新横浜まで仕事で行った帰りに、吉羅は香穂子にお土産を買おうと、ケーキショップを覗くと、可愛いケーキを見つけた。 小さなウェディングケーキだ。 見ているだけで幸せになれる。 普通のケーキよりもほんロマンティックであるし、香穂子も喜ぶだろうから、買って行こうかと思う。 ミニチュアのウェディングケーキだなんて、香穂子が笑顔になるのが想像出来る。 きっと、香穂子はフォークで入刀しながら、思わずにんまりと笑うのだろう。 それが吉羅にとってはなによりもの素晴らしいものだ。 香穂子が笑ってくれるのならば、色々としてあげたいと思ってしまう。 吉羅はケーキを買って車に乗り込む。 途中、香穂子を拾って家に連れて行くのだ。 これからは香穂子とふたりきりで過ごす甘い週末が待っている。 吉羅にとってはなによりも幸せな時間だ。 香穂子とふたりでのんびりと過ごす時間が、今や最高のご褒美となっていた。 元町まで出ると、待ち合わせ場所に香穂子が待ってくれていた。 吉羅は香穂子の前に車を停めると、わざわざ降りてドアを開けてエスコートをする。 香穂子にはなるべくロマンティックにエスコートをしてあげたい。 それだけ大切に思っている恋人だった。 「お待たせしたね」 「こちらこそ、わざわざお迎え頂いて有り難うございます」 香穂子は眩しいぐらいの笑顔を浮かべながら、車に乗り込んできた。 吉羅は車を一路自宅へと走らせる。 何処かに遊びに行くのも楽しいが、今はふたりだけで自宅で過ごすのがブームになっていた。 何処かに行くよりも、よりふたりらしく過ごすことが出来るのが、何よりも素敵だと思った。 「お仕事ご苦労様でした。お疲れではないですか?」 「君というご褒美があるからね。疲れてはいないよ」 「なら良かったです」 本当に香穂子の笑顔は、疲れを吹き飛ばす威力がある。 それは最高級栄養ドリンクでも足元に及ばないほどだ。 「お土産にケーキを買ってきた。後でふたりで食べよう」 「はい、有り難うございます。楽しみです」 香穂子の幸せな笑顔をゆっくりと見たいが、残念ながら運転中だ。 吉羅は早く香穂子の最高の笑顔を見たいと思いながら、ステアリングを握った。 車を自宅駐車場に停めて、吉羅は香穂子の手をしっかりと握り締めて、自宅へと向かった。 「ようやくふたりだけでのんびりと出来ますね」 「そうだね…。私も君とのんびりとした休日を過ごすのを、ずっと楽しみにしていたよ」 「それは良かったです」 ふたりで家の中に入ると、吉羅は先ず香穂子を抱き締めた。 「ずっとこうしたかったんだよ」 「私もずっとこうされたかったんですよ」 ふたりはくすりと笑って甘い甘いキスを交わす。 最近、タイミングが上手くいかなくてなかなか会えなかったから、その時間を埋めるように、ふたりは何度も唇を重ねあった。 お互いの想いと存在を確かめあうように。 甘いキスを繰り返した後、ふたりは微笑みあう。 「甘いケーキよりも甘いものを私にくれないかね?」 「ケーキはお預けですか?」 くすりと笑う香穂子は、まるで小悪魔。 天使にも妖精にも小悪魔にもなる。 吉羅の最愛は、本当に飽きさせないほどの顔を持っている。 「お預けだ。君もケーキよりも甘いものが欲しいだろう…?」 「はい…」 はにかみながらも認める香穂子が可愛くて、吉羅は抱き上げる。 そのままベッドへと連れていく。 最高の愛を確かめ合うために。 香穂子と肌を重ね合って愛し合う時間は、至福の時だ。 滑らかで柔らかくて甘い温もりを持った香穂子の肌に直接触れるのは、吉羅にとっては最高に幸せなことだ。 