意地悪な恋


 ただ救いたい。
 生きて欲しい…。
 愛故の我が儘で、知盛をこの時代に連れてきた。
 この時代は面白いと知盛は言うが、時折、淋しげな顔をするのが気にかかる。
 まるで子供みたいに、いつも我が儘を言っては離してはくれないのに、気まぐれに突き放してきたりもする。
 知盛がこの世界で、快適に生きていけるように、心を配っているけれども、それが時々重くなることもある。
 望美は、アパートの窓から月を眺める知盛を横目で見ながら、その気まぐれな想いを探ってみる。
「……どうした……?」
 憎らしいのに憎めないぐらいに素敵な笑みが、冬の月光に照らされる。
 この世界に来て初めて覚えた煙草を燻らせながら、知盛は不敵な雰囲気を漂わせている。
 余りにステキ過ぎて、降参するのにはしゃくに触るから、望美はわざとプイッと顔を背けた。
「……何にもない」
「クッ……! 睦みたい…のか?」
「バ、バカっ!! そんなことを言わないでよっ!」
 クールで不遜な顔で、いけしゃあしゃあと言ってのける知盛に、望美は唇を尖らせた。
「…えっち…」
「……明日は…休みだろう……望美……。獣のようなお前を……愉しませてくれる……だろ……?」
 知盛はあくまで余裕を滲ませながら、望美の表情を窺っている。
 だが望美にはその深意は窺いしれない。
「……望美…」
「…と、知盛……っ!」
 狂気を滲ませた、凶器のように切れ味がある指先が、シャツの間から入り込んでくる。
 触れられるだけで、ピリピリと痛い。
「……感覚が……鋭い……」
「と、知盛……」
 名前以外のことを、言葉には出来ない。望美は唇を震わせながら、躰を知盛に預けた。
「……素直だな……。神子殿は……」
「……もう神子じゃないよ…」
 ブラジャーのホックを簡単に外してしまうと、開放された望美の乳房を、知盛は弄ぶ。
「あっ……!」
「…月も喜んで……いるだろうな……。お前の……乱れた姿を見られる……のだから……」
 知盛は月に望美の白い肌を曝すように、衣服を取り去ると、背中に唇を拷問のように這わせ始めた。
「……恥ずかしい……っ!」
「……そんなはずは……ないはずだ……。お前は…俺に充分……調教されて……いるはずだろ……」
 乳房をこれみよがしに揉み上げながら、知盛は冷たい唇を肌に落とす。
 体温との差がある唇が、いかにも知盛らしかった。
 強く我が物顔で、白い肌を朱い花で刻んでくる。肌に舞い散った花びらは、知盛色に染め上げられていった。
「……言えよ……」
「な、何を……」
「俺を好きだって…こと……」
「やっ…あんっ……」
 知盛の手がスカートの下に入ってくる。
 ミニスカートにブーツでこの部屋に来てしまったことを後悔しながら、望美は期待と官能の衝撃に肌を震わせた。
 脚を閉じて、羞恥な乙女心を表すが、そんなことをしても知盛は面白がるだけだ。望美の反応を、心底喜んでいるように思えた。
 下着に手を入れられ、意地悪にも表面の襞だけに触れてくる。
「ん……っ!」
 もどかしい程に危険な指先の動きに、望美はすっかり翻弄される。こうなると、知盛のなすがままだ。
「下着が台なしだな……。まあ……そんなものは……必要ない……。お前は……裸が一番……綺麗なんだからな……」
 知盛は薄く笑いながら、下着を取り払うと、望美の脚を大きく開かせていく。
 スカートだけが心許なく、すんなりとした腰にからみついているだけの、いやらしい格好。
 まるで雌の野獣みたいだ。
「…やだ、恥ずかしいから……っ!」
