何故かクリスマスよりもイヴに盛り上がるのかと、いつも思ってしまう。 クリスマス当日になると、テレビの世界では既にお正月の話題で持ち切りになり、誰もがクリスマスであることを忘れてしまう。 何だか勿体ないと思ってしまう。 こんなにもロマンティックなイベントは他にないのだから。 柊と初めて過ごすクリスマスは、どんなにロマンティックだろうかと思う。 お馴染みの橿原の小さな町で過ごすクリスマスも良いけれど、やはりロマンティックなイルミネーションが輝く場所で、クリスマスがしたい。 そんな我が儘を大好きなひとにぶつけてみた。 「柊、ロマンティックなクリスマスを過ごしてみたいんだよ。橿原の静かなクリスマスも良いけれど、やっぱり温かいロマンティックなクリスマスが良いと思うんだ」 「温かなロマンティッククリスマス…ですか…。確かに素敵かもしれませんね…。千尋、あなたがよろしければ そのようなクリスマスを過ごしましょう…。ただし…」 柊はそこで言葉を切ると、フッと微笑む。 「…千尋、…あなたが翌日まで私と一緒にいることが出来れば…」 柊の意味深な言葉に、千尋は耳まで赤くさせる。 朝まで一緒にいる。 それがどういうことであるかは、千尋にも解っている。 いつか柊とロマンティックな夜を過ごせたらと、ずっと夢見ていた。 だが、それがいざ現実で起こるとなると、ドキドキせずにはいられなくなった。 千尋が恥ずかしさの余り真っ赤になってカチコチに固まっていると、柊はフッと微笑む。 「千尋、無理をしなくても良いのですよ…?」 優しい柊の言葉。 だが、千尋は首を横に振った。 「無理なんかしていないよ。それは本当なんだ。だから…、その…、一緒にいたいです…! ほんの少し、恥ずかしいがだけだし…」 「そうですか」 柊は千尋を愛しいそうなまなざしで見つめてくると、頬を両手で柔らかく包み込んでくれた。 柊の大きな手のひらは、安心するのと同時に、千尋を甘くときめかせる。 「…とっても…、熱くて柔らかいですね」 「あ、あの…、柊!?」 柊に言われると、千尋はそれだけで嬉しくて恥ずかしいな気分になった。 「…では、クリスマスイヴの夕方にお迎えにいきますから、待っていて下さい」 「うん、解ったよ。柊…」 とうとう夢見ていた瞬間が訪れるのだ。 それを思うと、本当に恥ずかしくてしょうがない。 千尋は、どんなにか素晴らしいクリスマスになるかを想像するだけで、血が沸騰して、ときめきが突破るのを感じていた。 クリスマスイヴの前日、千尋はバタバタと一生懸命準備をする。 明日はいよいよロマンティックな運命の夜だ。 柊にもっともっと好きになって貰えるように、柊ともっともっと絆を深められるように、千尋は一生懸命準備をした。 肌も出来る限りにピカピカに磨き、自分が一番気に入っているワンピースを着た。 ロマンティックな装いにして、柊と最高なデートが出来ればと、思わずにはいられない。 千尋はベッドに入る時間になっても、なかなか寝付けないでいた。 嬉しいことが迫っていると寝付けない、あの感覚に似ている。 千尋は胸が甘い緊張の余り鼓動を早めているのを感じながら、ベッドの上で寝返りを打った。 それは決して不快な感覚ではないから、千尋にとっては苦痛ではない。 千尋はいつしか幸せな気分で眠りに落ちていた。 柊とのクリスマスデートの当日、千尋は朝から落ち着かなかった。 何とか準備を終えて、千尋は柊を待つ。 以前に買っておいたクリスマスプレゼントを丁寧に持っていた。 クリスマスプレゼントは、男性用のコロン。 柊に似合う艶があるが何処かグリーンな香りがするものだ。 喜んでくれたら良いと思いながら、千尋は柊が来るのを待っていた。 柊がやってきた。 玄関先まで迎えに来てくれて、車までエスコートをしてくれる。 まるでお姫様にでもなったような気分だ。 