いよいよ今年も終わってしまう。 新しい年がやってくる。 今年がさよならをして、来年がこんにちはとやってくる時には、やはり、大好きな男性と一緒にいたい。 ふたりで新しい年を迎える瞬間を過ごせたら、それだけで幸せ。 今年もいよいよ大晦日。 今まではファミリークリスマスだったが、今年は将臣が一人暮らしを始めたから、ふたりきりのクリスマスだ。 ふたりでわいわい大掃除をして、年越しそばは、評判のそば屋さんで、出汁と天ぷら、葱を刻んだものがセットになっているものを買ってきた。 おせちを作る技量なんて望美にはないから、気に入ったものを幾つか買ってストックをしておいた。 お正月はずっと将臣のところで入り浸るつもりでいるから、ストックの食材も買っておいた。 これで万事大丈夫。 まったりのんびりとお正月を過ごすことが出来る。 「今年はやっぱりおこたでのんびりと新年を迎えるのが一番だね」 「そうだな。それが一番ゆっくりと出来て良いよな。望美、お前、俺に似て来たな」 将臣は嬉しそうに笑いながら、炬燵の中の望美の足をつつく。 「カウントダウンもロマンティックで良いけれど、私はやっぱり将臣くんと一緒に過ごしたいよ。将臣くんがいるだけで、やっぱり幸せだもん」 望美が小さな子どものように満悦の笑みを浮かべると、将臣は少し照れくさそうな笑みを浮かべた。 「俺だってお前と一緒だから、寝正月も楽しいんだけどな」 「将臣くんはいつも“寝正月”じゃない」 「これでもダイビングに誘われたりしてた! だけどやっぱり、お前とこうして炬燵の中でぬくぬくするのが良いと思ってな」 将臣は幸せそうに笑うと、望美の頬をつついてきた。 「何だか私たち、熟年夫婦みたいだよね。こうやってふたりでおこたに入っての年越しなのに」 望美はくすくす笑いながら、将臣に仕返しとばかりに、足を絡ませてきた。 「ったく…。こうしてやる」 将臣は、器用に指先を使って、望美の足の裏をくすぐってきた。 「もう止めてよー」 ふたりで笑いながらふざけあう日が再びやって来るなんて、源平の時空にいた時には考えられないことだった。 今はこうしてふざけあうことが出来るだけでも、幸せでしょうがなかった。 炬燵の中のふざけ合いがいつしか甘い空気をもたらして、ふたりは抱き合ってキスをする。 「熟年夫婦はこんなことはしねぇよ」 「そうだね」 お互いにくすりと笑った後、ふたりはもう一度見つめ合って触れるだけのキスをした。 「…今年のキス納めかな?」 「まだまだするだろ? 夕飯だってまだなんだから」 「それもそうだね」 望美がくすりと笑うと、将臣も微笑む。 炬燵の中でお互いに抱き合って過ごすなんて、なんて贅沢なのだろうかと、望美は思った。 年越しそばもあるので、今夜はテレビを見ながら軽い鍋にする。 「ふたりでこうやってお鍋をつつくのも良いものだよね」 「だな。正月が近いって気分になるからな」 「そうだね」 望美と将臣は、テレビのチャンネルを変えながら、のんびりとした年末を過ごす。 「やっぱ大晦日は格闘技だろ」 「そうだねー。だけど、歌番組も見たいって思うんだよね。後はお笑い系も」 「そうだよな。大晦日って、余りおもしれぇ番組はねぇんだけれど、何となく見たくなるんだよな」 「そうだよね」 ふたりでこうしてのんびりゆったり過ごす年末に送るのが、ずっと夢だった。 ふたりでこうして過ごせるのが嬉しくてしょうがない。 「本当にこうしていると幸せだよ。ずっと毎年、こういう年末を過ごしたいよ」 「そうだな。俺たちは生まれてからずっと一緒に年末や正月、それ以外の行事を過ごしてきたから、これからも…死ぬまで…、ずっと一緒にいるのが良いのかもしれねぇな…。