明日はいよいよ、神泉苑でアクラムと対峙しなければならない。 それが終われば、元の世界に戻れるのだろうか-----それともこの世界にいることになるのだろうか。 本当のところ、あかねはどちらでも良くなっていた。 今の願いはただ一つ-----頼久の傍にいたい。 ただそれだけになっている。 「そんなこと許されないよね…」 あかねは、澄んだ夜空にぽっかりと浮かぶ月を見上げながら、ひとりごちた。 「頼久さん…、どうしたらいいの?」 あかねは瞳に涙をいっぱい貯め手つきを眺める。涙で滲んだ月が、頼久との懐かしくも愛しい想い出に見えてきた。 「離ればなれになっちゃうの? 嫌だよ、そんなことは…」 縁側で小さくなって泣いていると、奥でかさりと物音がした。 はっとして目を擦りながら顔を上げると、そこには頼久がいた。 あかねが今最も思っていた男性が---- 「頼久さん…」 「申し訳ございません、神子殿。つい、眠れずに、今、あなた様がどうされているが、少し…」 言葉が誤魔化すように淀んでいるのを訊けば、ひょっとして頼久も自分と同じ気持ちなのではないかと考え、あかねは少し明るい気分になる。 「頼久さんも眠れないのですか? それなら私と同じですね」 頼久は寡黙のまま、ただ真っ直ぐにあかねを見つめている。その瞳は今までで一番愁いがあった。 「----すこしお話しをしませんか?」 「神子殿…」 綺麗に光る頼久の瞳を、あかねは心に焼き付けるように見つめる。今宵が、こうしてふたりで穏やかな時間を過ごせる、最後の時間かもしれないのだから。 「はい。失礼いたします」 頼久はいつもよりぎこちない声なのに、瞳は静かな笑みを湛えている。隣りに座ってくれると、とても胸を騒がせる香りがした。 胸が激しく高鳴る。 あかねは姿勢を正しながら、月を見上げる。 「今夜はとても綺麗な月ですね…。明日もこうやって綺麗な月を眺められるかしら」 『どこで』-----そんな言葉を飲み込んで、あかねは笑って見せた。 すると頼久は、月から視線を逸らし、何かを思い詰めているようだ。肩が震えた。 「頼久さん?」 その名前を呼ぶと、不意に頼久がきつく抱きしめてくる。 情熱的に、激しく。 こんな頼久をあかねは今まで見たことがなかった。今まで抱きしめられた時と比べても、かなり激しい。 「…神子殿、神子殿…、神子殿…!!!!」 思いの丈が迸るように、頼久は何度もあかねを呼ぶ。窒息しそうな愛の熱に、あかね自身もとろけてしまいそうになる。 頼久の熱を、今ここに感じている想いを、あかねは肌に刻み込む。 だが、こんなちっぽけで完全に刻みつけやしない。心にこの熱を留めるには、もっともっと熱が必要だ。 「----神子殿…、あなたはかぐやの姫だ…。明日にはあの美しい月の裏に還ってしまう…! 私は…神子殿…!」 最後の愛の言葉を押し殺すように、頼久は肋骨が軋むぐらいにあかねを更に強く抱いた。 魂に伝わる----頼久の愛が---- 「…好きよ、大好きよ、頼久さん…。ずっとあなたの傍にいたいって言ったら、それは我が儘になっちゃうかな? 本当は、あなたにいて欲しい…。だけど…」 あかねは明日の絶望的な未来を想い、言葉を濁す。 今日を掬えたら、それは素晴らしいこと----だがその先の未来に頼久がいなければ、あかねにとってはグレーな未来になる。この世界で頼久といた時間が総天然色の美しさならば、頼久のいない場所はモノクロームだ。 「…私もお慕い申し上げております、神子殿…!」 苦しい一言だった。 お互いに涙が滲んだ瞳を向け合う。 一瞬、光るものを見た後、ふたりはどちらからともなく、顔を近付け合う。 唇が重なった。 時空も時代もかけ離れたふたりが、出逢ってしまった。