キャンドルの灯を見ているだけでとても落ち着く。 キャンドルの灯はマジック。 女の子を最高の女性に見せてくれる。とっておきの魔法。 だから今夜はロマンティックに、一番大好きなひとと過ごしたい。 スペシャルなキャンドルナイト。 「うわあなんて可愛いキャンドル」 アシュヴィンから視察のお土産だと言って貰ったのは、可愛い草花が透き通って見えるキャンドルだった。 本当に可愛くて、思わずじっと見つめてしまう。 「本当に可愛い。きっと物凄くロマンティックな灯を点してくれるんだろうね」 千尋が笑顔でキャンドルを見つめていると、アシュヴィンも嬉しそうに見つめてくれる。 「本当に綺麗だよ…」 「視察行った先で売っていたんだが、見事だと思ってな。お前はこのようなものが好きだろう…?」 「うん、大好きだよ。有り難うアシュヴィン。本当に嬉しいよ」 千尋は笑顔をアシュヴィンに向けると、本当にご機嫌な表情になった。 「このキャンドルを点しながら、アシュヴィンとゆっくりしたいなって思うよ」 「そうだな。中庭にでも出て点すのも良いかもな」 「ふたりきりで食事をする時に点しても、とっても綺麗だと思うんだよ」 「そうだな」 千尋はキャンドルをじっと見つめながら、本当に幸せな気分になった。 「こんなに綺麗な細工がされたキャンドルを見たことがないよ」 「本当にこっちまでが嬉しくなるな」 アシュヴィンに背後からギュッと抱き締められて、千尋はにんまりと笑った。 「アシュヴィンがプレゼントしてくれたから、余計に嬉しいかもしれない」 千尋は飽きることなくキャンドルを見つめると、何度も撫でる。 「キャンドルの光って大好きなんだ。温かくて何だか癒される色でしょう? 本当に見ているだけで落ち着いた気分になるんだ。本当に癒される。向こうの時空にいた時に、キャンドルを沢山点すお祭みたいなものがあったんだけれど、本当に見事なまでに綺麗だったよ」 「…そうか…」 キャンドルナイトを素敵なパートナーと見られたら、これほどまでに幸せで温かな夜はないのではないかと思う。 「…キャンドルか…」 アシュヴィンは意味深げに呟くと、千尋を甘く抱き締めてくれた。 翌日、アシュヴィンは、細工をされたキャンドルを大量に取り寄せる。 千尋が喜んでくれることなら、出来る限りのことをしてやりたいと思う。 それだけ千尋を愛しいと思っているのだ。 千尋にはいつでも笑っていて欲しかった。 沢山のキャンドルの光で中庭いっぱいにしたら、千尋はきっと喜んでくれるに違いない。 キャンドルの光を見つめて幸せそうな千尋を思い浮かべるだけで、アシュヴィンが幸せな気分になった。 千尋の為に準備をするだけでも楽しい。 アシュヴィンは愛する妻の為に、一生懸命準備をした。 執務が終わりくたくたになりながら、千尋は大きく伸びをした。 「今週も頑張れたかな」 まだまだ国造りは途中だから、やらなければならないことは山程ある。 千尋は一生懸命働いた充実感に、疲れてはいても幸せを感じていた。 ノックが聞こえたかと思うと、アシュヴィンがゆっくりと部屋の中に入ってきた。 「…執務が終わったようだな」 「うん。今日もみんなのお陰で何とか頑張ることが出来たよ」 「それは良かった。最近、かなり頑張って女王しているみたいだな。感心だ」 「うん。みんなには幸せになって欲しいから、みんな以上に頑張らなければならないなあって思っているよ」 「そうか」 千尋が笑顔でしっかりと言うと、アシュヴィンは褒めるように見つめてくれた。 「さてと、一生懸命頑張っているからご褒美をやらなければな」 「ご褒美!?」 