*冬の朝*


 今朝はとても冷え込んでいる。

 とはいえ、京よりはずっとずっと暖かい。

 この世界の住宅は、本当に温かくて、快適だ。

 小松は傍らに眠るゆきを見つめる。

 同じ布団の中にいるから、暖かいのかもしれない。

 幸せな気持ちになれるぐらいに、ゆきは暖かい。

 この世界には、眠りに墜ちるための温かなものとして、電気毛布や電気あんかがあるが、そんなものを頼るよりも、ひとに頼るのが一番だと思ってしまう。

 特にゆきは抱き締めて眠ると、抱き心地が良いだけではなく、本当に暖かい。電気毛布なんかには頼らなくて良いぐらいに、暖かい。

 こうして抱き締めているだけで、幸せと温もりが同時に得られる。

 だから、冬場は布団から出たくはなくなるのだ。

 ゆきを、抱き締めて眠るのは、休みの前の日と決めている。

 ずっとこうして一緒に眠っていられるからだ。

 ゆっくりとこうして眠っているだけで、幸せな気持ちになる。

 ほわほわした気持ちになる。

 ゆきを抱き締めていると、本当に布団からでたくなくなってしまうのだ。

 一足前に目覚めた小松は、この温もりを幸せに感じながら、いつまで経ってもゆきを放せないと思った。

 今日は起き上がらなくても構わない。

 当分は漂いたいと、小松は感じずにはいられない。

「……ん……」

 とても気持ち良さそうに眠っているゆきが、とても可愛い。

 いつまで見つめていたい寝顔だと、思わずにはいられなかった。

 小松がゆきの寝顔を楽しんでいると、ゆきの瞳がゆっくりと開かれた。

「……あ……、帯刀さん……」

 ゆきは寝惚けた声で小松を呼ぶ。

 その声がとても可愛くて、小松は思わずクスリと笑った。

「起きたの?」

「……半分…」

 ゆきの表情を見つめていると、本当に半分だけ眠そうにしている。

 起きた様子もとても可愛い。

「……こうしていると、本当に暖かいですね。起きられなくなりますよ」

「起きなくても良いんじゃないの?このままじっとしていても、私は構わないと思うけれど……」

「……だけど、起きないといけないですよね」

「私は、暫くはこうしていても構わないと思うけどね。折角、今日はお休みなんだから。以前の私ならば、とうに起きていただろうけれど、今はこうしてこちらにいる。郷に入れば郷に従えだからね」

 小松はゆきをしっかりと抱き締める。

 思いきり抱き締めると、ゆきはつい恥ずかしそうにしている。

 これが可愛い。

「こうしていると本当に幸せな気持ちになるね。とても暖かいね」

「……はい、暖かいです」

「じゃあ、もう少しこうしていようか」

「はい」

 ふたりで一緒にいると、それだけで、とても満たされた気持ちにさせた。

「暫くはこうしていて。私は君の温もりで、こうしているだけで幸せだからね。もう少しこうしていよう。なんなら、1日でも構わないよ?」

「流石に1日はやりすぎかなって思ってしまいます」

「私はこうしていても構わないと思うけれどね」

「流石にそれは恥ずかしいです……」

 ゆきは恥ずかしそうに目を伏せる。

「そう?」

「……それにずっとこうしていたら、夜、眠れなくなりますよ?」

「眠れなかったら、眠れなかったで、良いんじゃないの。その分、付き合ってあげるけれど?」

 ゆきに意味ありげに笑うと、耳まで真っ赤にして軽く睨み付けてくる。

 その表情がまた可愛らしい。

 小松はつい見つめてしまう。

 「だったら早起きしましょう」

「……もう、早起きする時間ではないけれど?」

 ゆきは慌てて時計を見る。

 小松の言葉の意味を察して、軽く溜め息を吐いた。

「……そうですね。既に朝寝坊の時間ですね」

「休みの日ぐらいは構わないんじゃないの?だから、もう少しこうしていようか?」

 小松はフッと微笑むと、ゆきを腕の中にしっかりと閉じ込める。

「……こうしていると良いね。これだけで、暖房器具は必要としないんだからね」

「暖かいです。本当に」

「私達は環境に優しい暮らしをしているということだよ」

 小松はゆきの細くてすんなりとした脚に自分の脚を絡める。

 とても温かくて、心地が良い。

 ゆきはといえば、かなり恥ずかしそうに小松の肩に自分の顔を埋めている。

 それがまた可愛い。

「暖かいでしょ?」

「帯刀さんはイジワルです。本当に……」

 ゆきが拗ねる顔が可愛いから、ついからかってしまう。

「そんなことを言うと、お仕置きだよ?解っているよね?」

 小松はわざと艶やかな声と笑みを浮かべながら呟く。

「……わかりません」

 拗ねた子供のように言うゆきが本当に可愛くて、小松は顔を近づける。

 本当に可愛い。

 凜としたところもあり、小さな子供のように可愛らしいところも、前向きなところも、頑固なところもある。

 本当に様々な部分が見られて、全く飽きない。

 本当に可愛くてしょうがない。

 小松は愛しすぎて、強く抱きすくめた。

「……た、帯刀さんっ……!」

 ゆきは息が出来ないようで、苦しそうにする。

 だが、これぐらいでは愛していることを表現することが出来ない。

「……こんなんじゃ足りないよ……」

「えっ!?」

 ゆきは息を呑む。

 小松はゆきの唇を深く奪う。

 唇を吸い上げて、激しいキスをすると、ゆきは途端に身体から力を抜いて、小松に総てを委ねる。

 鼓動が激しく跳ね上がる。

 ゆきは小松にしがみついたまま、離れなかった。

 ようやく唇を離して解放する。

 するとゆきはうっとりとした眼差しを小松に向けた。

 それがとても可愛かった。

「……おしおきおしまい」

 くすりと笑うと、ゆきは恥ずかしそうに小松の肩に顔を隠す。

「……このようなおしおきなら、たまには良いですよ……」

 ゆきは静かに囁く。

 小松はつい笑顔になりながら、ゆきを抱き寄せる。

 温かくて柔らかな身体。

 これ以上に愛しいものはない。

 愛するものの温もりを幸せに変えられる冬という季節は、小松にとっては素晴らしい季節だった。

 




モドル