summertime memory


 携帯の着信音が鳴り、アンジェリークは勢いよく出た。
「はい、アンジェです」
「俺だ」
「アリオス!!」
 電話の相手は嬉しい人だが、少し疲れたような声の恋人に、アンジェリークは少し眉をひそめた。
「どうしたの?」
「おまえの声…、ちょっと聴きたかったから」
「アリオス…」
 いつも恋人は俺様で、こんなことを滅多に言う男ではない。
「サンキュ。おまえの声聴いたらなんかすっきりした。じゃあな」
「ちょっと、アリオス!」
 呼び止める間もなく、アリオスが電話を切ってしまったので、アンジェリークは何が何だか判らない。
「…もうしょうがないなあ」
 アンジェリークは苦笑すると、不意に部屋にある花火の残りを見た。
 この夏アリオスと一緒に海に遊びに行った時に買ったものの、結局は残ってしまったものだ。
「これ使えそうね! うん!」
 早速思い立つと、すぐに準備を始める。
 アリオスの傍にいたい------
 明るい気分になって貰いたくて、ちょこまかと準備をする。
 浴衣を着て、残った花火を持って、自転車でアリオスのマンションに向かった。

 アリオスのマンションはオートロック式で、直ぐにボタンを押して反応を待つ。
「はい」
「アリオス、遊びに来たよ!」
「アンジェ…。判った直ぐに開ける」
「うん!!」
 アリオスにまずはマンションの玄関を開けて貰い、そこから中にはいる。
 キーはあるのでアリオスの部屋の玄関は自分で開けた。
「こんばんは〜! 遊びに来たよ〜!」
「ああ、よく来たな」
 声を掛けてくれたアリオスは、ベランダで煙草を吸って外を見ている。
 少しいつもよりも影が濃い事は、アンジェリークにも直ぐに判った。
「どうしたの?」
「-----なんでもねえよ」
 アリオスはただそう言うものの、この態度は明らかにおかしい。
「ねえ、本当にどうしちゃったのよ!?」
 アンジェリークはアリオスが元気のない理由を一生懸命考えてみる。

 やっぱり、アレかなあ…。

 不意に恋人の手を取ると、浴衣の胸口に持って行く。
「えっちしていいよ? アリオス」
「あのなあ…」
 アリオスはいきなりの恋人の申し出に頭を抱えた。
「私とえっち、嫌?」
「んなんじゃねえよ。もちろんやりまくりてえに決まってるだろ?」
 苦笑したアリオスに、アンジェリークはちょっとほっとする。
「あ、ねえねえ、花火持ってきたんだ、私…。ベランダでやろうよ!!」
 花火を見せた後にベランダに向かう恋人を「見ながら、アリオスは彼女の小さな頃を思い出した。

 あの時も、俺がヘアスタイルが上手く考えられなくって、あいつ…、こうやって花火で慰めてくれたんだよな…。

「アリオスお兄ちゃん! 元気の出る花火やろう!」
「元気の出る? なんだよそれ?」
「じゃじゃ〜ん、これ!」
 そう言ってアンジェリークが得意げに取り出したのは、ただの黒い小さな塊。
「何だ、それ?」
「良いから、ここに火を付けて 、置いてみて」
「ああ」
 小さな幼なじみが行った通りに、アリオスがすると、黒い塊からしゅるしゅると黒い灰の連なった長いものが出てくる。
 アリオスはその滑稽な様子に、思わず吹き出していた。
「これねえ! うんこ玉なの!! 小学校ですごくはやってるの!」
「うんこ玉ねえ…」
 アリオスは苦笑しながら、何とも滑稽なものをじっと見る。
 確かに名前は通りのおもしろさはある。
 「ほら、うんこ玉いっぱいあるよ! これ見てたら面白くって、悲しい事を忘れちゃうよ!」
 アンジェリークはうんこ玉に火を付けながら、いかにも楽しそうにしている。
 その笑顔は本当に愛らしかった。
「サンキュ、アンジェ…」

 あの時も、あのうんこ玉のおかげで、直ぐにアイディアが浮かんだんだよな…。

「さあ、花火〜」
 まだ純粋さを失わない恋人が花火の準備をしている。
 それこそ何度躰を合わせたか判らない位なのに、いつまでたっても純粋だ。
「うんこ玉か?」
「…もう、アリオス下品!」
 頬を膨らませて怒るアンジェリークに、アリオスは苦笑する。
「おまえが昔そう言ってたんだろうが」
「あの時は子供だったもん…」
 少し照れる恋人が本当に可愛かった。
「…アンジェ」
「なあに?」
 アリオスは浴衣姿の恋人を背後からしっかりと抱きしめる。
「今日はサンキュな…」
「あっ…」
「おまえのお陰で、吹っ切れた。
 良いヘアのデザインが浮かばなかったんだが、お陰で良いものが浮かびそうだ」
「よかった!」
 アンジェリークはほっと胸をなで下ろすと、アリオスに躰を預けながら笑った。
「デザインも浮かびそうだから、ちょっとつきあってもらおうか」
「え!?」
 アンジェリークふぁ息を呑んだ時には遅くて、抱き上げられる。
「え!? 花火は、アリオス!!」
「えっちさせてくれるんだろう? 今夜はたっぷりな?」
「いやあん」
 不適な笑みなアリオスに、アンジェリークは逆らう事が出来ない。
 この後、たっぷりと恋人に頂かれてしまった、らしい-----
 
コメント

うんこ玉。
勿論蛇の花火の事です(笑)






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