望月の湯


 熊野に向かう途中の龍神温泉で、将臣と再会し、望美は温かなそしてどこか切ない気分になった。
 京の春霞の中で再会し、今、夏の温泉地で逢いまみえた。
 これも白龍の逆鱗のお陰だ。
 今度こそは、幸福になりたい。幸福にしたいと思わずにはいられない。
 もっと将臣の事を識りたいから、もっともっと近付きたいから…。
 綺麗になれば、将臣も幼なじみではなく、ひとりの女として見てくれるのではないだろうか。
 恋する女の子はいつも貪欲。もっと綺麗になりたい。もっと将臣に近付きたい。
 望美はそっと寝床から抜け出して、宿の奥にある露天風呂へと向かった。
 ここ龍神温泉は、美人湯として知られているらしい。いつもよりもうんと温泉に入れば、きっと美しくなれるのに決まっている。絶対にそうだと決め付けて、望美は露天風呂に向かった。
 この時間なら、誰も入っては来ないだろう。
 ゆっくりとひとりで湯に浸かるのも、心地が良いだろう。
 誰も来ないだろうから、貴重な布で肌を覆うこともない。
 全身をしっとりとしたお湯で、温めて、肌をすべやかにしたい。
 ふと、将臣のことが脳裏に浮かぶ。剥き出しの肌を甘く囁いて撫でてくれる。
 ここまで想像をして、望美はまるでのぼせたように真っ赤になってしまった。
 全く、どうしてこのような妄想を浮かべてしまったのかと思うぐらいに恥ずかしい。
 望美はすっかり真っ赤になった顔を、手で冷ました。
「…私ってバカー! ひょっとして妄想狂なのかしら…」
 ふと背後に気配がして、望美は背中を強張らせた。緊張が全身を駆け抜ける。
「おい、誰かいるのか?」
 聞き慣れた良く通る低い声。今や、望美の全身を蕩かせる声だ。
 今度は別の緊張が、望美の躰に駆け抜けていく。甘くて、胸の奥がとけてなくなってしまいそうになるぐらいの、衝撃。
「将臣君…」
 押し殺すようでいて甘くなる声で、望美は声の主を呼んだ。
 正面を向く勇気なんてない。
 恥ずかしさで焼かれて死んでしまいそうだったから。
「望美…」
 将臣も息を呑んで驚いているようだった。名前を呼んでくれる声が、ひどく艶やかだ。こんなに色気のある将臣の声は、聴いたことがないかもしれない。
 余りに官能的な空間過ぎて、望美は動くことが出来なかった。
「…望美、おまえも月に誘われて来たのか?」
 将臣が湯の中に入る水音がする。それが望美の胸を早鐘のように打たせる。
「…お湯に入ると、綺麗になれるかなあって…思っただけだけど…」
 ゆっくりと将臣が背後に近付いて来るのが解る。
 背中が小刻みに震えているのに、動くことが出来ない。
「じゃ、邪魔だったら出るし、あ、将臣君も、ひ、ひとりでゆっくりしたいって、お、思うだろうし」
 望美は言葉を何度もつっかえさせながら、妙な早口でまくし立てた。焦っているのがまるわかりだ。
だが動けない。
 将臣と言う名の、官能の呪縛にしっかりと押さえ付けされていた。
「…俺は月に誘われて来たんだぜ? 美しい満月…、おまえに」
「あっ…!」
 背後から包み込むように将臣に抱きしめられ、望美はどうしていいかが解らないぐらいに、肌を震わせて喘いだ。
 こんなに密着したことなんて、今まではなかったのだ。
「…すげえ頑張って太刀を振るっているのに、おまえの腕は華奢なんだな」
 将臣の指先で腕のラインを撫でつけられる。ぞくりとする口では言い表せないような快楽に、望美は息を弾ませた。
 撫でてくる将臣の腕を、震える手でなぞってみる。筋肉が驚くほど綺麗に付いていて、逞しくなっていた。
 そこにいるのは望美が知っている少年ぽさを残していた将臣じゃない。完全に男になった将臣だ。
 何だか自分の知らないうちに、将臣がひとり成長してしまったのが、悔しい。
「将臣君…、大人になっちゃったんだね…」
「おまえより三年余分に時間が流れているからな。当然と言えば当然だが…」
「ズルい…」
 大人びた、自分の知らない時間を歩んで来た将臣が何だか恨めしい。ずっと一緒に成長してきたのに、自分だけ何歩も先に行ってしまったのが、切なかった。出来たら一緒に成長したかった。
「何がズルいんだよ?」
「先に大人になって、男らしくなって…」
 ぶつぶつと拗ねるように文句を言っていると、将臣が背後から力強く抱きすくめてきた。
「おまえだって代変わっちまったじゃねえか。良い女になっちまって、びっくりしちまった」