千尋はうっとりとした気分で、クリスマスのデートに繰り出すことにした。 「千尋、あなたが望むように、クリスマスイルミネーションが美しいところに行きましょう。それまでは、美しい夜景をゆったりと楽しみましょうね」 「有り難う」 夜景ドライブをした上に、イルミネーションが素敵な場所に連れていって貰えるなんて。 想像以上のクリスマスだ。 こんなにも嬉しいことはないと、千尋は思った。 橿原の町からハイウェイに乗って、イルミネーションが麗しい町へと向かう。 本当にシンデレラのかぼちゃの馬車にでも乗った気分になった。 「柊! 夜景が本当に綺麗だよ!」 都会に近付くにつれて、人工的な星の光は輝きを増す。 「本当に綺麗だよ…」 千尋は最高のドライブに、うっとりとときめいていた。 柊が車を停めたのは、イルミネーションが美しいホテルの駐車場だった。 今夜のスペシャルなディナーを、ここで食べるのだ。 「本当に柊はサンタクロースみたいだよ。私の望みを全部叶えてくれるみたいなんだよ」 「それは嬉しいです。あなたが喜んで下さるのが、私には一番嬉しいですからね」 「私だって柊が喜んでくれるのが、一番嬉しいんだよ」 「はい」 ふたりは笑みを交換した後、クリスマスディナーを楽しんだ。 食事はとても美味しくて、こころから満足出来るものだった。 それが千尋には嬉しい。 デザートの時間になり、千尋はとっておきのクリスマスプレゼントを柊に差し出した。 「気に入って貰えるかは分からないけれど、使って貰えると嬉しいです」 「有り難う、千尋」 柊は丁寧にクリスマスプレゼントを受け取ってくれると、「開けて良いですか?」と言ってから、丁寧に包みを開けた。 どうか気に入って貰えますように。 千尋がドキドキしながら待っていると、柊はフッと柔らかな嬉しい笑みを浮かべた。 「有り難う。とても嬉しいです。大切にしますね」 柊の言葉に、千尋は嬉しくて満面の笑みを浮かべた。 「では私の番ですね」 柊は落ち着いた声で言うと、千尋にプレゼントを手渡してくれた。 細長いジュエリーケースに、千尋は思わず笑顔になる。 「開けて下さい」 「うん。有り難う」 千尋がそっとケースを開けると、そこには幸運になると言われている馬蹄に小さなダイヤモンドがちりばめられたペンダントがあった。 「綺麗、有り難う!」 こんなにも素敵なプレゼントはないと思いながら、千尋は笑顔を浮かべた。 「私が着けましょうか」 「有り難う」 ドキドキしながら待っていると、柊がペンダントを首にかけてくれる。嬉しくて胸がキュンと痛むのを感じた。 「…さてプレゼント交換も終わったところで行きましょうか?」 「…うん…」 柊に手を繋がれて、ホテルの一室に向かう。緊張の余りに手のひらは汗だくになっていた。 部屋に入ると、千尋はびっくりする。 そこにはプラネタリウムが置いてあり、天井には簡易的な夜空の星が写し出されていた。 「今夜はクリスマスの星についてお話をしましょうか。ふたりで眺めましょう」 なんて素敵なクリスマスプレゼントなのだろうか。 余りにロマンティックで嬉しくて、千尋は泣きそうになる。 「星の話をしましょうか。ここで」 柊はそう言うと、ベッドから上掛けを持ってくる。 それをソファに置いた。 「これをふたりで掛けて、朝までいましょう。このままで…」 柊の申し出に、千尋は驚いて大きな瞳を向ける。 「…あなたが緊張しているようでしたから…。もう少し自然に愛し合えるようになったら、その時は覚悟をして下さい」 柊の言葉に、千尋は泣きそうになる。 こんなにも愛されて気遣われている。これほど嬉しいことはないと、千尋は思った。 「…有り難う」 涙ぐんで呟くと、柊は笑って抱き締めてくれた。 ふたりはソファに腰を掛けて、星の話をする。 こんなにもロマンティックなクリスマスはない。 千尋は柊と寄り添いながら、最高のクリスマスを味わっていた。 |