*百万回のI LOVE YOU*

将臣&望美


 心から愛するひとに誠実な愛を表わすには、一体、どうすれば良いのだろうか。

 百万本の花を花束にでもすれば、その愛の深さを表現することが出来るのだろうか。

 それとも花なんかでは、愛なんて表現することは出来ないのだろうか。

 百万回の“愛している”を言えば、心から大切に思っていることが伝わるのだろうか。

 百万回の“有り難う”を言えば、感謝していることが伝わるというのだろうか。

 だが消えてしまうものに、自分の気持ちを託しても、本当は同じことなのかもしれない。

 そんなことをぐるぐると堂々巡りのように考えてしまうのだ。

 だが。

 窓の外に広がる、百万本の花が全部自分だけにプレゼントをされたならば、こんなにもロマンティックで愛を感じられることはないかもしれない。

 ずっと憧れていることだ。

 ロマンティックには、やはり愛情が欠かせない。

 ロマンティックなシーンはいつでも愛するひとと体験がしたい。

 愛するひとが見せてくれるロマンティックは、それこそ百万本の薔薇の花束以上に価値のあるものだと思うから。

 

 総てを終わらせて、平家の人々とやってきた風光明媚な南の島。

 将臣とふたりで事実婚のように一緒に暮らし始めてから、もうすぐ三か月になろうとしている。

 まだまだ落ち着かないが、それでも幸せいっぱいの日々を送っている。

 大好きなひとと、戦いのない時間を過ごす日々。

 愛するひととのんびりと過ごす時間は、かけがえのない幸せな時間だ。

 こんなにものんびりとした幸せな時間は、今までにはない。

 本当の幸せというのは、穏やかで落ち着いた平穏な幸せであるということを、望美は知った。

 綺麗な野菜を貰い、望美は昼食の支度をする。

 料理はかなり苦手だったが、必要にかられて、するようになった。

 そうすると不思議なことに、少しずつではあるが、料理の腕も上がってきた。

 大好きなひとに美味しく料理を食べて貰う。

 これもまたかけがえのない幸せなのだ。

 望美が、野菜たっぷりのスープを作っていると、昼食に将臣が帰ってきた。

「ただいま」

「おかえりなさい。もう少ししたらご飯が出来るからね」

「ああ、サンキュな」

 ふたりで小さな茶の間のような部屋で、昼食を取る。

 料理の腕はまだまだだから、望美は煮るだけの簡単な料理しか今はまだ出来ないが、それでも将臣はきちんと食べてくれるのだ。

 それは有り難いと思っていた。

「望美、最近、ふたりでのんびりしてねぇからな、昼メシを食ったら少しふたりで出掛けねぇか?」

「ホントに!?」

 将臣は、落ち延びた平家の者たちを取りまとめる役目があるから、いつもは驚くぐらいに忙しい。

 それゆえに、望美はいつもひとりでいることが多いのだ。

 それは仕方がないと望美も思っている。

 将臣が平家をきちんとまとめていかなければ、この人達はたちまち生きては行けないことぐらいよく解っていたから。

 だからこそ、こうして将臣と一緒に過ごすことが出来るというのは、望美にとってはとっておきの時間なのだ。

「ずっとほったらかしにばかりしているからな。お前をもっと喜ばせたいと思っても、仕事優先にばっかしちまって、すまねぇな」

「ううん。将臣くんとお出かけ出来るというだけで嬉しいんだ」

「まだこっちに来たばっかだから、色々と島を見てみたいからな。それにはお前と一緒が一番だ」

「有り難う」

 将臣と午後からデートが出来る。

 それだけで踊りたくなってしまう。

 華やかな気持ちになりながら、望美はつい笑顔になった。

 デートと言っても、元いた世界のようには出来ない。

 だが、こちらの世界のデートのほうが、素朴で幸せが感じられるのではないかと思った。

 

