ませて眠っていると、温かくていつまでもベッドから出たくはないですね」 「そうだね」 吉羅はフッと微笑むと、香穂子を自分の腕の中に閉じ込めてしまう。 「…幸せです。ずっとずっとこうしていられたらとても幸せ」 「そうだね。私もそう思うよ」 気怠い朝に愛し合ってこうしてじっとしているのも良いし、こうしてふたりでふわふわと漂っているのもまた幸せだ。 「…こうしてふたりでゆっくりと出来るのも、子どもが出来るまでだからね。今のうちにしっかりと堪能しておかなければね」 「そうですね」 吉羅はさらりと言ったが、香穂子にとってはとっておきの言葉だ。 「子どもが出来たら出来たで、とても幸せなんですけれどね」 「そうだね。賑やかなのも良いし、三人で川の字で眠るのも良いだろうね」 「はい」 吉羅にそっくりな子どもと川の字になるなんてなんて素敵なことなのだろうか。 香穂子は想像するだけで、くすりと微笑んでしまう。 隣にいる吉羅を見ると、同じようにほくそ笑んでいる。 「暁彦さん、楽しそうですね」 「君そっくりな女の子と三人で川の字になるのは良いものだと思ってね」 「私は暁彦さんにそっくりな男の子を想像してしまいましたよ」 香穂子がくすりと笑うと、吉羅が頬にキスをしてきた。 「四人で並んで眠るのも良いね。…ただ君を取り合うことになってしまうだろうがね」 吉羅は苦笑いをして、香穂子の頬を柔らかく包みこんだ。 「取り合いだなんて…。私にとってはずっと暁彦さんが一番ですよ。これだけは自信があるんです。逆に暁彦さんを子供たちと取り合ってしまうかもしれませんけれどね」 香穂子が吉羅の唇に柔らかくキスをすると、いきなり組み敷かれてしまう。 「あ、暁彦さんっ!?」 香穂子が焦っていると、吉羅は笑みを浮かべる。 「…私も君が一番だ。それは変わらないから。永遠にね…」 「嬉しいです…」 香穂子がブラインドから差し込む太陽の光と同じような笑みを浮かべると、吉羅は深い角度で唇を重ねてきた。 甘くて官能的で、そして激しいキス。 香穂子にとってはこれ以上の幸せはないのではないかと思うほどのキスだ。 お互いに呼吸が出来なくなるのではないかと思うほどのキスをした後で、吉羅は香穂子を愛し始める。 パジャマを丁寧に脱がしながら。 「…あ、暁彦さんっ!? あ、あのっ、私…」 いきなり朝から愛し合って、差し込む太陽の光に肌を照らされるなんて思ってもみなかったから、香穂子は焦ってしまう。 「…パジャマを着たのに…、また、脱ぐんですか?」 香穂子が何処か甘い雰囲気を漂わせた声で呟くと、吉羅は微笑む。 「パジャマはどうせ着替える時に脱ぐだろう? その手間を省いただけだよ?」 「もう…」 吉羅がこんなにも恋人に溺れているなんて、きっと誰も想像は出来ないだろう。 いつもの冷静沈着ぶりを見ていると余計にそう思えてしまう。 吉羅は香穂子の纏うものを総て脱がしてしまうと、その滑らかな肌を堪能していく。 「君が余りにも可愛いから欲しくてたまらなくなってしまったんだよ…」 「暁彦さん…」 吉羅と肌と肌をしっかりと合わせて、熱を共有するようになると、もう夢中になって何も考えられなくなる。 吉羅とこうして朝から愛し合いながら、香穂子は甘い世界に沈み込んでいった。 結局は起きるのが大幅に遅くなってしまった。 香穂子は幸せな気怠さを感じながら、吉羅と朝食を取る。 結局、吉羅にはかなり沢山の痕を刻み付けられてしまい、タートルネックを着ることを余儀なくされてしまった。 「…香穂子、ブランチを食べ終わったら、海にドライブでも行かないかね?」 「嬉しいです」 吉羅と一緒にドライブをするというのは嬉しくてしょうがない。 「香穂子、ふたりきりでドライブをするのは今のうちだろうから、しっかりと楽しもう」 「はい」 本当に近いうちに子どもが出来るかもしれない。 正式なプロポーズはまだ受けてはいないが、香穂子はそれが近い事を、希望的観測ではあるのだが予感している。 食事の後、あてもなく海にドライブをしに出掛けた。 吉羅とふたりでのんびりと出来る時間が何よりもの幸せな時間だ。 「香穂子、春の海はとても美しいから、君と眺めることが出来るのが嬉しいね」 「はい」 吉羅は海岸近くに車を停めると、香穂子と手を繋いで海岸へと出てくれた。 いつか近い未来には、小さな子どもと一緒に海岸ではしゃぐことが出来るようになるだろう。 吉羅とふたりでこうして手を繋ぐ事は、何よりもの幸せだった。 不意に吉羅が手を放して香穂子を背後から抱き締めてくる。 「香穂子…目を閉じてくれないかね?」 「…はい」 吉羅の言われた通りやってみる。 すると手を柔らかく握られて、そのまま手の甲を撫でられた。 ふと左手薬指に冷たい感覚が宿る。 「香穂子、目を開けて、左手薬指を見てくれないかね?」 「…はい」 甘いドキドキに蕩けてしまいそうになりながら、香穂子はゆっくりと目を開ける。 すると左手薬指には、ダイヤモンドの指環が光っていた。 「…暁彦さん…」 いつかこうなれば良いと夢を見ていた。 吉羅とずっと人生のパートナーとして一緒にいられたらと。 「少し前に用意をしておいたんだが、タイミングがなかなか難しくてね。今朝、君と話をしていた時に、今日が良いと思ったんだよ」 「有り難うございます…」 吉羅と朧気な将来の幸せを語り合った日に、まさかプロポーズをされるとは、思ってもみなかった。 香穂子は嬉しくて泣き出しそうになりながらも、懸命に堪えて笑顔になった。 「うちでプロポーズをするのも考えたのだが、やはりこうして外でプロポーズをしようと思ってね。それで君をドライブに誘ったんだよ」 「有り難う、とっても嬉しいです」 今まで見たダイヤモンドの中で、一番光り輝いているように思える。 香穂子は何度も指環を見つめて、幸せの溜め息を吐いた。 「左手薬指を一生、私のものにしても構わないかね?」 吉羅の言葉に、香穂子はしっかりと頷く。 「…有り難う…。本当に嬉しく思うよ、香穂子」 「私もものすごく嬉しいです」 香穂子はエンゲージリングがはまった指を何度も翳して見つめる。 光が屈折をして、最高の輝きを放っていた。本当に綺麗だ。 「…綺麗です。凄く嬉しいです」 「私も嬉しいよ」 吉羅は香穂子を抱えるように抱き締めると、指をしっかりと絡めて握り締めてきた。 「香穂子、君を何があっても放さないからそのつもりで」 「…はい…。私も暁彦さんを放しませんから」 香穂子は力強く言うと、吉羅の手を同じように握り締める。 「君が子どもと川の字になりたいと言っていただろう? それが早く叶えば良いと思っているよ。川の字になろう。だけど、それは子どもが眠りにつくまでや、特別な時だけだよ。私が君を独占したい気持ちは変わらないから」 「私もです」 ふたりはくすりと笑うと、向かい合って抱き合い、唇を重ねる。 幸せな時間は始まったばかり。 |