キスの熱で、ふたりの隔てる時代や時間が溶けてしまうような気がする。 お互いの唇を吸い合い、唾液を交換し合い、酸素を共有し、舌を絡め合う。 キスはふたりをもっともっと近付けてくれた。 キスの後、もっと熱い頼久の熱があかねは欲しくなる。頼久のことだ、こちらから言わなければ、きっとそれ以上の展開は望めない。 あかねは、この肌に頼久の総てを刻みつけ、永遠の恋を美しい場所に閉じこめてしまいたい。 あかねは喉を鳴らして気持ちを落ち着けさせると、頼久を真っ直ぐな瞳で見つめた。 「頼久さん」 「神子殿…」 「今宵は私の傍にいて下さい。朝まで…私に…あなたを刻みつけてください…」 真っ赤になりながらあかねは一生懸命言う。最後のほうは言葉が揺れて、恥ずかしさの余りにまともに頼久を見つめられなくなっていた。 「…神子殿…!!」 あからさまに頼久が驚いているのが解る。息を呑んで、あかねの手を握ってきた。 その手はしっかりと逞しく、同時に少し震えていた。 「…構わないのですか…?」 「…はい。夫婦でもないのに、こんなことを頼むなんて、私をふしだらな女だとお思いですか?」 あかねは小さく震えていた。 きっと呆れられただろう。 だが、頼久はあかねを抱き上げ、寝所へと運んでくれたのだ。 「…神子殿のお心のままに…」 躰がふわりと揺れ、本当の意味でお姫様になったような気分になる。 心臓が自分のものと思えないぐらいに激しく波打っている。 寝所に寝かされると、頼久が初めて無防備な姿になった。 剣を外して傍に置き、立派な武家の装いを総て捨てる。それをあかねはじっと見つめながら、心の奥底にふつふつと喜びが沸き上がるのを感じた。 「神子殿…私の神子殿…!」 あかねの装束を脱がし、白い下着姿にすると、頼久は躰をぎこちなく重ねてきた。 「神子殿…、誰よりもお慕い申し上げております…。だからこそ、あなたを壊してしまうかもしれない…」 逞しい頼久に力強く抱きしめられ、あかねも柔らかい力で抱き返す。 「壊してしまっていいよ…。頼久さんなら…」 「ああ、神子殿…!!」 頼久の唇があかねの首筋を掠める。冷たいのに情熱的な唇は、あかねに知らなかった世界の扉を叩かせる。 まるであかねの存在感を確かめるかのように、頼久はその華奢な躰のラインをなぞってきた。 肌が敏感になっているのか、それだけでもゾクリとした気持ちよさが背筋を伝っていく。 「あ…っ!」 白い下着の中に手を入れられ、胸の部分だけがはだける。 「美しい…」 頼久の息づかいで、心から想ってくれていることが解る。息が乱れて、本当に興奮しているようで嬉しかった。 「ああ、んんっ!」 頼久の手の動きは、最初は手探りのように優しかったが、徐々に激しくなってくる。加減を知らないのか、かなり強くなった。 「あ、んんっ!」 痛くなるぐらいに揉みしだかれて、張り詰めすぎたせいか、あかねは顔をしかめる。それを見て、頼久は驚いたように手を離した。 「痛いですか!? 神子殿!!」 「大丈夫だよ、頼久さん…」 笑いながら言うと安心したのか、頼久はホッと安堵し、あかねの乳房に口づけてきた。 自分を刻みつけるために、強く痕が付くまでに吸い上げていく。 今まで知らなかった下腹部の鈍い痛みと甘さが伴う痺れを感じ、あかねは腰を浮かせた。 それはごくナチュラルな仕草であることを、あかねは気付かない。 色味が完全に変わってしまうほどに、頼久に乳首を吸われ、あかねは、華奢な背中を綺麗に反り返す。 「ああ、あああっ!」 「神子殿…」 あかねは自分だけのものなのだと自己主張するように、頼久は全身をキスしてくる。 すんなりとした茜の脚も、足の指ですらも、綺麗な背中も全部----- 「ああ、ああっ!」 