 昼食の後、ふたりは堂々と手をしっかりと繋いで、島の散策へと向かった。

「こうして将臣くんと一緒に散歩が出来るのが嬉しいよ」

「俺もお前とこうしてのんびりとするのが何よりも贅沢だと思うぜ」

「うん」

 ふたりは海岸に先ずは出て、散歩をする。

 あちらの世界にいた時も、よくふたりで海岸を散歩したものだ。

 あの頃から既に恋をしていたのに、お互いに認めようとはしなかった。

 幼馴染みと青春の照れ臭さがあったのかもしれない。

 そして何よりも平和だったからかもしれない。

 命の危機が迫っているだとか、そんなことは一切考えなくても良い環境だったから。

 それは本当に思う。

 今は闘いがないというだけでこんなにも幸せなのだということを、自分自身で感じずにはいられない。

「将臣くん、やっぱり海は綺麗だね。キラキラ光っていて、見ているだけで笑顔になっちゃうよ」

「そうだな」

 望美が心を解放していくら燥いでも、将臣は見守るように甘く微笑んで見つめてくれる。

 先に成長してしまった幼馴染みに男の色気を感じながら、望美はドキドキしていた。

「望美、今日はとっておきの場所に連れていってやるよ。日頃、お前をなかなか色んなところに連れていってやることが出来ないからな」

「うん、有り難う」

 将臣が言うとっておきの場所とはどんな所なのだろうか。

 想像するだけでロマンティックな気分になる。

 普段の将臣は、本当にどうしようもないぐらいにロマンスがないひとではあるのだけれど、こうしてたまに甘過ぎるぐらいに素晴らしいロマンティックを見せてくれる。

 逆に普段が普段なだけに際立つ。

「行くぞ。しっかりと手を握り締めておけよ!」

「うん!」

 手を離してしまったから離れ離れになってしまったから、こうしてしっかりと手を握り合うようになってしまった。

 ふたりにとっては、とても大切な行為だ。

「少し険しいが頑張れよ」

「うん」

 ふたりで一緒ならば、険しい岩場だって楽々に歩いてゆけるのだ。

「こっちだ。気をつけろよ」

「うん、有り難う」

 息を弾ませながら、ふたりで一緒に歩いてゆく。

「ほら見えてきた」

「わあ!」

 岩場の奥には、小さな湖のように囲われている場所が見えてくる。

 海の色が明らかに違う。

 ロマンティックなぐらいにブルーだ。

 言葉を忘れてしまう。

 エメラルドとブルーの中間の見事な色。

 それを彩るように南の島特有のヴィヴィッドで美しい花が咲き誇っていた。

 地上の楽園。

 まさにその言葉がぴったりなのかもしれない。

 余りに美しくて、望美はただじっと見つめてしまっていた。

「この景色にリボンをつけてお前にやる」

 将臣は低いのに甘さがたっぷりの声で、望美に囁いてくる。

 背後から抱き締められて、胸がいっぱいになった。

 幸せなのに泣きそうだ。

「有り難う。最高のプレゼントだよ…」

「それは良かった。偶然見つけて、お前に最初に見て貰いたかった。他の奴には教えねえけれどな。お前だけだ…」

「将臣くん…」

 嬉しくて今直ぐ泣きそうになる。

「望美、見ていろ」

「うん」

 将臣が指差す方向をじっと見つめる。

 すると海に光が差し込んで、リングのように岩場を囲む。

 まるで宝石がちりばめられた指環のようだ。

「綺麗だね」

「お前への結婚指環だ。済し崩しに夫婦状態になっちまったからな。だから、きちんとプロポーズしなけりゃならないって思ってた」

「有り難う…」

 こんなにも素敵なプロポーズは他にない。百万回の愛の言葉よりも価値がある。

「…望美、一生俺のそばにいてくれ。結婚しよう」

「はい」

 望美は清らかな気持ちで返事をする。

 ふたりはそのまま抱き合うと誓いのキスをする。

 何回しても敵わない素晴らしいキスを。

 





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