私の好きなもの

〜My Favorite Things〜



 この温もりが、ずっとこの手の中にありますように。
 「じゃあまた」
 なんて軽い言葉だけを残して、もう遠くには行かないで------


「おやすみ…」
 深く愛し合った後、将臣は必ず甘い声で囁いて抱きしめてくれる。
 朦朧とした意識の中に、大好きな将臣のヴェルヴェットの声が下りてくる。
 沈んでいく瞬間は、いつも幸せ------だけど怖い。
 また夢を見てしまうのだろうか。将臣がいなくなってしまう、あの夢を-----
 今こうして肌と肌をしっかりと合わせているのに。
 将臣の躰の中に納まっているのに。
 将臣と脚をしっかり絡め合っているのに…。
 こんなに近くにいて、熱を共有しているというのに、時々夢の中には将臣はいない。
 最近そんな夢を見る回数も減ってきてはいるが、いつ見るのかと、望美はびくびくしていた。
「-----どこにも行っちゃ嫌だよ…。将臣君…」
「行くかよ」
 更に将臣が抱いてくれる腕の力が強くなった。望美はそこから絶対に離れないとばかりに、将臣の首にがっしりと腕を絡める。
 海からの夜風がふたりの火照った躰を鎮め、緩やかなリズムへと整えてくれる。
 望美は将臣の胸の中で大きな息を吐くと、夢の世界に誘われた-----

 嫌な夢を見るときは、いつも暗闇の中にいる。
「じゃあな。望美。おまえはひとりでもやっていけるはずだ。源氏の神子だからな」
「そんなことないよっ! 将臣君! あなたがいないとっ!! 待ってよ!!」
 手を何度も伸ばす。
 だが、将臣はこの手に捕まらない。それどころか、望美に哀しい顔をしてどこかに行ってしまう。
 何度叫ぼうとしても、こういう時に限って声が出ない。
 お約束の展開。
 望美はそれが夢だと解っているのに、どうしても将臣がいなくなる恐怖から明るい世界に出ることが出来ない。
 もがいてももがいても、将臣に追い付くことが出来なかった。
 声が出ない。
 そのうち怨霊に囲まれ、それをやり過ごすために、剣を手に取る。
 剣の力を借り、それらをやり過ごした後、肩で息をして遠くを見る。すると、将臣の後ろ姿は遙か向こうにあった。
「-----将臣…君っ!!!」
 名前を呼んでも、将臣

