たまにはデパートをぶらぶらするなんてデートも、とっても楽しいと思う。 アリオスが一緒だったら、結局はどこでもいいんだけれどね。 「おまえさ、デパート行きたいって言うから、どこのフロアに行きたいかと思ったら、結局は地下かよ」 「え〜! デパ地下ほど充実しているところはないんだからね〜!」 アンジェリークはアリオスの対応が不満で、ぷんぷん怒っている。その表情をアリオスが見たいからからかっているなどとは、夢にも思ってはいない。 「普通、おまえぐれえの若い女だったら、洋服とかアクセサリーとかをじっくり見て愉しむだろうが。クリスマスが近かったら尚更な。なのにおまえは食い気かよ!?」 「あのね、クリスマスが近井からこそデパ地下なのよ。アリオス君、わーかる?」 アンジェリークは鼻息も荒く、アリオスにしっかりと自分の主張を聞かせてやった。 「おまえぐれえだぜ。んな考え持ってるの。ったく、食い地だけは天下一品だからな」 大きな溜め息をついて憐れむ恋人に、アンジェリークは更に憤慨した。 「これから、クリスマスとお正月が待っているのよ! ようこそ! おいしいものの季節〜!」 「結局はそれかよ」 食い地のはった愛らしいアンジェリークが気に入っているアリオスは、結局のところ苦笑するだけだ。 「あ! おせちだ〜!」 アリオスと手を繋いだまま、アンジェリークは、おせち料理のサンプルが飾ってある申し込みコーナーに走っていく。 「今年のお正月休みは、アリオスのマンションで、まったりするんだからね〜!」 「ああ。ギリギリまでいろよ。いろいろとやることはイッパイあるからな?」 艶ともスケベとも取れないではない微笑みをアリオスが浮かべてくると、一瞬、胸をわしづかみにしてくる。 「きゃあん。もう、アリオスのスケベ!」 「おまえとゆっくり出来るんだからな。たっぷりと何を愉しむか決まっているじゃねえか」 「もうっ! …えっちもいいけれどさ…、もっと色々あるじゃない? えっと、初詣とか…、ご馳走いっぱい食べることとかさ…」 真っ赤になりながら、しどろもどろに言うアンジェリークは、本当に愛らしいとアリオスは思う。 「ご馳走っておまえらしいよな。心配するなよ。たっぷり食べて、除夜の鐘を聞きながらしようぜ?」 「年越しそばは!?」 「んなもん、適当に食ったらいいんだよ。適当にな」 アリオスの言い草に、食いしん坊な彼の天使は不満そうに頬を膨らませた。 「クリスマスはロマンティックに祝ってやるから心配するな」 「うん。美味しいご馳走はついてる?」 「ああ、つけてやるよ」 「嬉しい〜!」 本当に嬉しそうな恋人の姿を見ていると、アリオスは癒される。 まだまだ色気より食い気のところはあるが、アリオスにとってはそれはそれで可愛いのだ。 「二人用のおせち予約していこうよ」 「解った。まあ、えっちの合間に何かつまむものが欲しいしな」 「もうっ! えっちなんだから!」 アンジェリークはサンプルをじっくり見ながら、ああでもない、こうでもないと言っている。 「アリオスは何がいい?」 「あ〜、”子孫繁栄”の数の子だな」 「まあ、別に買えばいいからね、ふたりぶんのコンパクトなのにしましょ」 アンジェリークの愛らしい表情に、アリオスは思わず見取れてしまっていた。 お節料理の予約申し込みも済み、今度はアンジェリークにとっては一番の楽しみが待っている。 「クリスマスケーキを見に行こう!」 「ケーキなら、ホテルのディナーについてるぜ」 「いいの、いいの」 アリオスの手を引っ張って、洋菓子売場に駆け込んだ。 「アリオス、ちょっと、ちょっと、これを見てよ!」 「あ〜?」 アンジェリークが指を指したのは、小さな白いケーキだった。中央には天使の形をしたチョコレートが置いてあるとてもシンプルなものだ。 「”ガトー・アンジェリーク”だって! 私と同じ名前のクリスマスケーキ!」 「まずそうだな…」 嬉しくて興奮しているアンジェリークに、冷水を浴びせるような一言である。 「アリオスの意地悪…っ! 折角、アンジェが名前と同じケーキを見つけて喜んでるのにっ!」 すっかりアンジェリークは拗ねてしまい、大きな瞳には涙すら浮かべている。 「バーカ、本気に取るなよ」 アリオスは少し苛立ちながら、唇を耳元に近付けてくる。 「目の前の”アンジェリーク”が、俺には一番美味いんだよ」 とろけるような低くて甘い声で囁かれ、アンジェリークはうっとりと微笑んだ。 極上の甘さを持つのは、やはりアリオスの言葉以外にないと思いながら…。 |
| コメント 昨日チケットを取った帰りに、なにげに百貨店に行ったらありました。 同じ名前のケーキ! 凄く小さなケーキで可愛かったですよ。 |