頼久があかねの育った時空にやってきて、気に入ったものがいくつもある。 身分など気にしなくてもいい気質。すぐに食べられる暖かなもの。あかね特性の『はんばーぐ』『すぱげってぃ』。煙草。『うぃすきー』。便利な交通手段。拓かれた市…。 上げればきりがないが、その中でも頼久がもっとも気に入っているものは、『恋人』という関係であれば、甘い時間を過ごしてもいいという、自由な恋愛環境だった。 頼久の生まれた時空では、婚姻関係のない男女が朝までむつみ合い、朝食も何もかも気にせずに一緒にいられるということは、まずないと言ってもいい。それどころか、そんなことは不可能ですらある。 だが、あかねの育った時空は、男女の関係にお家も、おおらかだ。戒めなどといった言葉は全く似つかわしくない。 だからこうして、最愛の女性と婚前であっても、幸せな時間を過ごすことが出来るのだ。 こんなに幸せな深い時間をもてるとは、この時空に来た当初は思いもよらないことだった。 あかねと愛し合うためだけに時空へとやってきて、暮らし始めた。 不安がなかったわけではない。だが、龍神の加護のお陰か、この時空に来ても苦労しないようにと立派な経歴と仕事、住居や戸籍までもが用意されていたのだ。 住む場所はすでに買い取られたマンションだったし、仕事もずっと以前からやっていたかのようにすんなりと適応した。しかも会社には実業団としては有名な剣道部があり、頼久の愉しみもしっかりと残してくれている。 すべてお膳立てをされた上で、この世界にとけ込むことが出来たことを、頼久は心から感謝していた。 そして-----何よりも休日ごとに愛でることが出来る、深く慕うあかね。あどけなさと大人びた女の色香がせめぎ合う、艶やかに咲く一歩手前の美しさがたまらなく綺麗だ。 手元の時計を見ると、すでに朝の8時を回っている。 向こうにいた時にはこんな時間にこうして寝床でゆっくりしているなどということは、あり得ない。ましてや、愛する女性を傍らに置くことなんか、許されるはずもない。 だが、この時空では堂々としていていい。 こうして、一つのパジャマを上と下で分け合って眠ったり、裸のままで眠ったりしても、誰もとがめないのだ。 「…んんっ」 あかねはまぶしいのか瞳を閉じたままで、光を遮るように布団の奥深くに潜ってしまう。そのかわいらしい仕草に、頼久の瞳も優しく和らいだ。 「…全く…。あかねはお寝坊さんですね…」 昨夜も何度も愛してしまい、寝坊の片棒を自分が担いでいるのは解っているが、それでも起こさずにはいられない。 こうして目覚めたら、あかねも一緒に目を開けて自分を見つめてほしいのだ。 「あかね…あかね…起きてください」 「…んんっ…」 あかねは夢見心地で返事をするだけで、まだ夢の中にすがりついている。 頼久の筋肉がついた足に自分のすんありとした柔らかな足を絡めてくる。 このまますがりつきたいと、言っているかのようだ。 こうして二人で温かな光を感じながら、ひとときを過ごすのも悪くない。 華奢な躰をこうして抱きしめて、優しい時間を紡ぐのもいいが、せっかくの休みならば、もっと濃厚な時間の過ごし方もしてみたい。 何よりも、貴重な二人っきりの時間なのだから、このまま眠りの縁にいるのは勿体ない。 お互いにちゃんと目覚めて、語り合ったり、じゃれ合ったりしたい。そしてそれよりももっと濃厚な言黄金の時間を過ごしたいというのは、わがままなのだろうか。 「…あかね…」 何度目か解らない名前を心を込めて呼ぶ。 だがあかねは目を覚ますどころか、甘い肢体を頼久にこすりつけて眠りをむさぼっている。 「あかね…。こうなったら実力行使でしょうか…」 頼久はいたずらっぽいほほえみを向けると、腕の中のあかねをしっかりと抱きしめて、しっとりと唇を塞いでいく。 「…あふ…」 寝ぼけ眼だったあかねの瞼、つややかにぴくりと動き始めた。 最初は苦しげでぎこちないものだったが、徐々に甘さが帯びてくる。 うあがて深いキスになり、舌を絡め合っていく。 いつもよりもあかねの舌の動きがぎこちないのは、ご愛敬といったところだが。 ようやく唇を話してやると、すっかり目を覚ましたあかねが恥ずかしそうに俯いた。 「おはよう、あかね」 「お、おはよう…頼久さん…」 あかねが恥ずかしそうにするものだから、可愛いすぎて頼久は微笑む。 「せっかくのお休みですから、寝ているのは勿体ないとは思われませんか?」 「…でも、腰が痛くて…。休みたいんです…。だって、だって、頼久さんが昨日の夜とことんまでその…」 あかねはほっそりとした腰をなでながら、少し顔をしかめた。 その顔が本当に愛らしくて、頼久の欲望のスイッチをONにする。 「あかね…っ!」 「わ、、あ、頼久さん…ぅ!!」 ベッドに押し倒されると、頼久にしっかりと組み敷かれてしまう。 これではもうこの先、何が起こるか分かり切ったことだ。 「あ、あの、頼久さん…! 一緒に有意義な時間を過ごすなら、えっと、えっちとかも大事だけど、その…」 頼久に躰をまさぐられているのを気にしながら、あかねはしどろもどろやめさせるように努力をする。だが、そんなこよは、かなえにべた惚れの頼久には、火に油を注ぐようなものだ。 「…せっかく、はや、起きしたし…、たとえば花を見に行って、季節を…ああっ!」 「花なら目の前にあります。私にとっての花はあかねです…。あかねは私にどんなときにでも、春を運んでくれます…。春の香りを運んでくれます…。だから、すばらしい花はあなたを感じて十分です…」 「あ、ああっ!!」 腰が少しばかり痛んで、自由がきかないのに、そんなことはかまわずに、頼久はスイッチを入れる。 もうこうなれば、あかねには止めることなんて、出来やしない。 「あなたといっしょなら、いつでもどんな季節でも、春をかんじることが出来ます…」 「頼久さん…っ!」 どんな季節、どんな状況であっても、あかねがいれば、すばらしい春が迎えられる。 彼女自身が花の香りがする春の日だまりそのもののだから------ |
| コメント 同じベッドで足を絡ませながら季節を感じる。 恋人同士の基本でしょう。 top |