碧い空と同じぐらいに澄み渡った蒼を持つ海が美しい、のんびりとした島にやってきて、二度目の夏になる。 島でののんびりした暮らしにも慣れて、料理の腕も格段と上がった。 サバイバルなところはあるけれど、それを楽しんでしまえるぐらいに平和なところが、望美は気に入っている。 毎日、本当に賑やかで楽しくて忙しい日々を過ごしていた。 それは生まれた時空の文明的な生活よりも気に入ってしまっていた。 望美は、女性や子供を守ったり、男たちが安心して食事が出来るように頑張っている。 将臣とふたりで暮らす“小屋”にも、言仁や六代がしょっちゅう遊びに来ていてかなり賑やかだ。 本当にふたりともわが子のように思っている。 両親が既に無いふたりを、将臣とふたりで育てている。 本当に仲の良い兄弟のようだった。 今日は海草で作った簡単なおやつを、三人で食べていた。 「ねぇ、望美殿、そろそろ私たちの弟分が出てきても良いのではないかと思うのだが」 言仁の言葉に、望美はにっこりと微笑みながら頷いた。 「そうだね、もう少ししたら、君達の弟分はいっぱい出てくると思うよ。沢山若い夫婦がいるからね」 「…望美殿と将臣殿には、私たちの弟分は出来ぬのか…?」 六代の素朴な疑問に、望美は真っ赤になった。 夫婦として生活をしているし、赤ちゃんがいつ出来てもおかしくはない。 だが面と向かって言われてしまうと、かなり恥ずかしかった。 「…そ、そのうち…、そんなことが起こるかな…?」 望美はつい真っ赤になる。 確かにそろそろ赤ちゃんが出来ても大丈夫だと思う。 島の暮らしも安定してきた。 「私たちは早く、ふたりの子供が私たちの弟分になってくれると思っているぞ」 「う、うん。有り難う」 望美はそろそろ赤ちゃんが出来ても良いと思うようになっている。 もしそうなったら、これ以上に嬉しいことはないだろうと思っていた。 「そういえば、そろそろ将臣殿の誕生日だ。やはりここは盛大に祝いたい」 「私もそう思います」 六代は優しい気弱そうな声で言ったが、本当に将臣のお祝いをしたいようだった。 ふたりの姿を見ていると本当に嬉しくて、望美はついほんわかとした笑顔になる。 将臣は、小さなふたりに心から尊敬されているのだろう。 「じゃあ、色々とお祝いについて考えないと駄目だね…。将臣くんを精一杯素敵にお祝いをしてあげたいもんね」 「はいっ!」 ふたりとも将臣が大好きだからか、張り切っているのが解り、望美は嬉しかった。 今夜も将臣と望美と一緒に夕御飯を食べて、散々遊んだ後、言仁も六代もそろって眠ってしまった。 いつもこのパターンで、隣のふたりの本来の家に、将臣と望美はおぶっていくのだ。 「本当にふたりとも良い寝顔だね。子供らしいというか」 「…そうだな…。この島に来て本来の子供らしさを取り戻したんだろうな。早く大人にならねぇといけない環境にいたからな…。ふたりとも…」 「そうだね…」 子供時代に子供らしくいるということがとても大切であることを、ふたりを見ていると解る。 それが子供たちにとっても一番良いことなのだから。 「この島のお陰だな…」 「そうだね…。本当にそう思うよ…」 望美は満天の星空を見上げながら、しみじみそう思った。 「本当に可愛いね、ふたりとも」 「そうだな」 将臣は本当に優しい表情で笑っている。 「将臣くんは良いお父さんになるね」 「そうか?」 「そうだよ」 望美は笑顔で請け合う。 「だったらお前も良い母親になるかもな。あいつらを見ているまなざしが優しいからな」 「そ、そうかな。何だか嬉しいよ」 望美は照れ臭く思いながらも、将臣にそう言って貰えることが、本当に嬉しかった。 