クリスマスの時期になるといつも憧れる。白い冬の季節を。特に常春の聖地ぬいれば余計に感じる。 ホワイトクリスマス。それは誰もが憧れるものだから。 一年間の感謝を込め、守護聖や聖天使を迎えたパーティーが、女王アンジェリークの主催で執り行われる。 全員にとっておきのプレゼントも用意し、準備万端だ。 ただひとつを覗いては。 アリオス。 使命のために聖地を留守にしているアンジェリークの愛おしいひと。 会場になる大広間には既に招待したメンバーは集まっているのに。ひとり足りない。 使命なのはよく解っている。だが、どこか割り切ることが出来ない自分が、ここにいる。 みんなが楽しんで貰えばいい。そう思っているのに、何だか気が重い。 レオナードとエンジュは相変わらずじゃれあい、それをフランシスが引っ掻き回すといういつもの光景。 レイチェルはエルンストの傍で、宇宙生成学について語り合っている。 なのに自分はひとりぼっちだ。傍にいて色をくれるアリオスがいない。 だが、誰にも心配かけたくはなくて、笑顔で接していた。 「アンジェ」 アンジェリークを心配したのか、レイチェルがそっと近づいてきた。 「ホントにゴメンっ! マジでゴメンっ!」 レイチェルは眉を寄せて、心からの謝罪をし、アンジェリークを拝んだ。 「何が?」 「アリオスに仕事押し付けちゃったのワタシだし…」 「使命だもの。あのひとはこういう華やかな場所は苦手だから、これもまた良かったのかもしれないわ」 アンジェリークは素直に笑いながら、罪悪感を覚えるレイチェルを逆に慰めてあげた。 「…アイツなら、絶対にパーティーに間に合わせるって思っていたのにな。ゴメンね」 「いいから大丈夫! レイチェルもエルンストが待っているわよ! あなたこそゆっくり出来るのは久し振りなんだから、たっぷり甘えちゃわないとね」 エルンストもきっと久々に過ごせる恋人を独占したいに違いない。 「うん、アリガト」 レイチェルは頬を紅に染め上げると、エルンストに駆け足で走っていく。 恋人たちを見るのは、なんと清々しいのかと思った。 いよいよ宴もたけなわになり、アンジェリークが用意しておいたロマンティックなプレゼントが披露される時間がやってきた。 「ではみなさん、バルコニィに出てください」 アンジェリークの一声に、全員が闇に包まれたバルコニィへと出る。 「では、空を見ていて下さいね」 誰もが空を見上げると、闇を照らす白いものがひらひらと舞い降りてきた。 「綺麗…」 「そうだな…」 いつの間にか、レイチェルはエルンストと、エンジュはレオナードと肩を寄り添いながら見ている。 誰もが夜空から齎された白いロマンティックな贈り物に夢中になっていた。 闇を照らす雪は、ほんとうに美しい。 アンジェリークはもうひとり見せたかった相手を想い浮かべながら、自らのサクリアで作り上げた雪を眺めていた。 アリオスが傍にいればいいのに。 この雪を一緒に見てくれたらいいのに。 それぞれの恋心色に染め上げて、天体の贈り物は幕を閉じた。 アンジェリークの紡ぎ出したプレゼントが終わると、それでパーティーはお開きになった。 それぞれがロマンティックな気分に浸って素敵な気分になっている。 アンジェリークはただひとり、大広間に残り、しんみりとした気分で、アリオスのことを想う。 ただ無事に整地へと戻ってきてくれれば良いから。 「…間に合わなかったみてえだな」 大好きな良く通るテノール。イタズラっこのようないきな響きを出せるのは、たったひとりしかいない。 ほんの僅かなのに、まるでスローモーションにかかったみたいにもどかしく振り返る。 眼差しに映り込んだのは、アリオスの姿だった。 「おかえりなさい!」 アンジェリークは想いを込めて言うと、アリオスを強く抱きしめる。 「すまねぇな…。遅れた」 「ううん、遅れてなんかいないよ。まだパーティーは終わっていないから」 「そうだな…」 アリオスは目をスッと細めると、僅かに笑みを唇に浮かべる。 「アンジェ、おら」 アリオスは、素っ気ない発泡スチロールの箱を、アンジェリークに差し出してきた。 「何?」 「開けてみろよ。お前、こういうのが好きだろう?」 「何だろう…」 アンジェリークが小首を傾げながら箱を開けると、そこにわおかっぱ頭の可愛いスノウガールが入っていた。 「可愛い!」 アンジェリークは雪が溶けてしまうかと思うぐらいに、じっと見つめている。そこには温かな想いが織り込まれているような気がした。 「凄い嬉しいよ。アリオスが作ったの?」 アリオスはムスッとして質問には答えない。それが明らかな答え。瞳はほんのりと朱く染まっているのだから。 アリオスが雪だるまを作っているのを想像するだけで、何とも甘い気分になる。 アンジェリークはくすくすと幸福の笑みを浮かべずにはいられなかった。 「有り難うアリオス! とっても嬉しいよ!」 「ああ…」 アリオスは独特の照れた笑みを浮かべ、アンジェリークだけに意味を持った笑みを浮かべる。 「大好きよ。アリオスは私が欲しいものは何でも解るのね」 「じゃあ俺が欲しいものも解るだろ」 アリオスはセクシャルな笑みを浮かべると、アンジェリークの手を撮る。 「感謝のプレゼントは決まっているだろ?」 アリオスの言っている意味は直ぐに解る。アンジェリークは頬を赤らめると、アリオスに近づき背伸びをした。 「目を閉じていてよ?」 「さあな」 アリオスは良くない笑みを浮かべながら、目を閉じ、腰を屈めてくれる。 躰を震わせながら、アンジェリークはアリオスにそっと近づいていく。 唇が触れ合った瞬間、アリオスが強く抱き寄せてきた。 幸せなキスは素敵な雪が運んでくれた。 一緒に雪を見られなくても、もうこれで充分過ぎるぐらいに素敵だ。 アンジェリークはアリオスを抱きしめながら、今年も最高の年の瀬を迎えられたと感じた。 アリオスが冷たい雪で自ら雪だるまを作ったことは、ふたりして風邪を引いたことで、完全にばれてしまった。 |