*ソメラレタイ*


 年上のひとに憧れるのはよくあること。

 ゆきは、小松帯刀に恋をしている。

 恋愛関係にあるけれども、何だか自分だけが一方的に好きなのではないかと思ってしまうことがある。

 大好きだからこそ、つい拗ねるような態度を取ってしまいそうになる。

 今日も小松の家に遊びに来ているが、相変わらず仕事に熱中していて、ゆきがここにいることすら、忘れてしまっているかのようだ。

 ゆきは、折角、久し振りに会えたのに、久し振りのデートなのにと、拗ねた気持ちになる。

 もう課題のレポートも終わってしまった。

 だからつまらない。

 ここにいてもしょうがないような気がしてしまう。

 帰ってしまおうか。

 けれども、それだと折角会えた時間を、自ら潰してしまうことになる。

 ここで拗ねてしまっても、子供だと思われてしまう。それは、それで逆効果だと、ゆきは思う。

 小松には、ひとりの女性として見て欲しいと思うから。

 ゆきは結局、小さな抵抗として、小松に完全に背中を向けた。

 顔をあわせない。

 背中を見せて抵抗をしてしまう。

 それが唯一の方法だと、ゆきは思った。

 背を向けながら本を読むことにする。

 小松が読んでいる歴史小説を手に取って、読み始める。

 すると面白くなって読み続けてしまう。

 こうしているのも悪くない。

 ゆきは、すっかり小説の世界に入り込んでしまい、夢中になって読み進めた。

 

「……き、ゆき……」

 遠くで誰かが呼んでいる。

 だが、小説の世界に没頭しすぎて、ゆきは現実世界に呼び戻されたくないと思ってしまう。

「……ゆき、ゆき……!」

 いきなり、鋭い声で名前を呼ばれてしまい、肩を強引に掴まれて、ゆきは驚いて目を見開いた。

「……!!!」

 思わず息を止める。

 目を見開くと、小松が怒っているように見えた。

「……帯刀さん……」

「私が君を何度も呼んでいるのに、どうして返事をしないの?」

 小松は本気で機嫌を損ねてしまっている。

 ゆきは驚いて、ただ唖然と小松を見上げる。

「帯刀さんがお仕事に熱中されていたから、私は本を読んでいただけですよ。本が思った以上に面白くて、つい読み耽っていただけで……」

 ゆきはゴニョゴニョと言葉を揺らしながら呟く。

 元々は小松が仕事に熱中していたからなのに。

「ひとりで何もせずにいるのは退屈だったから、本を読んでいただけですよ。思ったより楽しかったので」

 ゆきはそれだけを言って、小松に再び背中を向けた。

 理不尽に怒られるのは、こちらも堪らないのだ。

 ゆきが背中を向けると、小松は強引に肩を強く掴んで、ゆきを自分の方へと向き直らせる。

「……ちゃんと私の言うことを聞きなさい」

 小松は艶のある声で、ピシャリと言う。

「帯刀さんの言うことばかりを聞いてはいられませんよ」

 ゆきは抵抗を試みる。

 本当にクールで意地悪な横暴なひとにしか見えない。

 ゆきがピシャリといい放つと、小松はいきなりゆきをフローリングに押し倒してしまった。

「……!!!」

 いきなりこんなことをされるとは思ってはいなくて、ゆきは鼓動を速めながら耳まで真っ赤にする。

「……君は強情だね?素直になれば良い。私に構って貰いたくて拗ねていたと、ね……。ゆき、ここは私に従いなさい……」

 小松は艶やかな声でゆきに命令をすると、いきなり唇を塞いでくる。

 荒々しく、そして艶やかに。

 不快感キスは、いつものような優しさはなくて、何処か粗暴だ。

 だが、そこには愛情がたっぷりと滲んでいることを、勿論、ゆきは感じている。

 荒々しくも激しいキスの音が、部屋に響き渡る。

 ドキドキし過ぎて、このままでは心臓が何処かに飛び出して行ってしまいそうだ。

 小松に従順になってしまいそうな自分がいる。

 それが、良いのか悪いのか、ゆきには解らない。

 息が出来ないぐらいに激しくキスをされ、唇の周りが唾液でいっぱいになってしまう。

 抵抗をしようとして、小松の鍛えられた逞しい胸を押し戻そうとするが、それが上手くいかない。

 それどころか、更に動けないようにしっかりと抱き締められてしまう。

 動くことが出来ないままで、小松の激しいキスを受け止めるしかなかった。

 嫌じゃないから。

 大好きなひとにキスをされているから。

 だから抵抗することが出来ない。

 かといって、受け入れを示すように小松を抱き締めることは出来ない。

 ようやく唇を話される。

 小松にキスをされたところは、ぷっくりと腫れ上がってしまった。

「……全く……、君は妙なところで私に従順ではないね……」

 小松は怒っているというよりは、何処か楽しんでいるかのように言う。

 それがゆきをドキリとさせる。

「君にはお仕置きと、お勉強が必要なようだね……。私に従うための、私色に染まるための勉強がね……。調教しがいがあるということかな……」

 透明感があるのに、艶やかでほんのりと意地悪な甘い声で囁きながら、小松はゆきのフェイスラインをゆっくりと意味ありげに撫でる。

 艶やかでゾクリと背中が震える行為と声に、ゆきはこのまま小松色に染め上げられた液体絵の具にでもなってしまったような、そんな気持ちになる。

 だが、小松には負けたくなくて、ゆきは最後の抵抗を試みる。

 逆らえないのは解ってはいても、ゆきは精一杯、小松の胸を押し退けようとした。

「……ほら、抵抗しないの……」

 小松に艶のある声で優しく命令されてしまうと、ゆきは抵抗できなくなる。

 身体に力が入らずに、だらんとしてしまうのだ。

 ゆきが抵抗できなくなるのが解ると、小松はあだめいた声でくすりと笑う。

「……良い子だね……。君は……」

 小松はゆきに柔らかくキスをすると、じっと見つめてくる。

 こんなにも艶やかな瞳で見つめられてしまうと、ゆきは鼓動を速めながら、従順な眼差しで見つめてしまう。

「……そう、ゆき、良い子だね……。私をじっと見つめて。君を私色に染めるよ。私だけの色にね。ゆき。もう君が二度と私に背中を向けることが出来なくなるぐらいにね……」

 小松は艶が滲んだ囁き声で、ゆきを降伏させる。

 分かっているのだ。

 どうすればゆきが堕ちるのかを。

 ズルイ。

 だけど大好き。

 小松は真っ直ぐゆきを見つめた後、ゆきを抱き締めながら、自分色に染め上げるために、首筋からキスを始める。

 官能的な方法で、小松色に染め上げられながら、ゆきは幸せ色に染められていると感じた。

 





モドル