その度にとろけさせられて、あかねの背中は何度も夜具に打つける。 抱き留めるように頼久に護られて、あかねはこの瞬間が永遠に続けばと願わずにはいられなかった。 脚を撫でられると、自然と脚の力が抜け、頼久が、あかねの一番大切な場所を慈しむように触れてきた。 「あああっ!!」 その衝撃は、本当に言葉ではあらわせられない。一番恥ずかしい場所を、一番大好きな人に触られて、恥ずかしい以上に誇らしくもある。 「ああ…」 頼久はあかねの花芯に何度も指をこすりつけて。敏感な熱を煽ると、入り口を丁寧に指で溶かしていく。 「…頼久さん…、少し痛いんですけれど…」 「優しく致します、神子殿…。神子殿が良いと感じれば、私は本望です…」 「ああ、ああっ!」 意識が融ける中、頼久の指が優しい動きであかねの胎内を溶かして、解してくれる。 あんなに痛かったのに、暫くして馴れてしまうと、今度は今までで一番の快楽が待っていた。 頼久の指が丁寧に胎内を愛撫しながら、その唇は、あふれ出す蜜を吸い上げ始める。 「や、止めて…っ!」 「恥ずかしがらないで下さい、神子殿の…。あなたがこうして艶のあるお顔をされているだけで、私はとてつもなく幸福なのです」 「頼久さん…」 「月に還らないでください、神子殿…っ!」 「あ、ああっ!」 舌と指の愛撫だけで、あかねは簡単に達してしまい、夜具に沈み込むほど墜ちる感覚になる。 「-----あなたが生涯忘れられないように、私を刻みつけます。きっと私も、あなたを生涯忘れることが出来ないでしょう…」 頬にキスをくれた後、頼久は総てを脱ぎ捨てあかねの脚の間に入り込む。 いつもひとつに結ばれていた漆黒の長い髪も、今は解かれ、まるで波を打つように美しい。 「神子殿…っ!」 「あ、いやああっ!」 頼久の雄剣があかねの胎内に押し入ってきた。熱くて大きな高ぶりのお陰で、痛みが頭の芯を突き抜ける。 この痛みも、頼久のものになったという証-----それらすらも嬉しい。 頼久が腰を進める度に痛みは更に強くなったが、あかねは肩に捕まることで痛みをやり過ごす。 「すぐに、すぐに、神子殿も同じように気持ち良くなります…から…!」 「は、はい…っ!」 頼久は必死になって腰を動かし、あかねが痛くないように、優しく進んでくれる。 そしてとうとう、あかねの最奥に達したとき、呼吸が獣のように乱れていた。 「…神子…殿…っ!」 「頼久…さんっ…!」 お互いに流れる熱が、今、正にイコールになり、更に大きな情熱を生み出していく。頼久はあかねの腰をしっかりと支えると、自分を刻みつけるように、動き始めた。 「あ、ああっ!」 貪るように腰を揺らされて、茜は息も途切れ途切れにしながらたまらなく感じてしまう。 愛する人が相手だからだろうか。 もう決して逢えなくなるかもしれない人だからだろうか。 「あ、あああっ!」 あかねの躰が快楽に素直に反応を始める。 やがて頼久も力強いピストン運動を繰り返していく。 「ああ、あああっ!」 気持ちよさの頂点に立ちながら、全身を痙攣させ、あかねは意識を一気に手放した。 まだ子宮の奥が熱い。 頼久の熱い精を直接ダイレクトに頂いたからであろう。 あかねは頼久の腕の中にすっぽりと収まると、広くて精悍な胸に頭を寄せた。 「今夜は有り難う、頼久さん…・嬉しかった」 「神子殿。まだ、刻み足りません。あなた様をもっと味わい尽くしたいのです…」 「え、ああっ!」 再びあかねは頼久に組み敷かれ、甘い瞬間が始まる。 明日は決戦の日-----運命が動く日。 だが今だけは、何も考えたくはなかった----- |
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