穏やかな構図


 一緒に自転車に乗って、笑い転げていたのは、ついこの間だというのに、何だか遠い昔のように思える。
 激しい時間も、厳しい時間も乗り越えて、今、こうして穏やかでいられることが、究極の幸せ。
 望美はひざ枕をして眠る将臣の髪を、柔らかく指で梳いた。
「綺麗な月ね…」
「そうだな」
 将臣とふたり、窓から見える神々しいまでに麗しい月を愛でる…。
 最近、こうやってふたりの時間をなかなか過ごす事が出来なかった。だからこそ、ふたり揃っての観月は嬉しい。
「久しぶりだね、こうしてゆっくり出来るの。将臣くんはここのところ忙しかったもんね」
「そうだな。こうやってじっくり月を眺めるのは、何年ぶりかもな」
「そうか…。将臣くんは、平家を率いてここまでくるのに、ずっと忙しかったものね」
 こういう穏やかな時間が、ずっと過ごせなかった将臣のことを思うと、胸がチクりとする。
「そんな顔をすんなよ。がむしゃらにやってきたからこそ、今があるんだぜ? だから俺は後悔なんかしねぇ。お前とこうして穏やかな時間を過ごせるのは、あの過去があるからだからな。こうやってお前のことを本気で好きだと気付けたのも、あの月日があったからだしな」
 穏やかに語る将臣を、望美は心ごと抱きしめたくなる。
 日向の匂いがする頬を撫でながら、幸福が溢れてくるのを感じた。
「好きだぜ」
 突然、照れたように言われて、胸がときめく。どうかえしていいか解らなくて、望美は頬をぽおっと紅に染め上げた。
「純情だな。俺の嫁さんは」
 ニヤニヤからかうような眼差しを向けてくる将臣に、望美はムッとしながら、顔をわざと背ける。その後に笑い声が聞こえ、余計に拗ねたくなった。
「からかわないでよッ!」
「だってホントのことだろ?」
 どこまでもこの旦那様はからかうのがお好きらしい。生まれてから、からかわれない日なんてなかったかもしれない。
 幼い頃からずっと一緒で、お互いのことを知り尽くしている。
 そのせいか、甘いシーンというよりは、こういったじゃれあうシーンが多くなっていることは確か。
 もっとロマンティックがいいのに。
 望美は唇を尖らせながら、将臣を見た。
「そんなにイジワルばっかりするんなら、将臣くんにえっちさせない!」
 ぷいっと顔を背けながら、ちらりと将臣を見る。
「げっ!」
 すると明らかに困ったような、焦った表情をしている。
 それが可愛いらしくて、望美はニンマリと微笑んだ。困った夫を見るのは、中々楽しいものだ。
「おいっ! そんな顔をするな!」
「えっ! きゃあっ!」
 唐突に将臣が立ち上がったかと思うと、肩を持たれて、そのまま床に押し倒された。
 将臣は望美を組み敷くと、艶めいた視線を向けてくる。
 ドキドキしてしまい、このままでは負けてしまうような気がした。
 それぐらいに、今の将臣はカッコイイ。
「あっ…、ちょっと、えっちは禁止よっ!」
「口だけだろ? お前の躰は俺が欲しくてたまらない筈だぜ?」
 反論しようとすると、将臣の意地悪な唇に塞がれる。
 深くて甘いキスに、望美の抵抗心は一気に削がれた。
 こうなると将臣のなすがままになる。それが望美には悔しくてしょうがない。
 逞しい胸板を柔らかな自分のそれに押し付けられて、くらくらしそうになる。
 抵抗なんて出来るはずなんかない。
 舌でたっぷりと味合われて、呼吸すらもストップしてしまう。それぐらいに将臣のキスは魔法を持っているように思えた。
 唾液でとろとろになるのを感じながら、それを優しい将臣の舌が綺麗に拭ってくれる。
 幸せで胸が飛び出してしまうぐらいだ。
 すっかり将臣のペースに巻き込まれてしまい、望美はそれに溺れてしまう。
 キスが終わると、将臣は当然のごとく望美のワンピースをもぞもぞと脱がしにかかってきた。
 なし崩しに膚を重ねると思っていると、黄金色に空に浮かぶ月が目に入った。
「ま、将臣くんっ! 月が観てる…」
「構うもんかよ。見せてやればいい…。お前が俺の腕の中で乱れるのを」
 望美がいくら制しても、止める将臣ではない。ワンピースを胸元まで一気にたくし上げ、まさぐり始めた。
「…もっ、やだっ…、それにあんな綺麗な月滅多に観られないのに…、もっと観たいのに…」
「いやじゃねぇだろ?俺は空に浮かぶ満月より、腕の中の満月のほうが俺は好きだぜ。月光なんかより、お前のがずっと綺麗だ…。こんな風に思うのはお前だけだぜ」
「あっ…! んんっ…」
