琥太郎&月子
心から愛するひとに誠実な愛を表わすには、一体、どうすれば良いのだろうか。 百万本の花を花束にでもすれば、その愛の深さを表現することが出来るのだろうか。 それとも花なんかでは、愛なんて表現することは出来ないのだろうか。 百万回の“愛している”を言えば、心から大切に思っていることが伝わるのだろうか。 百万回の“有り難う”を言えば、感謝していることが伝わるというのだろうか。 だが消えてしまうものに、自分の気持ちを託しても、本当は同じことなのかもしれない。 そんなことをぐるぐると堂々巡りのように考えてしまうのだ。 だが。 窓の外に広がる、百万本の花が全部自分だけにプレゼントをされたならば、こんなにもロマンティックで愛を感じられることはないかもしれない。 ずっと憧れていることだ。 ロマンティックには、やはり愛情が欠かせない。 ロマンティックなシーンはいつでも愛するひとと体験がしたい。 愛するひとが見せてくれるロマンティックは、それこそ百万本の薔薇の花束以上に価値のあるものだと思うから。 琥太郎との同棲を経て、結婚をしてから三か月。 結婚前から一緒に暮らしていたから、余り生活に変化はないが、それでも安定した幸せに、月子は顔を綻ばせる。 結婚しているというだけで、こんなにも幸せなのかと思わずにはいられない。 ふたりで抱き合って眠ることが出来る朝は、最高に幸せだ。 蕩けるぐらいに幸せで、いつまでもこうしていたいと思ってしまう。 月子はゆっくりと目覚めると、ついニンマリと笑ってしまう。 幸せが塊のような時間だ。 月子がじっと琥太郎の寝顔を見つめていると、ゆっくりと目が開かれる。 「…もう…起きたのか…?」 「はい。だけどもう少しこうしていたいなあって、思っていたところなんです」 「…確かに。こうしていたら気持ちが良いな。だけど、こうしているとまたお前を束縛して、殆どここから出られなくなってしまうからな」 琥太郎は苦笑いを浮かべると、月子をこのまま抱き締めた。 「それはそれで良いのかもしれないが、今日はお前を連れて行きたいところがあるんだ」 「連れて行きたい所?」 月子は嬉しくて、つい笑顔になってしまう。 琥太郎と出かけられるなら、何処でも良いと思っている。 まるで日曜日にお父さんに、何処かに連れて行って貰うことを楽しみにしている子供のような、気持ちになった。 「とても嬉しい! 有り難う! 琥太郎さんっ!」 月子がつい琥太郎に抱きついてしまうと、苦笑いをされた。 「全くお前は…。可愛いいにも程がある…」 琥太郎は月子を思い切り抱き締めてくる。 「今日はふたりで一緒にのんびりとしよう」 「はい。琥太郎さんが連れて行ってくれる場所が何処なのか、楽しみにしていますね」 「ああ。お前が好きな場所だから楽しみにしておいてくれ」 「はいっ!」 琥太郎が連れていってくれる場所。 それがスペシャルな場所であるということは、月子も解っているから。 「だから、まだ時間はたっぷりあるから、ゆっくりしようか」 琥太郎はそう言うと、月子をそのままベッドに押し倒すと、ときめきは最高潮になる。 月子はそのまま琥太郎に身を任せた。 いつもよりも、少し遅い朝。 だが、これがとても幸せ。 月子は出かける支度をしながら、つい鼻歌がついて出る。 今日はとっておきの場所に行くから気合いを入れようとしたが、琥太郎に防寒をするようにと言われて、月子は素直にそれに従うことにした。 寒い場所に連れて行ってくれるのだろうか。 想像するだけで、月子はついウキウキとしてしまった。 温かな気持ちになる。 防寒をする中にも、ちゃんとお洒落のスパイスを利かせて、月子は支度を終えた。 