「本当に嬉しいよ。有り難う」 くすぐったい気分で、ふたりの家の扉を叩いた。 すると直ぐにかつて女房だった者が出て来る。 「まあ、将臣殿、望美殿! どうも有り難うございます。わざわざ」 「もう寝ているから、そのまま寝かせてやりてぇんだが」 将臣はぐっすりと腕の中で眠る六代と言仁を見つめながら言う。 「はい。もう寝具の用意は出来ておりますから」 「有り難う」 望美と将臣は、用意されていた寝具の上に、愛らしい寝顔のふたりを寝かせる。 「おやすみ、言仁くん、六代くん…」 望美は幸せな気分になりながら呟くと、そっと部屋から出た。 家を出た後、将臣と望美はしっかりと手を繋ぎながら自宅に戻る。 「お月様もお星様も綺麗だね。毎日、素晴らしい空を見ることが出来て、嬉しいよ」 「そうだな。おれたちの生まれた時空じゃ、ついぞ見られない星の数だからな」 将臣はしみじみと言うと、夜空を見上げた。 「…望美、お前もそろそろ母親になる準備が出来たのかもな」 「将臣くんだって、何時でも父親になれるよ。本当に…。相当子煩悩なお父さんになるかもね」 望美の言葉に、将臣はフッと微笑む。 「おれたちはそろって親になる準備が出来たということだな」 「そうだね」 何だか恥ずかしいのに幸せな気分だ。 望美は将臣に寄り添うように甘えた。 肌を重ねて愛し合った後、ふたりはしっかりと抱き合う。 真夏で暑いのに、こうして抱き合わずにはいられない。 もっとも、望美たちがいた時空よりも、夜はずっとずっと涼しくて快適だ。 自分達がいた時代は、やはり温暖化しているのだと、思わずにはいられなかった。 ふたりは抱き合いながら、気怠い満足に漂う。 「…なあ、望美…、お前…さ…、マジで腹に子どもがいるんじゃねぇか…?」 将臣に腹部を撫でられて、望美はびっくりしてしまう。 「…え…?」 そんな感覚は全くなかったため、望美は驚いて将臣を見た。 「…え、うん、悪阻みたいな症状はないから、解らないよ。ただ食欲はあるかなあ…。あっ! ひょっとして太ってきたから!?」 望美は思わずウェストを調べた。 確かにウェストは確実にふくよかになっているような気がする。 望美は思わず唸った。 「本当に単純に太ってしまっただけかもしれないよ…」 望美はしょんぼりとしてしまい、思わず俯いてしまった。 「そんなに太ってねぇから大丈夫だ。…それよりも…そっか…」 将臣は自分で納得するように頷くと、望美を抱き寄せてくれた。 いよいよ将臣の誕生日だというのに、朝から気分が悪かった。 吐き気がするし、躰が怠い。なのに食べられるから不思議だ。 だから将臣の誕生日のお祝いの準備をしようとして、止められてしまった。 「今日は一日大人しくしておけ」 「だけど折角の将臣くんの誕生日なのに。大丈夫だよ。吐くのに、元気だから。食べられるし…。折角、プレゼント代わりにお祝いでもしようかと思ったのに…。だってお腹だって、ぽっこりとしているから、痩せることもないと思うし」 望美が拗ねるように言うと、将臣に抱き寄せられた。 「…お前…、生理が来てねぇだろう…」 将臣に指摘をされて望美はハッと息を飲む。 確かにそうだ。 望美が驚いて将臣を見ると、フッと微笑んでお腹を撫でられた。 「…最高のバースデープレゼントになった」 「将臣くん…」 「お腹に赤ん坊がいるだろうな。嬉しい」 将臣に言われて、望美は泣きたくなるぐらいに嬉しくなった。 「私も嬉しいよ…」 大好きなひとが産まれた日。 望美自身が最高のプレゼントを貰った。 ふたりにとっては忘れられないバースデーになった。 |