「やっ、あん…」
「こんなに女ぽくなっちまって、どうしちまったんだよ」
 将臣の指先が、乳房に触れたかと思うと、両手でしっかりと揉みしだかれはじめた。柔らかな感触を楽しむように将臣が揉み上げてくるものだから、望美は浅く喘ぐ。下腹部が痺れるように熱くなり、何だか変な気分になってくる。
「いつからこんなに胸が大きくなっちまったんだよ? 浮くぐれえに大きくな…」
「…スケベ…っあっ…!」
 将臣の唇が、自然に首筋に這う。舌先で舐められたら、強く吸い上げられる。それだけで熱にとけてしまいそうだ。
「俺がいねぇ間に、誰にもんなことをさせちゃいねぇよな?」
「こんなスケベなことをするのは…、将臣君だけだもの…っ!」
 将臣に乳首の先を摘まれて、望美は快楽という名の震えに、追い詰められていく。
「だったら、俺だけにおまえのエロい声、エロい表情を見せてくれ。俺だけにだ。いいな?」
「…んっ!!」
 将臣の指先に強く乳首を捩られる度に、望美は綺麗な首を大きくのけ反らせていく。それを愉しむかのように、将臣は動きを速めた。
 指の動きだけで翻弄された後、将臣が、腕の中にすっぽりと入った望美の躰を向き直らせた。
 顔を改めて付き合わせ、将臣が不適に余裕のある微笑みを浮かべているのが解る。それが何だか憎らしくて悔しい。
「おまえはホントに良い顔をするよな?」
 将臣は望美の柔らかなマシュマロのような胸を持ち上げ、水面から顔を出した乳首に唇を寄せていた。
 柔らかなところをディープキスをするように吸い上げられたり、乳首を強く吸い上げてくる。時には舌で転がされて、湯舟にいるのがやっとの状態になった。
 今までは知ることがなかった気持ちの良さに溺れながら、望美は将臣の肩にしっかりと捕まった。
「あ、ああっ!」
 乳房を将臣に押し付けながら。頭がくらくらするぐらいに、感心していた。
 将臣がくれる胸の愛撫に夢中になっていると、手を下肢に延ばされる。
 お湯に揺れる柔らかなヘアを掻き分けて、将臣の指先は望美の女の象徴である部分に触れてきた。
「ふ…っ!」
 将臣の指先が、余りにも焦らすように動いて来て、とても隠微な動きをした。
 望美の濡れた亀裂を指で撫でている。望美は指の動きだけで気持ちが良すぎて、何度も呼吸を乱した。
「…すげえ感じてるな。濡れてるぜびしょびしょにな」
「そ、そんなことないもんっ!」
 必死で将臣に言えば、直ぐにリアリティは欠ける。
「そうやよ。じゃあ、このとろとろになっている液は何だよ?」
「こ、これは温泉のお湯だもの。か、関係ないよ」
「ホントかよ?」
 将臣は意地悪に笑うと、とろりとした液が絡んだ指先を、将臣にこれみよがしに見せ付けてくる。
「あっ…!」
 指先がどんどん深い所に入り込み、躰の芯にもどかしい熱を生む。
「やっ、あっ、ああっ!」
 痛いのに痺れるような快感を先に立つ。
 硬くなった肉芽を指でいじられて、望美は鈍い快感に腰を浮かせた、
「-----望美・・・」
 頭がぼんやりとしておぼろげに目を開けると、将臣に温泉の縁に座らせられる。
 ひんやりとした石が気持ち良かった。
「見せろよ、おまえを」
「----や、やだ・・・っ!」
 抵抗してもそれで止める将臣ではない。望美の足を大きく開かせると、月夜に照らされた秘部を、食い入るように見つめた。
「綺麗だぜ」
「綺麗じゃない!」
 絶対にグロテスクに決まっている。そんなことを想うと、あがめる将臣の眼差しがひどく痛い。
「…あっ…!」
 足の付け根ギリギリの所を深く吸い上げられた後、将臣の唇は望美の濡れた中心を這い回り始める。
 何かが音を立ててぷつんと切れてしまうぐらいに、感じてしまう。
 舌先で淫らな水音を奏でながら、ぐるり硬くなった突起を舐めまわす。
 舌が入り口から体内へと侵入し、蜜をかきだすような動きをした。
 くにゃくにゃにとろけそうになりながら、望美は将臣に縋り付き、背筋に快感を覚える。
 体内に指を乱暴に突っ込まれたときには、もうどうしようもないぐらいに反応してしまう。
 もう自分ではどうしようも出来ない領域に入っているような気がした。
「将臣君・・・!!」
 長くて太い指が、胎内に蠢いて、たまらない熱い快感を吹き込んできた。
 頭で何も考えられなくなる。
 その瞬間に頭の芯まで痺れるような快感が走り、望美は絶頂に達した。

