Seeing Stars


 先生も走る季節は、当然のことながらアリオスだって忙しい。
 繁華街のイルミネーションの美しさにうっとりとしながら、アンジェリークは溜め息をついた。
 これをアリオスと共有出来ればいいのに。そう思わずにはいられない。
 だがそれは叶わぬこと。ばりばりと一線で仕事をするアリオスにはとっては、今月の前半は本当に忙しいのだ。
「ヒマなのはいつも私だけなのよね…」
 しみじみと思いながら、アンジェリークは呟いた。
 クリスマスもちゃんと過ごせるのだろうか。
 そんな不安もないわけではないが、考えていてもしょうがない。
 アンジェリークは希望を持つことにした。
 どれぐらい声も聞いていないだろうか。何時もメールのあいさつだけ。ひょっとして声を聞いたのは、最後に逢ったアリオスの誕生日だったかもしれない。
 楽しそうにクリスマスや正月のプランを練っているカップルを横目で見ながら、羨ましく感じた。
「プランとか以前の問題だものね…。ちゃんと過ごせるかが問題だもんね。うちは…」
 家に帰って、いつものように御飯を食べて、領分である勉強をする。最近では、すっかり”予定のない女子高生”と化していた。
 お風呂も入り、ごろごろとしていると、携帯が鳴り響く。久々の電話での着信だ。
「はいっ! アンジェ」
「俺だ、アンジェ」
 声の特長でアンジェリークは誰だか解る。だが、わざと澄まして言ってみる。
「どなたですか? 俺だなんて名乗るの、なんか詐欺みたい」
「アリオスだ。これで満足かよ」
「うん!」
 元気よく返事をすると、電話口でアリオスが苦笑するのが聞こえた。
「明日休みだろ? 天体観測しにうちに来ないか?」
「行くっ!」
 即決。アリオスの側にいられるうえに、天体観測というのは何ともロマンティックな響きだろうか。
「車で家の前にきてるから」
「だったら、直ぐに着替えるからね」
「いいや。パジャマのままだったらそのまま来いよ」
 アリオスはさらりと言い、アンジェリークはほんの少し頬を染める。
「いいの?」
「いいから早く来い」
 カーテンを開けて外を確かめると、確かにアリオスがいた。
「うん、じゃあ行くよ」
「待ってる」
 ぱたぱたと下に降りた後、そっと裏口から外にでる。戸締まりも忘れてはいない。
「アリオス!」
 車の中にいるアリオスにしっかりと手を振ると、開けられたドアから助手席に座った。
「おまたせ!」
「ああ」
 アリオスは力強くアンジェリークを抱き寄せると、烈しく唇を奪う。やはり久しぶりのスキンシップなだけあり、濃密であった。
 息が奪われるようなキスの後、久しぶりのアリオスに、アンジェリークは抱き着いてしっかりと甘えた。
「声だけでもいいから聞きたかったの…」
「俺もな」
 何度か触れるようなキスをしていると、甘い感覚が全身を焼き尽くした。
「アンジェ、行こうぜ」
「うんっ!」
 しっかりとアリオスにぴたりとつきながら、アンジェリークは幸せな気分で、アリオスのマンションに向かった。
 マンションの駐車場に着き、車から降りると、アリオスが爆笑する。
「何だよおまえ、下駄なんか履いてきたのかよ」
「だって…、勝手口にこれしかなかったんだもん…」
 恥ずかしくて俯くと、アリオスが手を握ってくれる。
「ほら、行くぜ?」
「うん!」
 どんな恰好をしていても、結局は関係ない。ふたりは甘い世界に浸りながら、アリオスの部屋に向かった。
「今日は忘年会があったからな。ビンゴでおもしれえものを貰ったんだ」
「おもしろいもの?」
「ああ。来いよ」
 手を繋いだまま、アリオスはリビングに連れていってくれる。
「床暖房、入れてやるからな」
「うん」
 スイッチを入れてくれて、暖房が立ち上がる間、アリオスが抱きしめてくれる。
「寒くねえか?」
「大丈夫。アリオスがそばにいるもん」
「だな。ちょっと準備をするから待っていろよ」
「うん」
 アリオスは一旦アンジェリークから離れると、紙袋からがさがさと箱を取り出す。開けるとそれはコンセントの付いたドーム型のものだった。
「これは何なの?」
「天井を注目してみろよ」
「うん」
 天井を見上げている間、アリオスはコンセントを繋いで細々と準備をしてくれる。
 突然、照明が落とされた。
「うわあ! 凄いわ!!」
 天井に浮かび上がるのは数多の星ぼしたち。
 あまりにもの美しさに、アンジェリークは思わず大きく口を開けた。
「凄い! もう最高!!」
「おまえこういうの好きだもんな」
「うん!」
 アリオスが側にきてくれて、アンジェリークはぴたりと彼に寄り添う。
「すげえな」
「うん…」
 余りにもロマンティック過ぎて、アンジェリークは言葉を失った。
 アリオスにしっかりと包み込むように抱きしめられて、アンジェリークは幸せな気分でいっぱいになる。会えなくて切なかった日々が嘘のようだ。
「ありがとう…、素敵なプレゼント…」
「日頃のお詫びだ…」
 ふたりの顔が近づいて重なる。
 甘い甘いキスを受けながら、アンジェリークは自分はこんなに幸せなのだろうかと、感じずにはいられなかった。
 温かい床に躰を横たえられる。
 ふたりには、愛し合うには場所はどうでも良かった。
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あまあま創作です〜




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