プールに入って涼みたい。 そんなことを考えてしまう。 ゆったりサッパリしたい。 香穂子は海かプールに吉羅と遊びに行きたいと、のんびりと考えていた。 吉羅との夕食デートを楽しんだ後、香穂子は車で自宅へと向かう。 「そろそろ暑くなって来ましたよね」 「そうだね。水が恋しくなるシーズンだ」 「お休みの時の朝からデートで、プールか海に泳ぎに行きませんか?」 「…プールか海ね…。手配が可能かどうか訊いてみなければならないね」 吉羅は旅行だとか大袈裟なことを考えてくれているのだろうか。 それだったら近場でも構わないのに。 「暁彦さん、近場でも構いません。何処でも良いですよ。湘南だとか、わざわざ手配とかではなくて、車や電車で行けるようなところで」 「…そうはいかない…。混合ったところよりも、静かできちんとしたところのほうが良いだろう」 吉羅はそう言うと、少し呆れたように眉を上げた。 「本当に何処でも良いんですが…」 「駄目だ」 吉羅はキッパリと言うと、かなり不機嫌になった。 いつもデートの行き先は香穂子の意見を尊重してくれる吉羅ではあるが、今回に限っては問答無用のノーだった。 「…そうですか…」 香穂子は子供のようにしゅんとする。 やはり、吉羅は水辺は嫌なようだ。 確かに吉羅暁彦には湘南の江ノ島あたりで甲羅干しをしているイメージは皆無だ。 「…そうだよね…。やっぱり…」 余りにもイメージとは違い過ぎる。 流石に香穂子もそう思った。 香穂子が小さくなって車に乗っていると、吉羅はスッとさり気なく手を握ってきた。 優しく手を握られると、香穂子としては、拗ねるわけにはいかなくなる。 その辺りをよく解っているのだろう。 今回は諦めるしかない。 香穂子は友人たちと行くことにした。 「…今回は諦めます。海には友達と行きますね」 香穂子がしょうがないとばかりに諦め混じりで言うと、吉羅は強く手を握り締めてきた。 「それも駄目だ」 今度のほうがより厳しい口調で、香穂子は驚いてしまう。 吉羅は独占欲は強いが、香穂子を自由にさせてくれる。 束縛なんて滅多にしないひとだ。 なのに今回に限っては、干渉してくる。 その辺りが分からない。 「…暁彦さん…、私が海に行ってはいけない理由があるんですか?」 香穂子は解せなくて、吉羅に拗ねるように言った。 吉羅は黙っている。 都合が悪いのだろう。 「暁彦さん、どうしてなのか理由をきちんと教えて下さったら納得します。だけど理由を教えて下さらなかったら、到底、納得することは出来ませんが」 香穂子が珍しく厳しい口調で話をすると、吉羅は溜め息を吐いた。 感情的に話されるのが苦手なのだろう。 香穂子が溜め息を吐くと、吉羅はようやく口を開いた。 「前日に私と会うと言うなら考えても良い…。ただし私の家から遊びに行くこと。それが条件だ」 吉羅はしょうがないとばかりに言うと、香穂子の手を宥めるように撫でた。 遊びに行く前日に吉羅と一緒に過ごせるなんて、こんなにも素敵なことはないと思ってしまう。 毎日でも水辺に行く予約をしてしまいそうだ。 「…暁彦さん…、本当にそれで良いんだったらそうします…。というか、そうしたいです…。毎日でも水辺で遊ぶ約束をしてしまいそうです」 香穂子が笑顔で言うと、吉羅は苦笑いを浮かべた。 「そんなことを言うと、君を怒れなくなってしまうよ」 吉羅の声がとても優しくなり、香穂子はつい笑顔になった。 「もうすぐ君の家だ」 「はい」 話しているうちに吉羅の車が家の前で停まる。 香穂子は残念な気持ちになった。 「海やプールに行くことに関しては、もう少しだけ待ってはくれないかね?」 