闇がおりた時間にようやく聖地にたどり着いたアリオスは、庭園から望月を見つめていた。 自らの力では輝けず、太陽に光を貰い、闇にしか輝くことが出来ない月 アリオスは、それがまるで自分のように思えた。 アンジェリークという名の、眩しすぎる聖なる太陽がないと輝けない自分に、その姿を重ねる。 太陽に恋をした月のような気分だ。 アリオスはふっと寂しげに笑うと、自らの太陽が休息をとる部屋を見つめた。バルコニーの奥から、柔らかなレースのカーテンが泳いでいるのが判る。あの先には、アリオスが恋して止まない、アンジェリークがいる。 近付きたくて、だが、近付けなくて。 アリオスは届かないのを知っていて、アンジェリークの部屋に向かって手を差し伸べる。 そこに沢山の愛を乗せて、アリオスはアンジェリークに送った。 ふと、レースのカーテンの奥にある影が動いたような気がした。 あの奥にアンジェリークがいる。それを見守れるだけでも、心が温かくなる。 「やっぱり、ここにいた」 優しく甘い声にアリオスが振り返ると、そこには穏やかな笑みを浮かべたアンジェリークが立っていた。 「直ぐに部屋に来てくれるって思って待ってたのに」 みんなの太陽である女王としてではなく、アリオスだけの太陽としてアンジェリークはここにいて、抱き付いてくる。 腕の中にあるとろけそうな温もりを取りこぼしたくなくて、アリオスはしっかりと抱きしめた。 「気配を消していたのに良く判ったな?」 「だって簡単よ。私はひまわりだもん」 「ひまわり?」 アリオスは訳が判らなくて、アンジェリークの顔を不思議そうに見る。 「だってね、ひまわりは、太陽のいる方向に顔を向けるものなの。私の太陽はアリオスだもん。アリオスが何処にいるか、気付いて当然でしょう?」 屈託無く笑った笑顔ごと、アリオスはアンジェリークを抱きしめた。 「…もう少し、こうさせてくれ。その後部屋に連れて帰ってやるから」 「うん」 空には月、腕の中にはかけがえのない愛。 きっと月ですら嫉妬する愛だ。 アリオスは思う。 お互いにずっと太陽であれたら、とても素晴らしいだろう。きっとふたりなら、これからもそういられるだろう。 アリオスは愛しい太陽であるアンジェリークに、甘いキスを送る。それは太陽に恋した月が、最も欲しがっている愛の欠片に彩られていた。 |
| コメント この夏のペーパー再録です。 ふたりはいつまでも思い合っていて欲しいですな |