 首筋に舌を這わせながら、将臣は望美の乳房をしっかりと愛撫してくる。肌が熱くなり、快楽が頭の上を突き抜けていく。
 望美は息を乱しながら、将臣にしがみついた。
「みんなの期待も高まっているからな? 俺達の子供の誕生は…。沢山愛し合わねぇと、間に合わないだろ?」
 そんなことはきっとこじつけだと解っている。だが、正当な理由があれば、愛し合い易いのも確かだ。真っ昼間から、恥じらうことなく愛し合える。
 望美はぎゅっと将臣を抱き寄せて、同意を示した。
 すると、将臣の手の動きが大胆になる。
 唇で望美の乳房を吸い上げながら、手は圧場所に伸びて、イタズラをしてくる。
 襞に触れられるだけで、甘い水音が響き渡る。
「あ…んんっ!」
 月に観られている。
 その意識が望美を更に高まらせる。
「…ま、将臣…君」
 将臣の指は、器用に望美のスリットを撫でると、肉芽をつかんでくる。それだけで肌が震えるほどに感じた。
 自分でコントロール出来ないぐらいに感じてしまっている。
 望美は将臣にしか見せない自分をさらけ出す。
「あっ…! ああんっ!」
 首筋が仰け反る。
 将臣の指が、胎内に入り、かき混ぜているのを感じた。
 指で最奥を撫でられ、望美の腰が跳ね上がる。敏感な所を責められると、溜まらなくなる。
 躰の奥深いところが、熱を帯びて、今にも爆発しそうだ。
「あ、あああっ!」
「好きだもんな、ここを弄られるの」
 将臣は楽しそうに言いながら、唇を望美の蜜口に押し当てた。
 音を立てて蜜を吸われるだけで、気が変になりそうだ。
 もっとして欲しいだなんて、そんな淫らな事すら考えてしまうのは、イケナイことなのかもしれないが。
「望美…」
「ン…、将臣…く…ん」
 このままとことんまで堕ちてしまいたい…。
 そんな望美の欲望に応えるかのように、将臣の指と舌の動きは烈しくなった。
「あ、ああ、ああっ!」
 腰が自分の意志とは関係なくグラインドし、気持ちよさは最高潮に達する。
「あ、ああっ!」
 将臣の、指や、舌に追いつめられ、望美はガクリと崩れ、軽く気を失った。
「ホント、お前って可愛いな」
 将臣に抱きしめられ、ようやく自分を取り戻す。まだ、息は乱れたままだ。
 将臣は望美の唇に甘いキスを贈った後、足を大きく広げさせた。
 望美の期待が高まる。
 何度も将臣の前で足を開いているが、いつまで経っても恥ずかしさは消えない。
 だが、回を重ねるにつれて、期待は大きくなっていた。
「いいか?」
「…うん。将臣くん来て」
 将臣は軽く頷くと、最早、限界に達していた自分の雄剣を、望美の入り口に押し当てた。
「あ、あああっ!」
 あれほど待っていた将臣の逞しい者が、今、胎内に滑り込んでくる。望美は歓喜の声を上げた。
 逞しいものが一気に深いところに突き刺さる。
「…望美…っ!」
 将臣をきゅっと締め付けるように包み込むと、僅かに息が乱れた。
 この瞬間の声が好き。こんなセクシーな将臣を知っているのは、恐らく自分だけだろうから。
「将臣…君…っ!!」
 内壁を擽るように緩やかに動かれる。
 気持ちがよいが、物足りない。
 ギリギリのところで焦らされて、将臣は先端を残して自身を抜いたりする。
「や、ああっ…!!」
 ここまできてイジワルをされるなんて、涙が出そうだ。
 望美は将臣に涙を浮かべて懇願した。
「…ひどい…」
「さっき、えっちさせないって、言ったからお仕置き」
「やだ…」
「だけど、お前のそんな可愛い顔と声を聴いてしまうと、こっちも溜まらなくなる…っ!」
「あっ…!!」
 将臣が一気に胎内に入ってくる。
 それを望美は尽かさず締め付けた。
 将臣の動きが烈しくなると同時に、望美の腰の動きも烈しくなる。
 月が観ているのに、烈しく求めずにはいられなくなる。
「ま、将臣く…んっ!」
「望美…っ!!」
 ずんと強く突き上げられると、もうどうしようもない。
 望美は意識が空っぽになるのを感じた。
 将臣の熱い精を受けながら、高みに登り詰める。
 もう、これ以上の幸せなんか無いと想いながら-----

 将臣の腕に抱かれながら、月を眺める。
 本当に綺麗な月だ。
「…綺麗ね」
「ああ。だけど俺は目の前の満月のほうが綺麗だと思うぜ。俺の女の…」
「もう…」
 望美は照れくさそうに笑うと、将臣にお礼のキスをした------
コメント

おなじみ新婚さんです。
あ。もうすぐ観月の季節だ(笑)




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