「お待たせ」 月子は、リビングで待つ琥太郎の元に向かう。 琥太郎が笑顔で迎えてくれるのが、何よりも嬉しかった。 「じゃあ行こうか。時間もちょうど良いしな。ブランチした後が、ちょうど良い時間になるかな」 「楽しみです」 琥太郎はフッと柔らかな大人の笑みを向けてくれると、月子の手をしっかりと握り締めてくれる。 「温かいです」 「お前の手は相変わらず冷たいな」 琥太郎は苦笑いを浮かべると、月子の手が更に温かくなるように思い切り握り締めてくれた。 「…じゃあ行くか」 「はい」 琥太郎としっかりと手を繋ぎながら、月子は幸せな気分に浸る。 今日はこれからきっと素敵な1日になると、思わずにはいられなかった。 ブランチをした後、車で海岸に向かった。 ドライブも大好きだが、琥太郎とふたりで天体観測をするのが何よりも楽しかった。 海岸に出ると、寒くならないようにと、琥太郎がレジャーシートの上にフリースのマットを敷いてくれた。 月子はさり気ない優しさに。つい笑顔になるわ 天体観測の時は、横並びで座るのではなくて、縦並びで座る。 琥太郎が背中から抱き締めてくれて、月子をしっかりと抱き締めてくれるから。 これだけでかなり温かいのだ。 「こうして琥太郎さんに後ろから抱き締められて星を見るのが、私には最高に贅沢なんですよ」 「それは良かった」 静かに甘く琥太郎は呟くと、更に抱き締めてくれた。 お互いに手を握り合って、離れないようにする。 「あ、ペガスス!」 「そうだな」 「本当に沢山の星ですね。百万個ぐらいあるように見えますが、実際にここから見えているのは、一万に満たないんですよね…」 星とはなんて存在感があるのだろうかと、月子は思わずにはいられなかった。 「ああ。しかもこの辺りだと、空気が物凄く綺麗というわけではないから、完全には見えていない…。条件が良い星月学園ですらも、完全には見えてはいないだろうからな」 「そうですね」 月子は頷くと、星を見上げた。 「ここからは星も生みも綺麗に見える。ロマンティック…だろう?」 「はい。ロマンティックです。星々が海に恋をしているように見えますよ」 「…確かにそうだな」 「モテますね海は。琥太郎さんみたい」 月子はくすりと笑うと、空を見上げた。 「俺はそんなにも気は多くはないぞ。俺が恋をしているお星様はひとつだけだからな」 琥太郎は愛情が滲んだ声で言うと、月子を更に近くに引き寄せる。 「俺にとってのお星様はお前だけだからな。いくら百万の星々が輝いて一生懸命求愛してきたとしても、俺は月子しかいらない。月子が俺の唯一の星だから…」 琥太郎は月子を離さないとばかりに、更に強く抱き締めてきた。 息が出来ないぐらいだ。 「琥太郎さん、もし、私以上に輝く星があったとしても、私を見つけ出してくれますか?」 「俺は何処にいても月子を探し出せる。俺に取っては、お前よりも光る星なんてないから大丈夫だ。百万の星があったとしても、これには自信があるからな」 「有り難う」 琥太郎は腕の中で、少しだけ月子の躰の位置をずらす。 琥太郎の唇がゆっくりと近付いてきて、月子のそれと重なっていく。 甘いキス。 温かくて幸せになれる極上のキスだ。 例え百万の星々に囲まれていても、探し出してくれるから、ただ愛するひとの為だけに輝ければ良い。 真直ぐ愛と言う名の光を、愛するひとに注いでおけば、必ず見つけて貰えるから。 唇が離れた後、月子は甘く微笑む。 「私は琥太郎さんを愛していれば何処にいても気付いて貰えるから、真直ぐ愛し続けます。勿論、離れる気はないですけれど」 月子がくすりと笑うと、琥太郎は強く抱き締めてくれる。 愛は何処でもいつでも感じられるから。 |