陽射しが木に反射をして、木漏れ日が優しく注いでいる。 アンジェリークは、レイチェルとエンジュとさんにんで、女の子だけの午後のお茶を楽しんでいた。 とっておきの秘密のお茶会。 3人が揃うのは執務の関係で滅多にないから、それはとても楽しみにしている。 テーブルの上には、フレイバーティーや、マドレーヌやフィナンシェといった焼き菓子や、クレームブリュレや、いちごショートケーキからチョコレートケーキまで所せましと並べれられている。 少女たちの楽しいお茶会にはおあつらえ向きだ。 これだけあれば、充分話を盛り上げることが出来る。 お菓子と甘い恋のお話があれば、心も胃袋も満足出来るから。 女の子の躰は砂糖で出来ているのだから…。 「これが激務の楽しみなのよね〜!」 レイチェルの幸せそうな明るい声に、そこにいる誰もが頷く。彼女たちはやはりまだまだ年頃の少女たちだ。このような甘い誘惑は大好きで堪らない。 どの顔も恵比須顔で、幸せそうだ。 何せ、聖地のパティシエが腕によりをかけて作ったのだから。 美味しいのに決まっている。 「このひとときが幸せよね〜。女の子だけのお茶会って、何だか凄く楽しいわよね!」 すっかり元気になったアンジェリークは、満面の笑顔を浮かべている。それがまた、エンジュとレイチェルを幸せな気分にさせた。 「やっぱり、青空のもとで、陛下とレイチェル様と一緒に、こうやってお茶の時間持てるなんて、とても嬉しいです…!」 エンジュは明るい笑顔で本当に嬉しそうに言う。 美味しいケーキとお茶。そしてお喋りがあれば最高のひと時を過ごすことが出来る。 「ねぇ、エンジュ、レオナードとはどうなのよ?」 レイチェルがつんつんと笑いながら肩を叩くと、エンジュはそれこそ顔を真っ赤にさせて小さくなった。 「どうって…」 恥ずかしそうなエンジュを見ていると、アンジェリークはほほえましくすら想う。幸せな顔を見るのは、本当に楽しい。 「レイチェル様こそ、エルンスト様とはどうなんですか?」 逆に矛先を自分に向けられて、レイチェルはらしくなく真っ赤になる。それこそ、茹蛸のような姿である。 「…エ、エル、とは…、一緒よ。いつも通り!」 半分やけくそに見える、レイチェルの慌てぶりに、アンジェリークもエンジュもくすくすと笑った。 「そういうアンジェだって、あの昼行灯の昼寝ぐうたら男とはどうなのよ?」 随分な言いようだと、エンジュは思ったが、アリオスは日頃、レイチェルの逆鱗に触れているのだから、少しだけ仕方ないかとも思った。何せタイミングよく現れて、大好きな女王陛下を奪って行くのだから。 「ア、アリオスとはいつも通り、何も変わらないわよ…」 結局、女王が一番肌を真っ赤に染め上げて俯く。それがまた可愛い。 聖獣宇宙の重鎮でありながら、三人ともやはり恋する乙女なのだ。やはり大好きな男性のことを出されると、甘やかに恥ずかしかった。 お茶をゆったり楽しんで、女の子だけに秘密のガールズトークを行う。 それは恋する相手にも内緒の、秘めやか一時…。 執務は激務だが、こういうひと時に、さんにんは幸せを見出だしていた。 三人でいると、四十関係などを超えて、同年代の女の子の顔に戻る。 それがまた心地よく、素敵なことであった。 「しかし、落ち着いて良かったね。守護聖も全員見つかって、素敵な聖天使もいて、…ついでに魔天使もみつかって」 レイチェルはしみじみとホッとしたように呟いたが、アリオスへの毒舌も勿論忘れてはいない。 「誰が”ついで”だ」 不機嫌そうな低い声が聞こえ、誰もが一斉に声が聞こえた方向に躰を向ける。 やはりそこにいるのは、噂の”魔天使”だった。 「あんた! また陛下を拉致りに来たの!?」 拉致-----それはある意味正しい。 「人聞き悪ぃな。俺は陛下を迎えに来ただけだぜ?」 悪びれる様子など全く微塵も見られないアリオスに、勿論レイチェルの怒りは強いものとなる。 「言っておくけどね! 陛下とワタシとエンジュが揃うなんて、中々ないんだからね! ワタシタチの大切で貴重なお茶の時間を邪魔しないでよ!」 