 自分の悲痛な声で望美は目が覚めた。
 まだ呼吸が乱れている。
 ゆっくりと目を開けると、直ぐ近くに将臣の顔がある。望美を心配そうに覗き込みながら、抱きしめてくれる。
「大丈夫か?」
「…ふ、将臣君…」
 将臣の顔を間近で見るだけで安心し、望美は安堵の涙で頬を濡らした。それを将臣が唇で拭ってくれる。
「平気か?」
「うん…。大丈夫だよ…? こうやって将臣君が傍にいてくれるから…」
 望美は、幼子が怖い夢を見たときに母親に縋るように、将臣に抱き付いた。
 将臣もまた背中を何度も叩いて、優しくあやしてくれる。呼吸をすると将臣の男らしい香りが鼻孔をくすぐる心地がよい。胸の奥が切なく騒ぐ香りだ。
「望美」
「何?」
「泣きたい時は心おきなく泣いて構わねぇんだぜ。ただし俺の前だけだぜ」
「うん、ありがと」
 望美は将臣の肩に顔を埋めて、甘えた。
「なあ、望美。嫌な夢を見た後に、良い夢が見られるゲームをしようぜ?」
「ゲーム?」
「ああ。好きなものを数えるんだよ」
 言葉の響きだけでも楽しそうだ。望美は将臣に子猫のようにじゃれついたまま、「始めよう」と明るく言うことが出来た。
「じゃあ、おまえから」
「ポテチ」
「バイク」
「チョコレート」
「おまえは食い物ばっかりだよなァ」
 将臣は苦笑しながら、望美の頬を撫でてきた。
「だって、好きなんだもん」
 唇をぷくっと尖らせると、将臣は更に笑う。大人びたその微笑みに、望美はドキリとした。
「…ズルい」
「何がだよ?」
「将臣君ばかり先に大人になっちゃって」
 こましゃくれた顔をすると、将臣は笑いながらキスをしてきた。その対応もやはり年上であるが故の余裕のあるものだ。今や3歳も年上になってしまった幼なじみが、望美には眩しかった。
「大人になったからな。残念なことに」
 将臣はフッと愁いのある笑みを浮かべると、望美を抱えるように更に抱きしめる。
「こっちでは食えないもんばっかだな」
 将臣は少し困ったような顔をしている。そんなつもりで言ったのではないのに。望美は直ぐにその困った顔を吹き飛ばしたくて、笑みを浮かべた。
「でもこっちの食べ物も凄く気に入ってるよ。甘くて美味しいフルーツ!」
 望美は自分の番でもないのに、大好きなものを言い、将臣に更に抱き付いた。
「ったく、おまえは食い物ばっか」
「将臣君の番だよ!?」
「一回抜かしたのはおまえだろ?」
 将臣は明るく良いながら、ずっと考え込んでいる。
 好きなものを言うのに考え込むことだろうかと、望美は将臣の顔を見ながらいぶかんだ。
「ああ。俺だな。俺の好きなもの------おまえ」
「え…?」
 イキナリの爆弾発言に、望美の心臓は今度は別の意味で速くなる。
「あ、あの、あ・・・」
 何も言えないでいると、将臣は更に抱きしめてくる。挑発するように背中を撫でられて、望美は息を乱した。
「今度はおまえの番」
「あ、あの…。私が好きなものは……将臣君…!!!!」
 望美は真っ赤になって茹でたこのような顔になりながら、望美は思いきって言った。その気持ちを表すように、しっかりと抱き付く。
 剥き出しの胸が将臣の胸を思い切り押している。
「だったら、お互いに好きなものを頂かねぇとな」
「え、きゃあっ!」
 望美は将臣に組み敷かれ、首筋に唇を受ける。
 密着した躰の地位真に、既に熱く硬くなった将臣のものが当たった。
「おまえ可愛いから、おまえが抱きたくなっちまった」
「だ、だって、さっきもいっぱいしてばっかりだし…」
 望美が明らかに狼狽えているというのに、将臣はおかまいなしとばかりに愛撫を始める。
「俺はおまえ相手だと際限なくしたくなるんだよ…」
「えっ…、ああっ!」
 将臣の剣を持っていた大きな手で持ち上げるように乳房を揉み込まれると、望美の意識は別の所に動き始める。
「はあ、ああっ…」
 自分の声とは思えないような甘い響きを耳にしながら、望美は肌にじんわりとした汗を滲ませた。
 将臣に触れられるだけで、お姫様になった気分になる。
 本当に、世界で一番素敵な女の子になれる。
「ああっ…!」
 搾るように胸を揉まれた後、将臣は尖った望美のさくらんぼを親指でこねくり回した。敏感なそこは直ぐに硬くなり、将臣の唇を誘うように色味を濃くする。
 音を立てて尖った蕾を吸い上げてくる。
 腰に痺れるような快楽に襲われながら、望美は頭を反らせながら溺れ始める。
