天海が人の世で、ゆきのために生活をしてくれている。 それはとても嬉しいこと。 ゆきにとっては、最高に幸せなことだ。 ふたりで暮らし始めて、ゆきは本当の意味で幸せだ。 天海は、神様の力で、上手く戸籍すらも操作して、普通の人間としての生活を、実現させている。 ゆきにとっては、それは便利であり、普通の奥さんとしての生活が出来るのが、嬉しい。 天海は、ゆきだけに興味があるというのは、相変わらずで、とても大切にしてくれている。 幸せだ。 結婚すると、やはり家族がもうひとりほしいと思ってしまう。 だが、人間である自分と、神様である天海と、果たして子どもが出来るのだろうかと、ゆきは思わずにはいられない。 愛する人と幸せな家庭を作って、生きてゆきたい。 子どもは賑やかに、三人は欲しいところだ。 それは、一人っ子だったゆきに、瞬と祟のふたりが兄弟として加わって、本当に楽しかったから。 だから天海ともそのような、楽しい家庭を築きたい。 だが、そもそも神様である天海と人間である自分とは、子どもを儲けることが出来るのだろうかと思ってしまう。 愛する人との赤ちゃん。 こんなにも嬉しい神様からのプレゼントはないと思ってはいるが、それが可能でなければ、切なくてたまらない。 常識的に考えて、神様との子どもだなんて、難しいに決まっている。 だが、強く祈りたくなるぐらいに、天海との子どもが欲しい。 きっと可愛くて綺麗でしょうがなくなるだろう。 天海に話せば、本当のことが分かるだろうか。 だが、もし、子どもが作れなかったら、哀しい。 ゆきは、天海に訊くのが恐ろしくて、なかなか訊くことが出来なかった。 そのせいか、最近は毎日、ため息を吐いてばかりいる。 ゆきが暗い気持ちでいることに、天海は気付いたようで、声を掛けてきた。 「……ゆき、君は最近、毎日のように溜め息を吐いていますね。何かあるのですか?あるのならば、教えて頂きたい」 いきなり訊かれても、ゆきは上手く答えられない まさか、天海の子どもが欲しくて堪らなくて悩んでいる。 天海の吸い込まれるぐらいに美しい異瞳で見つめられた後、ゆきをキュッと優しく抱き締めてきた。 「……どうされましたか?ゆき……。何か悩みでもあるのではないですか……?」 「……な、何でもないよ、天海……」 ゆきが笑って誤魔化そうとしても、天海の瞳が許さない。 「ゆき、正直に仰って下さい。君と私は、永遠の契りを結んだ仲なのですから」 天海に真っ直ぐ見つめられながら呟かれると、ゆきは何も言えなくなる。 抵抗出来る筈がない。 ゆきは素直になるしかない。 深呼吸をして、少し気持ちを落ち着かせる。 「……あ、天海、あのね……?」 「はい?」 天海の美しい異瞳に見つめられると、ゆきはつい鼓動を早めてしまう。 天海の瞳は慈愛に溢れていて、ゆきの話を聞いてくれそうだった。 「……天海、あのね……、私、天海との赤ちゃんが欲しい……けれど、私たちは、その……」 ゆきは話題が話題なだけに、慎重に話をする。すると天海は、穏やかに微笑みながら、ゆきを見つめた。 「無論、可能ですよ……。君と私の子どもですから、かなりの力を秘めた子どもでしょうけれどね……」 天海は意味ありげで艶やかな笑みを浮かべると、ゆきを抱き寄せる。 しっかりとその胸に抱き寄せられて、ゆきは耳まで真っ赤になるぐらいにドキドキしてしまう。 天海の鼓動を感じる。 これだけでもゆきにとっては甘く緊張してしまう、幸せとときめきが詰まっていた。 ゆきは天海の逞しくて男らしい胸に頬を寄せる。 こうしていると天海が本当に生きているのだと、感じる。 ゆきと同じように鼓動を刻んでいることが、嬉しくてしょうがなかった。 ゆきにとっては、こうして、天海と同じように生を感じることが、何よりもの幸せだった。 「……ゆき……」 聴くだけで幸せになる天海の声に、ゆきは顔を上げる。 見上げれば美しくて魅力的な、天海の微笑みが見えて、ゆきは幸せ過ぎる気持ちになる。 こうしているだけで、なんて幸せなのだろうかと、思う。 「……ゆき、子どもは一人だけではありませんからね。兄弟がいる方が幸せな気持ちになるでしょうから……」 「……天海……」 ゆきが笑顔になると、天海は唇を重ねてくれる。 唇から伝わってくる、天海の愛。 ゆきは天海の愛情を感じるだけで、幸せで、このまま愛の熱で蕩けてしまっても構わないとすら思う。 熱いキスを感じた後、天海はゆきの瞳を官能的に見つめてきた。 こんなにも艶やかな眼差しで見つめられたら、天海に溺れても構わないとすら思ってしまう。 うっとりとした眼差しを天海に向けると、そのまま抱き上げられてしまった。 ゆきは鼓動を速めながら、幸せでどうしようもない気持ちになりながら、天海に抱きつく。 「君は子どもが欲しいのでしょう?だったら、子どもを作らなければなりませんから……。幸いなことに、君と私が子どもを作るには、人間と同じようにしなければ、出来ないようですからね……」 意味ありげに微笑まれて、ゆきはドキドキしてしまう。 「私としては、本当に、魂も肉体も、愛し合った上で出来るのですから、嬉しい限りですよ……」 天海は楽しんでいるかのように言うと、ゆきをそのままベッドに運ぶ。 いつも以上にロマンティックな行為だと、思わずにはいられない。 ゆきにとっては、天海と愛し合うことは、神聖な行為なのだから。 これ以上に幸せな行為を知らないから。 だが、神様と子どもを持つことを望むなんて、不遜な行為なのではないだろうか。 ゆきはふとそのようなことを、心配してしまう。 ゆきのほんの少しの心配が伝わったからか、天海はゆきを優しく包み込むような眼差しを向けてくれた。 「ゆき、私たちが愛し合って、子どもを儲けることは、とても神聖な行為で、君は何も不安になることはないのですよ?君と私の為すべきことは、お互いの愛情を高めあうだけです。だから、何も考えずに、ただ私の愛だけを感じて、その身を任せていれば良いのですよ……?」 「……天海……!!」 天海はいつでもそばにいて、ゆきのことを一番理解して、愛してくれる。 ゆきもまた、天海にとっては、一番愛してくれて、理解してくれる相手になりたいと思う。 ゆきは天海に泣きそうになるぐらいに幸せであることを、笑顔と包容に伝えて、愛の嵐に身を任せる。 こんなにも幸せなことは、他にはないよ。 ゆきはそう思いながら、情熱に身を任せた。 躰と魂をひとつにした瞬間、ゆきは新しい生命が、自分の躰にある宇宙に芽生えたと実感出来た。 幸せに満たされて、天海の腕に抱かれながら、ゆきは呟く。 「……天海、私たちに新しい生命が宿ったかもしれません……」 「……それは幸せですよ、ゆき。愛していますよ、君も新しい生命も……」 天海にうっとりとするぐらいに幸せな声で囁かれながら、ゆきは微睡みに意識を沈ませる。 明らかな幸せは間も無くやってくると、感じながら。 |