 望美は本当に恥ずかしくて、いやいやと首を横に振るが、そんなことをしても、知盛は喜ぶだけだ。
「……よがれ……もっと……」
「いやっ!」
 キッパリとはねつけても、知盛は益々面白がるだけだ。それが、望美には悔しくてしょうがなかった。
「……クッ、強情な女は……嫌じゃないぜ……。俺はな…」
「うっ…!」
 知盛の指先が、望美の胎内に差し入れられる。なぶるように胎内を撫でられて、息が激しく上がる。それでもよがるのは悔しくて、望美は唇を噛んで耐え忍んだ。
 じわじわと来る官能の波が、望美を狂わせいく。このままだと、知盛の思い通りになる。
 それが嫌で、望美は声を押し殺した。
「クッ…そんなによがるのが……嫌か……。愉しませて…くれるんだろ……」
 知盛はあくまで意地悪だ。
 望美の無防備で少し硬い躰を膝の上に乗せると、外に見せるように大きく脚を広げさせてくる。
「やっ…!」
「月に見せて……やるんだよ……。お前の……いやらしい…ものをな…」
「やっ……!」
 知盛の思い通りになんてなりたくない。なのに反応してしまう、開かれた躰が悔しい。
 知盛の指は、胎内の壁をくすぐりながら、同時に敏感な肉芽に触れてくる。
 頭が痛いぐらいに感じてしまい、酸素不足になった。
「…と、知盛……」
 とうとうよがるような声が、唇から漏れてしまう。望美は降参するように唇を震わせた。
「…望美……愉しませてくれる…じゃないか……」
 知盛は深く静かな声で呟くと、望美から蜜だらけの指を抜いた。
 妖しく光る指先を、知盛は望美の口元に持ってくる。
「……舐めろよ……」
「…いや…」
 知盛の欲求は受け入れたくなくて、望美はわざと顔を背けた。
「…じゃあ…入れてやらない……」
 知盛は冷たく笑うと、自分の荒々しい一物を、望美に見せ付ける。
 太くて鋭い剣が、望美を誘っている。見ているだけで、生唾を飲み込みたくなる。
「……欲しかったら、…て舐めろよ」
 知盛は、望美の蜜を自分に塗り付けると、開かれた脚から流れる愛の雫を、また指先で掬いとる。
「……溢れ……過ぎているぜ……神子殿……」
 クッと喉を鳴らして笑うと、知盛は望美の唇に指先を押し当てた。それを望美は口に吸い込むと、ぎこちない動きで吸い上げていく。
「ん……、ん……」
「…欲しいものの為なら……何でもする……。俺の……女らしいな……。良い……顔だ……」
 知盛は指先を望美に吸い上げさせながら、尖った乳首をあいた指で弄んでくる。
 じんわりとした快感に、望美は更に蜜を滴らせた。
「……そうだ……。そうやって……床にしみを作れ……。そんな……お前が……俺は……可愛いぜ……」
 知盛は望美の口から指を抜き取ると、ご褒美に甘いくちづけをくれる。
 甘さから嵐のような激しさを奏でる知盛のキスは、それだけで望美を感じさせてしまう。
 舌を絡め合わせ、いやらしい音を立てながら、自分たちの唾液を交換しあう。唇の端を噛まれただけで、ピリリとした官能的な快感が生まれた。
 こんなに深いキスをされたら、意識ですらとろとろになる。
 ぼんやりとしていると、知盛は欲望を望美の前に突き出した。
「しゃぶれ…」
 望美はコクリと頷くと、知盛に唇を寄せる。
 屈服するぐらいに感じさせたくて、亀頭を舌先で丹念に舐めた。
 知盛の吐息が上がる。
 もっともっと愉しませてみたくて、望美は深く飲み込んだり、吸い上げたりした。
 いつも追い詰める側の知盛を、追い詰めるのはとても愉しい。
「……なかなか…愉しませてくれるじゃないか……」
 知盛が長い髪を撫でてくれるだけでも、背筋がぞくぞくする。