 まだ息が整わないのに、将臣は望美を支配するように抱きしめてくる。
「俺以外にこんな顔は見せるなよ」
「・・・見せられないよ・・・」
 「だったら、もっと、エロい顔を見せてもらわねえとな」
「あ、あああっ!」
 将臣が弾けそうになるぐらいに胃大きくなっているのが解る。
 腰が震える。
 両手で足を大きく広げられると、ゆっくりと将臣が侵入してきた。
 耐えがたい痛みが全身を貫く。
 それでもこの先に進みたい。
 将臣自身が、望美の内部を押し広げながら、進んでくる。それ自身が生きているように、ドクドクと熱く脈打っている。
 望美に気を使うように緩やかに親友してきたが、やがて最奥に近付くと、そこを思い切りすり上げてきた。
「あああっ!」
「痛いか?」
「・ちょっとは・・・」
 必死になって答えると、将臣の指は宥めるように肉芽を掴んでくる。
 すると自分に意志とは関係なく、望美の胎内は将臣締め付けて、反応してきた。
 将臣を離したくない-----
 そんな想いが突き動かしていた。
 将臣は苦しそうに粋を吐くと、望美ごと温泉の中に入っていく。
 激しい抽送が始まり、何が何だか解らなくなってきた。
 押し出されるような動きをされる度に、酔いつぶれてしまうような快楽が押し寄せてくる。
 吐息が激しくなり、お互いの熱の激しさを感じ取る。
 今まで「幼なじみ」という名の、埋められない距離が、どんどん埋まって近くなっていく。そんな気分になる。
「あ、ああああ----!」
「望美!!」
 将臣の動きが聖性急に成り、望美もまた激しく肌を震わせる。
 熱い将臣の性を奥深いところで受けながら、望美は意識を手放した。

 心地よいお湯に躰を預けながら、望美は将臣の腕の中で一息を吐く。
「今夜のことは想い出になるよ」
「ああ。俺もな」
 この状態でいるときには、何の枷もない。
 ただの男と女だ。
「またしようぜ?」
「もう、スケベなんだから・・・」
 フッと甘く笑って交わしたキスは、偽りがなかった-----

 だからどんなシーンになっても、あなたを信じられるのよ----
コメント

少しエロくなってしまいました・・・





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