「何が、大切で貴重な時間だよ!? だいたいおまえが俺を使命にこき使いまくるから、俺はアンジェと貴重なひと時を中々過ごすことが出来ねえんだよ! 俺にとっては、おまえらよりも貴重な時間なんだ! おまえのおかげで、出張ばっかりでよ! アンジェとまったりする時間もありゃしねえ」 まさに売り言葉に買い言葉。アンジェリークを挟んで犬猿の仲であるふたりは、鋭く睨み合っていた。 「ふたりとも…、そんなにいがみあわなくても、ね?」 またアンジェリークが、親友と恋人の間でおろおろとし、困ったように宥めすかすのが可愛い。 「ふたりとも、仲良く、きゃっ!」 いきなりアリオスに抱き上げられて、アンジェリークは愛らしくも悲鳴を上げる。 「ア、アリオス…」 恋人の腕の中で、アンジェリークは真っ赤な顔を見せないように俯いた。 「アンジェは、貰っていくぜ!」 「ちょっと! ドロボ!!!」 レイチェルが烈しく抗議をするが、アリオスはどこ吹く風だ。 「おいエンジュ、さっき、このテラスの前で、レオタードが待ってたぜ?」 「レオナード様です、アリオスさん…」 エンジュがさりげなく訂正するが、唯我独尊男のアリオスは取り合わない。 「おまえに会いたいんじゃねえの? レオタードは?」 「レオナード様です!」 エンジュは必死に訂正をするのが、周囲の笑みを誘った。 「まあ、どっちでもかまわねえ」 アリオスは涼しい顔をすると、涼しげな表情でテラスから出ていく。 その姿を、レイチェルとエンジュは唖然として見送った。 レオナードがいるとアリオスから聞いた瞬間から、エンジュはそわそわとしている。これにはレイチェルも仕方なく苦笑する。 「いいわ、エンジュ、行きなさい」 可愛いエンジュの為なら、致し方ない。 「でも…レイチェル様…」 明らかにエンジュは気をつかっているようで、申し訳なさそうな顔をしている。 だが、エンジュの気持ちは、レイチェルが一番良く判っている。彼女もまた立派な恋する乙女なのだから。 「早く、行っておいでよ。”レオタード”様が待ってるから」 「レイチェル様まで…。”レオナード”様です!」 「はい、はい、判ったから。ワタシは光の守護聖に執務をしないって、駄々捏ねられたくないからさ、行っておいよ。陛下も行っちゃったから、いいって」 レイチェルがにんまりと微笑みながら言うと、エンジュもようやく遠慮気味の表情を引っ込めた。 「では、お言葉に甘えさせて頂きます」 ぺこりと頭を下げてくれる聖天使に、レイチェルは満足通りに微笑んだ。 「いってらっしゃい!」 手を振ると聖天使は何度も頭を下げながら、大好きな男性に向かって走っていく。 それを見送った後、独り残ったレイチェルは、くすりと微笑む。 「やっぱり、恋するっていいわよね…。相手がどんなケダモノでもさ…」 独りになったレイチェルは紅茶を飲み干し、すうっと大きな深呼吸をする。 「-----おひとりですか? レイチェル?」 固い声が聞こえて、レイチェルはにんまりと微笑む。 そこにいるのは誰だか判っている。 「エル!」 振り向くと、大好きな男性がそこにいる。 「お茶を一緒に飲みませんか? レイチェル!」 「もちろん!」 ふたりはお互いに微笑み合うと、向かい合わせに座って、温かな時間を過ごすことにする。 レイチェルは温かな紅茶をエルンストに淹れ、差し出す。 勿論、彼の好みは判っている。 「どうぞ」 「有り難う、レイチェル…」 ふたりはお互いに微笑み合って、他愛ないことから聖獣の宇宙の生成学まで、お喋りを楽しむ。 こういう午後も良いよね? レイチェルはエルンストとお茶を楽しみ、アンジェリークは白の中庭でアリオスの膝枕をしながら楽しくお喋りをし、エンジュはレオナードの執務室の私室で優雅な午後を過ごす------- 聖獣の宇宙の天使たちの午後は、それはそれは幸せ色に輝いていたという…。 |
| コメント 女の子だけの楽しいお茶の時間のお話です。 幸せなお茶会です。 でも女の子だけの尾写部りっと、本当に、楽しくて、甘いケーキよりも、更に甘いですね。 |