 もっと喜んで欲しかった。
「……爆発……しそうだ……。もう……いい…」
 知盛の言葉に、望美はするりと野獣を出した。
 知盛の表情がけむっている。エクスタシィな顔を見るだけで、望美は感じる。
「……ご褒美だ……。お前も……口でして欲しい……だろ……」
知盛は望美の蜜口に顔を埋めると、たっぷりと愛の味がする液を啜り始めた。
「…んっ、あっ……!」
 いつもは高飛車な知盛を平伏させるのは、愉しい。
 心も躰も、快楽の淵に追い込まれていく。
 このままとことんまで墜ちていきたい。
 望美は知盛の柔らかな髪に指を差し入れ、くしゃくしゃにしてしまう。
 女の中心を吸い上げられ、なぶられて。蜜が溢れかえる。
「…あっ…んんっ……っ!」
 涙が出るぐらいに感じる。肌を震わせながら、知盛を強く求める。
 欲しい。
 熱い知盛の塊が。
 それを現す為に、望美は腰をゆらゆらと揺らす。
 知盛は、思ったようによがって縋る望美から顔を上げると、口の周りについた蜜を拭った。
 その仕種がまたひどく魅力的だ。
「…俺が…欲しい…か?」
「欲しいわ」
「ストレート…でも言うのか…、悪く…ない…。よつんばいになれ…」
「だ、ダメだよ!」
 恥ずかしすぎる欲求に、望美は知盛から逃れようとしたが、その腕に直ぐに捕まえられる。
「…お前は…もう…俺から…逃げられない…」
 知盛は望美の腰ごとしっかりと抱きしめると、四つんばいの姿にさせる。
「…いやだ…動物みたい」
「俺たちは…野獣だろう…。望美…」
 知盛は、望美の肩口に歯を当てながら、望美の腰を持ち上げると、濡れた蜜口に自分自身を押し当てる。
「ああ…」
 望んでいた知盛欲望の楔が押し当てられ、望美は息を乱した。
 幸せな気持ちが流れ込む。
 知盛の熱いものが躰に流れ込み、望美は握り拳を作った。
「…お前の胎内は…温かい…な」
「と、知盛……」
 知盛に胎内を強く圧迫される。奥深い場所に抉るように突き刺さる快感に、全身が震えた。
 こんな獣のように交わるなんて、恥ずかしくて堪らない。
 だが恥ずかしさよりも、知盛に満たして貰いたい重いが大きくて、望美はか細い腰を振る。
 もっと深い場所に、知盛を感じたかった。
「----歩け…」
「…えっ!?」
「歩けと…言った…はずだ…」
 有無言わせぬ知盛の言葉に、望美は戸惑う。
 一歩も歩けないでいると、知盛がするりと胎内から抜けようとする。その意地悪な行動に望美は、手を前に進めた。
 知盛はフッと吐息で笑みを浮かべると、再び望美の胎内に入ってくる。
「あ、んんっ……!!」
「…歩け…」
「あ、んんっ!」
 歩くと、望美の深い壁に知盛が突き刺さる。
 深い部分の壁に当たり、このまま力尽きても良いと思うぐらいに、気持ちが良かった。
 頭の芯がじんじんするぐらいに感じて、手でうまく自分を支えることが出来ない。
「…んんっ! あっ! と…知盛…っ!!」
 何も考えられないぐらいに乱れたい。
 望美は息を上げながら、躰を弛緩し始めた。
 知盛が更に強く突き上げてくる。
 望美はそのまま高みまで登り詰めると、ゆっくりと意識を手放した----

 またとことんまで貪られてしまった。
 知盛の気まぐれな腕の中で、望美は拗ねるように視線を伏せる。
「…気持ち……良かっただろ?」
「…もう知らない…っ!」
 拗ねるように言っても、この先のことは決まっている。
 また宴は続くのだから------



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