香穂子を激しく愛して、愛されて、吉羅はもうは離すことは出来ないと思う。 吉羅は香穂子に溺れながら、その甘さを堪能した。 愛し合った後、ふたりは緩やかなまどろみに包まれる。 香穂子の背中を撫でると、甘い吐息を零した。 「…幸せです…」 「それは良かった…。私もとても幸せだよ…」 ふたりはくすりと笑いあいながら、互いの温もりをシェアをしながら、抱き合った。 夕食は、ローストビーフと野菜たっぷりのスープ、サラダとシンプルにした。 ふたりで夕食を食べた後、デザートは買ってきたケーキだ。 香穂子が紅茶を淹れてくれ、デザートタイムが始まる。 「香穂子、今日見つけてきたケーキだ」 吉羅がケーキ皿に乗せると、香穂子は嬉しそうな感嘆の声を上げた。 「うわあ! ちっちゃいウェディングケーキ!」 「君が好きそうだと思ってね」 「ええ! とってもロマンティックです!」 香穂子は、小さなウェディングケーキを、何度もうっとりと眺めている。その様子はとても可愛くて、吉羅は思わず抱き締めてしまいそうになった。 可愛い。 そして綺麗だ。 こんなにも可愛い香穂子を、もう離したくはない。 誰にも渡したくはない。 吉羅は強く感じた。 人生を共に歩むのは、香穂子以外には考えられないから。 「じゃあお茶をしようか」 「はい」 香穂子は本当に嬉しそうに何度もケーキを見つめて、携帯電話で写真を撮っている。 「何だかフォークを入れるのがもったいないです」 「じゃあ、一緒にフォークを入れようか?」 「え?」 香穂子がときめいたように瞳を輝かせて、頬を赤らめる。 なんてフレッシュで愛らしいのだろうか。 「…嬉しい…」 はにかんで答える香穂子は、何処までも可愛い。 「リハーサルがてら、二つのケーキにフォークを入れようか。香穂子、フォークを持って」 「はい」 香穂子がフォークを持つと、吉羅はその手に自分の手を重ね合わせる。香穂子は甘い緊張のせいで、僅かに震えていた。 吉羅も同じだ。 僅かに緊張する。 近いうちに本物のウェディングケーキに入刀出来たら。 そんなケーキよりも甘ったるいことを考えてしまう。 もう待てない。 香穂子を完全に自分のものにしてしまいたい。 吉羅は強くそう思う。 ゆっくりとふたりでケーキにフォークを入刀する。 幸せな気分になり、香穂子は本当に嬉しそうだ。 「楽しくて幸せです。暁彦さん、素敵なケーキを有り難うございました」 「まだもうひとつあるからね」 「はい!」 ふたりで小さなウェディングケーキにもう一度入刀する。 次はもう本番だ。 吉羅はそんなことを思っていた。 ふたりで入刀し終わったケーキを食べる。 甘い幸せがいっぱいに詰まった味がした。 「…次は三度目の正直で、美味しい本番を迎えたいものだね」 「暁彦さん…」 香穂子は驚いたように目を丸くする。 頬を紅潮させて、キラキラと輝いていた。 「…香穂子…、結婚しないか?」 吉羅はストレートに香穂子に伝える。 飾る言葉なんて必要ない。 ただ今の気持ちをきちんと伝えられたらそれだけで構わない。 吉羅が気持ちを伝えると、香穂子はうっとりとするかのように見つめる。 「…有り難うございます…。私も…暁彦さんと…結婚したいです」 呼吸が上手く出来ないのが、香穂子は何度も深呼吸をした後に、微笑んでくれる。 その笑みは幸せで輝いている。 吉羅もまた、幸せで輝いた笑みを香穂子に向ける。 こんなにも豊かな気持ちになるのは初めてではないかと思う。 吉羅自身も幸せな笑みを浮かべた後、愛しくてたまらない香穂子を強く抱き締める。 「…有り難う…」 吉羅の言葉に返事をするように、香穂子もしっかりと抱き締めてくれた。 |