 寝る前に何度も将臣に燃え上がらされた躰は敏感で、直ぐに高みへと押し上げられていく。
「おまえの躰エロいな…」
「んんっ! そうしたのは、将臣君でしょ…っ!!」
 望美は喘ぎながらも、将臣への反論は忘れてはいない。だが、甘い声なので余り説得力はなかった。
「…好き、好き…っ!!」
「俺も愛してるぜ、望美…」
 将臣の唇は、望美の白くまろやかな肌に深い愛の証を刻みつけていく。先ほど付けられた痕が更に鮮やかな色に染められていく。
「はあ、ああっ!」
 将臣の指先は誘われるように望美の濡れた果実に向かう。亀裂を指でなぞり、既に何度も愛された肉芽を、指で軽く触れる。
「あ、あ、ああっ…!」
 先ほどまで激しく愛された場所だったから、将臣のイタズラな指先で軽く触れられるだけで、気持ち良くなった。
 どうしようもないぐらいに濡れて、もうそこが将臣の暑くて硬いものを求めて震えているのが解る。
「「舐めて欲しい?」
 意地悪に将臣が囁いてくる。
 どこを舐めて欲しいかなんて、そんなこと解りきっているくせに、こうやって訊くのはきっと意地悪だから。
 熱い吐息だけがそこに触れて、じれったい熱が望美を支配する。
「ん…お願い…」
 心の奥底から絞り出すような声を出すと、将臣は勝ち誇った眼差しで望美を見た。
「オッケ」
 将臣の舌が、肉芽を包み込むように触れてくる。
 それだけでも、望美は単純に達しそうになった。
 将臣の舌の動きは絶妙。望美の総てを知り尽くしているように動いてくる。
「はあ、あ、はあっ!」
 唇で舌で性器を愛されるというのは、本当に深く愛されているのを確信させられる。望美は腰を浮かせながら、将臣の愛撫を更に強く求めた。
「ああっ! 大好き、大好き!」
 望美は何度も繰り返す。
 一番大好きなもの-----それは将臣。だからこそ将臣とのセックスも大好きなのだ。
 将臣の指戯が巧みに胎内の中に入り込み、更にジュンとした熱い液体が流れ出す。
 望美は躰を大きく撓らせ、将臣の舌を胎内に受け止めると、瞬く間に達してしまった。
「達しやすくなってるみてえだな。さっき散々愛してやったから、当然か」
 将臣は幸せそうな笑みを浮かべながら、望美の脚の間に躰を入れる。
 期待が高まり、望美は淫らに腰を揺らした。
「俺が欲しいか?」
「将臣君が欲しいわ…」
「オッケ」
 将臣が望美の熱い源泉へと入っていく。
「ああ、ああっ…!!」
 望美の内部は吸盤のように将臣に絡みつく締め付けてくる。
 熱いそこに挿れられるだけで、腰が淫らに動いた。
 望美は離したくなくて、将臣を更に胎内の奥で絡めていく。
「はあ…」
 完全に望美の胎内に入り込むと、将臣は頭を反らせて深い息を吐いた。
 もう理性の欠片も、望美をからかう余裕も残ってはいないのだろう。
 将臣は腰をどっかりとすえると、望美の内部をピストンのように激しくすりあげ始めた。
「ああっ! あああんっ!」
 望美は余りに子持ちが良すぎて、将臣の腰の脚をしっかりと絡めて奥深いところに導いていく。
 敏感な最奥を何度も突かれて、もう頭がぐにゃぐにゃになってくる。それぐらい望美は感じていた。
「あ、あああっ…あっ!」
 意地悪にも将臣は腰を一旦引き、自分の熱い刻印をギリギリまでまで抜く。
 望美は喪失感に涙しながら、将臣を求めて腰の間の距離を詰めようとする。
「…望美…っ!!」
 将臣が一気に雄剣を胎内に入れる。
「あ、あああああっ!!」
 最高に感じる。
 もう何も考えられず、望美は躰を弛緩させていく。
 系煉瓦は伊万里、もう自分では何が何だか解らなくなっていた。
「望美、望美…っ!!!」
 将臣の躰も震え始める。
 意識が遠くなる中、望美は胎内に熱い欲情を将臣が放出したのを感じた-----


「…もうこれで怖い夢は見ねぇだろう…」
「…うん…」
 将臣の腕の中で微睡みながら、望美は頷く。
 将臣の愛をたっぷり感じたのだから、きっと今夜はもう怖い夢を見ないだろう。
 そして、時間が経てば、怖い夢を見ていたこと自体を忘れてしまうのに違いない。
 望美は将臣にしっかりとしがみつくと、眠りに落ちた。
 ふたりで手を繋いだ、楽園の夢を見るために-----
コメント

ED後の甘めのお話。




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