Our Christmas has come


 クリスマスもきっと仕事で遅いのだろうかと、やきもきしてもしょうがない。
 下界に下りて最初のクリスマスは、ふたりにとって思い出のあるものにしたい…。
 そんな気持ちになりながら、アンジェリークはカレンダーと睨めっこをしていた。
 アリオスとアンジェリークは職務を終えた後、ふつうの”夫婦”として生活を始めた。
 アリオスは女王直属の機関の職員となり、細々と働いている。
 といえど、あくまで彼の中心はアンジェリーク。
 彼女を疎かにしてまでは仕事をしない。
 とは言え、王立機関にいるが故に、それなりに働かなければならず、特に十二月は忙しかった。

 アリオスは私の為に働いているんだもの…。我が儘なんて言えない…。
 私には、もうすぐやるべきことがあるから、少し休めと言ってくれている。
 赤ちゃんが出来ること…。
 それは私が何よりも望んでいることだと、アリオスはよく解ってくれている。アリオスとの赤ちゃんだから欲しいことも…。
 その私と子供の為の環境作りの為と、彼自身の能力が買われて、この星に来て仕事をしてくれているから、あまり我が儘は言えない…。

 働いてくれているアリオスに、せめてクリスマスだけでもリラックスして貰いたくて、アンジェリークは色々と準備をすることにした。
 クリスマスプティングや、ご馳走の下準備などをしながらも、アリオスを喜ばすことだけを考える。

 アリオスは喜んでくれるかな…。
 初めてのふたりきりで過ごす聖夜を、楽しんでもらえるかな?
 来年はきっと…、ファミリークリスマスになってしまうけれど…。

 アリオスの喜ぶ顔を思い浮かべながら、クリスマスの準備をするというのはなんて楽しいものなのだろうか。喜びに裏打ちをされている疲労というのは、疲れた気分にもならず、とても心地が良い。
 アンジェリークはあれこれ考えながら、準備を頑張って進めた。
 準備をする最初は、凄く楽しいものだったのに、日が経るのに連れて躰が疲れやすくなってくる。
 適度に休んで準備を進めれば良かったものの、張り切り過ぎてとうとう寝込んでしまう結果になった。
「どうしたんだよ? あまり無理するなよ? 激務から解放されたばかりで、まだまだ充分に休めてはいねえんだからな」
「うん…」
 とうとう寝込んでしまったアンジェリークを、アリオスはかいがいしく世話をしてくれる。
「何に頑張ってたか知らねえが、ちゃんとペースを考えてやれよ!?」
「うん」
 アリオスの愛情ある叱責を受けながら、アンジェリークはかわいらしく頷く。
「ちゃんとペース考えてやったつもりなんだけれど、ちょっと夢中になっちゃったみたい…」
 女王の頃はこんなことはなかったのにと思いながら、反省することしきりだった。
 同時に、躰が女王時代と明らかに変化しているようで、切なかった。

 女王の時は、これぐらいで疲れることなんかなかったのに…。

「ちょっと熱があるみてえだが、薬は様子を見るぜ」
「うん…」
 アリオスのこういった面は素直に聞くことが出来る。
「アンジェ、無理するなよ、あまり。昔からおまえの悪いくせだからな」
「解った…」
 アンジェリークは素直にコクりと頷くと、ベッドの上かけを鼻までかぶった。
「俺の目が届かねえと、すぐにそれなんだからな。頑張るなよ」
「アリオス…」
 本当はアリオスの為に頑張りたいというのを、言いかけて飲み込んだ。

 翌日から、アリオスはほんの少しだけ早く帰ってくるようになり、秘密のクリスマスの準備は余り進まなかった。
「クリスマスね、ホームパーティーをしようよ」
 ようやく切り出しながら、アリオスの顔色を少し伺う。
「ホームパーティーか…。いいなそういうのも。どこか、イヴにホームパーティーをするか?」
「うんっ!」
 アリオスが同意してくれて、アンジェリークは凄く嬉しかった。これで堂々と準備が出来るというものだ。
 それからと言うもの無理をしない程度に準備に勤しむ。あまりに夢中になって準備をしていたので、ある事実を見逃していた。
 気付いたのはクリスマス近くになり、手帳を見たとき。
「あっ!」
 喜びがじわじわと沸き上がって来て、アンジェリークは、飛び上がりたくなった。
 アリオスに最高のプレゼントを渡せるかもしれない。それだけで、嬉しくてしょうがなかった。

 -----そして、クリスマスイヴ。いつもに増して、素晴らしいプレゼントを贈ることが出来ると、アンジェリークは幸せな気分になった。
 ホームパーティーの為に、アリオスは早く帰って来てくれる。
「ただいまアンジェ、メリークリスマス!」
「おかえりなさい、アリオス!」
 抱きついてキスをしながら、すこし胸のドキドキが高まる。
「…アリオス…プレゼントがあるんだけど…。耳貸して?」
「ああ」
 不思議そうにする」アリオスにアンジェリークが囁いた瞬間、少しの驚きと喜びの表情に広がってくる。
「…サンキュ、最高のクリスマスだ」
 アリオスは甘く微笑むと、アンジェリークを抱き上げてぐるぐると回した。
 ふたりは喜びいっぱいの微笑みを浮かべて、クリスマスの晩餐を始める。
「来年からふたりきりじゃなくなるな。ふたりきりのクリスマスを思い切り楽しもうぜ?」
「うん…」
 アンジェリークが囁いたのは「赤ちゃんが出来たの」と甘い知らせ。
「初めてちゃんとした家族を持てるんだな…。サンキュ、アンジェ」
「アリオス…」
 来年にはふたりの血を分けた、大切な家族がやってくる。
 きっと新宇宙一番の素敵な家族になると、ふたりは心から思わずにはいられなかった。
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甘くて最高のクリスマスです




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