そのほうがしっくりくるし、神様とやらも喜ぶだろう」 将臣はそう言うと、望美の手をギュッと握り締めてくれる。その強さが、望美を幸せにしてくれる。 「そうだね。きっとそうだよ…」 望美は幸せな気分で頷くと、将臣の手を握り返す。 「それは将来の約束はOKということで、構わないか?」 将臣が目元をほんのりと赤く初めて、望美に微笑みかけてきた。 こんなにもさり気ないロマンティックは他にないのではないかと思う。 「…勿論だよ…。だって、私には将臣くん以外に考えられないもん。きっと生まれ変わっても同じだよ。私はずっとずっといつの私であっても、将臣くんのそばにいたいと思うよ」 「有り難うな」 将臣は優しく甘い声で言うと、望美の指に自分の指を絡めさせた。 しっかりとお互いに指を絡ませあって、互いの絆を確認する。 「これからもずっとこうやって過ごそうね」 「そうだな。プロポーズの予行演習は上手くいったな」 「将臣くん…」 嬉しくて堪らない大晦日の告白に、望美は今までで一番清らかで明るい笑みを浮かべた。 夕食の後、ふたりは寄り添いながら、ひたすらテレビを見る。 お互いの好みがとても似ているから、一緒にいてもしっくりとくる。 「昔さ、こうやってふたりで寄り添って同じゲームをしたよな」 「そうだね。一枚の毛布を分けあってゲームに必死になったっけ。あの時もとても楽しかったんだよ」 「そうだったな」 「さてと、年越しそばを作ろうか。食べたらお参りだよ」 望美が立ち上がってキッチンに立つと、将臣も一緒にキッチンに入っていく。 「おにぎりも食べようぜ。おかかと梅干しで良いだろう?」 「うん。バッチリだよ。お参りに行くし、しっかりと食べておかないとね」 「そうだな」 望美がコンロの前に立って年越しそばを作り、将臣がおにぎりを作る。 望美は具材を鍋に入れて火を通すだけだから、簡単といえば簡単なのだが。 料理が余り得意ではないからしょうがないのだが。 年越しそばを食べて、おにぎりを頬張って、初詣でに備える。 食事を終えた後、ふたりはたかたずけをする。 テレビを見ると、“行く年来る年”が始まっていた。 「いよいよ新年だね。将臣くん、今年もどうも有り難う。来年もいっぱいいっぱい宜しくね」 「こちらこそな。これからもずっと宜しくな」 「うん」 不意に、望美は将臣に引き寄せられる。 「…あっ…」 「今年のキス納めだ…」 将臣はギリギリまで顔を近付けて甘く囁くと、そのまま望美にキスをしてくれる。 今年の最後を飾るのにはふさわしい、甘いキスだった。 いつものような濃密さは何処にもないけれど、幸せでしょうがないキスの味だ。 カウントダウンがテレビで始まる。 将臣はちらりとテレビを見た後、一瞬だけ唇を離した。 新年に突入した瞬間に、唇を奪われる。 今度は新年にふさわしい艶やかで華やかなキスだ。 キスの余韻でぼんやりとしながらー唇が放される。 ロマンティックな甘さに、望美は酔っ払いそうになった。 「あけましておめでとう。今年もこれからもずっと宜しくな」 「あけましておめでとう。私こそ、これからもずっと宜しくね」 「ああ…」 ふたりはお互いにくすくすとくすぐったい笑みを浮かべながら、何度か触れるだけのチョコレートよりも甘いキスを繰り返した。 キスの後、ふたりはようやく、初詣へと向かう。 手を繋いで、お互いの愛情を確認した。 「願い事は決めたのかよ?」 「決めたけれどヒミツ。将臣くんは?」 「ヒミツ」 お互いにふざけるよ余裕を感じながら、願い事をする。 願い事は同じ、たたひとつ。 ずっと一緒にいたい。 きっと叶うと信じて、ふたりは微笑んだ。 |