「…はい。分りました」 「後、海辺に行く時には、必ず私のところに連絡を入れるように。良いね」 「はい」 香穂子は返事をした後、吉羅に挨拶をして車から下りる。 これからどのような甘い水辺の時間を過ごせるのか、香穂子はとても楽しみになっていた。 あれから数週間して、吉羅から連絡が入った。 プールでのデートということで、香穂子は楽しみになった。 一泊旅行だと言われて、益々楽しみになる。 吉羅と小旅行なんて久し振りだから、香穂子はワクワク楽しみにしていた。 約束の日、吉羅が車で迎えに来てくれた。 プールのあるホテルでのんびりと過ごすのだという。 こんなにも贅沢な休日はないと、香穂子は思う。 大好きなひとと素敵な時間を過ごせる。 それだけで嬉しい。 ホテルに到着すると、早速、プールに入ることになった。 水辺のデートがしたいと言っても、香穂子は日焼けをしたくはなかった。 そのため、ウォータープルーフの日焼け止めをしっかりと塗った。 屋外プールに出ると、吉羅と二人きりだった。 まさかふたりだけでプールを使う事になるなんて、香穂子は思ってもみなかった。 「私たちだけですか?」 「これから九十分は、私たちの貸し切りだ。のんびりと出来るよ…」 まさか貸し切りが出来るプールに連れていってくれるとは、香穂子は思ってもみなかった。 そこが吉羅暁彦であると思う。 「一緒にゆっくりと泳ごう」 「はい」 吉羅にしっかりと手を握られて、ふたりでプールでのんびりと泳ぐ。 楽しくてロマンティックで、香穂子はうっとりとするような魅惑的な時間を過ごす。 これ以上に素晴らしい瞬間はないのではないかと思った。 ふたりで一緒にプールに潜ったり、こっそり水の中でキスをしたり、抱き合ったり…。 まるで映画の中のようだと、香穂子は思わずにはいられなかった。 このようなことが出来るのは吉羅暁彦だけだ。 プールで甘く官能的な戯れを繰り返していると、流石に愛を交わしたくなった。 それは吉羅も同じようだった。 「…香穂子…そろそろ部屋に行かないか? 素早く着替えて戻ろう…」 「…はい」 吉羅に艶やかなまなざしで見つめられると、頷くことしか出来ない。 香穂子もそれぐらいに吉羅を求めていた。 ふたりはプールから上がると、素早くシャワーを浴びて、着替えて部屋に戻った。 部屋に戻った後は、甘くて激しく熱い時間を過ごしたのは言うまでもなかった。 愛し合った後、吉羅は香穂子のデコルテに触れる。 「見える服は着られないね…。これじゃあプライベートなビーチぐらいでしか水着にはなれないよ」 吉羅の甘い笑みが滲んだ声で、香穂子はようやく気付いた。 「…暁彦さん、もしかして、あれほど反対したのは…」 香穂子が言おうとすると、吉羅は目の周りをうっすらと赤くさせた。 「…君の水着姿を誰にも見せたくはなかった…」 吉羅の言葉に、香穂子はなんて可愛いのだろうかと、思わず抱き締めてしまった。 「…君の綺麗な水着姿を誰にも見せたくはない。私だけが独占したい…なんて…私も随分と子供染みているね…」 吉羅は苦笑いを浮かべると、香穂子を見た。 吉羅の独占欲に、香穂子は甘く幸せな気分になる。 「暁彦さんの前以外は水着にはなりません…。といっても…、明日はもう無理ですけれどね」 見える位置に沢山所有の痕を着けられて、香穂子は苦笑いを浮かべる。 それだけ愛されている。 恋をしてくれている。 その甘酸っぱさに蕩けてしまいそうだ。 ふたりは甘いキスをすると再び愛し合う。 夏の水リゾートはなかなか甘い刺激があると思った。 |