朝、目覚めると大好きなひとが傍らに眠っている。 それが現実に起こっていることなのか、ゆきはつい考えてしまう。 苦難を乗り越えて結ばれたひと。 ずっとそばにいたいと思った、ただひとりのひと。 ゆきにとっては、こうして隣に愛するひとがいることを確かめることが、幸せの欠片となっている。 幸せで、踊り出してしまいそうになる。 愛するひととの、朝の日差しよりも温かな時間は、これからずっと過ごすことが出来る幸せなものだ。 ゆきはそれを考えるだけで、幸せで妙な笑みを浮かべてしまう。 傍らに眠るひとを見ると、静かに眠っているのが解る。 自分はどうなっても良い。 その先にある明るい未来の礎になればそれで消えても構わないと。 そう言った、本当の意味で”サムライ“なひと。 この世界に似た異世界で、未来への礎となり、総てをやり終えて、こちらに来てくれた。 本当に幸せで泣きそうになる。 その選択に感謝をしながら、ゆきは愛してやまない男性の横顔を見つめた。 目を閉じている小松はとても綺麗だ。 じっといつまでも小松を見つめていたい。 ゆきがのんびりと思っていると、小松の瞼がわずかに動いた。 ゆきだけの王子様のお目覚めだ。 ゆきはうっとりと微笑みながら、小松を見た。 「おはようございます。小松さん」 「おはよう……、ゆき」 小松は、ゆきの頬に指先を伸ばすと、そのラインを緩やかになぞってくれる。 甘い指先のワルツに、ゆきは蕩けてしまいそうになった。 ふと、小松がイジワルで甘い笑みを浮かべてきた。 「……ゆき、髪が寝癖でピョンピョン遊んでいるよ。まるで小さい子みたいだね」 小松はゆきの寝癖を直すように、ゆっくりと髪を撫で付けてくる。 大人の女性として迎えた朝なのに、何だか子供扱いをされてしまい、悔しい気分になった。 つい溜め息を吐きたくなる。 子供と大人の関係ではないのに。 ふたりは立派に大人の男女の関係だというのに。 「小さな女の子じゃありませんよ、小松さん」 ゆきが拗ねながらそっぽを向くと、小松は楽しそうにゆきを抱き締めてくる。 背後から抱き締められて、うなじに唇を押し付けられる。 息が出来なくなるぐらいに、官能的な痺れが全身に走り抜ける。 肌が震えて、どうしようもない。 ゆきが唇を戦慄かせていると、小松はイジワルにセクシィに笑う。 「……私も流石にお子様に対して、こんなことはしないよ?それは当然でしょ?」 小松は本当に甘くてイジワルなひとだ。ゆきが真っ赤になっているのを、とことんまで楽しんでいるようだ。 「……おはよう、君に寝顔を見せてしまったのは、私としては不覚を取ったのかな?だったら、君にはお仕置きをしないと……ね?」 小松はゆきの躰を背中からしっかりと抱き締めながら胸を思いきり抱き締めてくる。 「……小松さん……」 抱き締められたかと思うと、胸のラインを柔らかく撫でられる。 こんな甘いお仕置きを受けると、ゆきは更に肌を震わせた。 昨夜の甘くて情熱的な瞬間を思い出してしまう。 こんなにも甘くて情熱的な瞬間は、他にはないのではないかとゆきは思った。 ゆきを追いたてるように、焦らすように、小松は指先を動かしてゆく。 甘くて蕩けてしまいそうで、本当にどうしようもないぐらいに甘い。 ゆきは息が出来なくなり、どうして良いのかすら解らない。 「……どうしたの?君はお仕置きが大好きみたいだからね。もっともっとお仕置きをしてあげなければ……ね?」 小松は、ゆきのパジャマの上から、敏感な胸を弄ってくる。 こんなことをされると、こなまま快楽に躰が溶けて、何も抵抗できなくなる。 逆らうようなことすら言えないゆきを楽しむように、小松はしっかりと抱き寄せてきた。 ゆきは胸がおかしいリズムを奏でるせいで、普通に物事が考えられなくなる。 小松に首筋を強く吸い上げられる。 激しい音を奏でながらキスをされて、ゆきはこのままだと、きちんと起きられないと思う。 「……朝御飯……、作らなくちゃ……」 ゆきは甘い声になるのは致し方がないとは想いながら、小松に抵抗を試みてみた。 「……ゆき、朝御飯よりも大事なものがあるでしょ?たまの休みなんだから、ゆっくりするよ」 小松は朝御飯の誘惑にはやはり乗らないようだ。 だが、これしかゆきには思い付かない。 百戦錬磨ではないから、本当にどうして良いのかが解らないのだ。 「……小松さん……、とっても美味しい朝御飯を作りますから……」 「お粥もご飯も、君はまだ炊いていないでしょ?今からなら、もうブランチになるのは確実だからね?ゆき、美味しいブランチを期待しているよ?ブランチなんて、便利な表現があるのは良いよね」 小松はからかうようにくすくす笑いながら、イジワルにもゆきのボディラインをまさぐってくる。 そうされるだけで、躰が落ち着かないぐらいに震えてしまう。 朝の甘い戯れ。 小松に教えてもらったもののなかで、甘過ぎて暴れだしてしまいそうになるしろもの。 それはそれで嬉しいのだけれど、恥ずかしさが半端ではない。 「……どうするの、ゆき。選択肢は君にあるんだけれどね。朝御飯、作るか。それとも、ブランチにするか? ブランチだったら、鳥のたつ田揚が良いかな。鶏肉は買ってある筈だから……」 「……小松さんっ……」 ゆきが苦しげに声を上げると、小松はゆきの躰をベッドに押し倒す。 「……あ、あの、小松さんっ!?」 「駄目……。君にはもう選択肢はないよ……」 小松は低い艶のある声で呟くと、ゆきを緩やかに甘い世界へと誘う。 「こ、小松さんっ!?朝からそんな、あのっ」 「……駄目。異義は認めないからね……?」 小松の声で囁かれると、ゆきはもう何も言えなくなってしまう。 異義なんて言えるはずない。 愛するひととの日常に、ゆきは幸せを感じながら、ドキドキしてしまう。 このまま甘い世界へと落ちてゆくのも悪くない。 ゆきは小松を抱き締めて受け入れる。 「……抵抗をしないんだね。良い子だ……」 まるで小さな子供に言い聞かせるように小松は呟くと、小松はゆっくりとゆきを可愛がってゆく。 こうしてふたりだけの秘密の詰まった甘い朝を過ごしながら、ゆきは幸せを噛み締める。 こんなに幸せなことは他にはないと思いながら。 |