アシュヴィンの言葉が嬉しくて、千尋は飛び上がってしまう。 「ちょっとしたことを用意している。行くか」 「うん」 アシュヴィンに手をしっかりと握り締められた状態で、ふたりはゆっくりと中庭に向かった。 既に夕陽が麗しく落ち始め、ロマンティックな時間が始まる。 なんて素敵なんだろうかと思いながら、ふたりで中庭へと出た。 中庭に出た瞬間、千尋は息を呑む。 こんなにも沢山のキャンドルが中庭に並べられているとは思ってもみなかった。 どれも香穂子が大好きな細かい模様を施しているものばかりだ。 千尋は、いつまでも見つめていたくなる。 「…本当に綺麗だ…。こんなにもキャンドルが沢山あるなんて、なんてし知らなかった」 千尋がうっとりと見つめていると、アシュヴィンは背中を包み込んだ。 うっとりとするほどに心地良い抱擁に、千尋は深く目を閉じた。 「…有り難う…」 千尋がアシュヴィンに甘い感謝を述べると、フッと微笑んでくれる。 「お前が喜んでいられるのが俺は嬉しいからな」 「有り難う」 本当にアシュヴィンはなんて理想的なパートナーなのだろうかと思う。 千尋はしみじみと幸せに浸りながら笑顔になった。 「千尋、キャンドルに火を点そうか」 「うん、そうだね」 ふたりは手を繋ぐと、ひとつずつキャンドルに火を点していく。 「やっぱり自然の闇に浮かび上がるキャンドルは綺麗だよね」 「そうだな。こういう火の色ならば俺は嬉しいけれどな…」 「…そうだね…」 ふたりは心を重ねながら思う。やはり戦の炎は二度と見たくはない。あんなにも切なくて苦しい炎は、他にないのではないかと思う。 ひとつずつふたりきりで火を点していくのがとても嬉しかった。とっておきのことをしているように思えるから。 火を総て点し終えると、柔らかな温かさが中庭に広がっていく。 こころが満たされる色と温もりだ。 本当に美しくて、千尋はいつまでも見ていたいと思った。 「…本当に綺麗だね…。アシュヴィンと見られるから余計にそう思うのかもしれないけれど…」 千尋が幸せそうに笑うと、アシュヴィンはフッと微笑んで、細い腰を引き寄せてきた。 「そうだな。俺もお前と見られるのが凄く嬉しい」 「私もだよ」 ふたりは微笑みあった後、唇を甘く重ねた。 キャンドルの光の下でキスをするなんて、なんてロマンティックなのだろうかと思う。 キスの後、ふたりはキャンドルを歩いて見て回った。 キャンドルは様々な模様で彩られており、本当に綺麗だ。 「職人業って凄いね。本当にどのキャンドルを見ても綺麗だね」 「そうだな」 「常世も中つ国も、こうしたものが作っても大丈夫なような平和な国にしていかなければならないね…」 千尋がしみじみと言うと、腰を抱くアシュヴィンの腕に力が込められた。 「そうだな…。それが俺たちの使命だからな。沢山の尊い命が奪われた戦で生き残った者たちの使命であり、義務だと俺は思う」 「うん、私もそう思っているよ」 平和の願いを込めて、千尋たちは揺れるキャンドルの炎を見つめていた。 不意に、アシュヴィンにじっと見つめられているのに気付き、千尋は頬を初める。 「…どうしたの?」 「今夜のお前はいつも以上に綺麗だと思って。キャンドルの炎が美しくしているのかもな」 「キャンドルのせい?」 千尋がわざと拗ねるように言うと、アシュヴィンは抱きすくめてくる。 フッと微笑むと、アシュヴィンは千尋を軽々と抱き上げた。 「綺麗なお前をもっと堪能したい…。構わないだろう?」 「うん」 千尋が首にしがみつくと、アシュヴィンはそのまま部屋に連れて行ってくれる。 ロマンティックなキャンドルナイトはまだこれから。 |