Thurth Day


 私が楽しみなのは、木曜日。
 それはあなたが必ず帰って来てくれるから。その日は朝からそわそわしていて、レイチェルにいつも笑われる。
 レイチェルも私も、執務はカレがサポートしてくれる。だけど、親友同士の私たちが決定的に違うのは、カレと会える頻度。
 レイチェルは同じ場所で働いているから、いつでも会えるけれど、私はいつでも会えない。
 帰ってくるのが、木の曜日の夕方で、金の曜日にはまた使命に出てしまう。
 日の曜日は、休日返上で働いていることが多いもの。
だからかなり切ない。
 日の曜日の殆どは、ぼんやりしていることが多い。
 一月に一度っきり、木の曜日から日の曜日にかけて、ずっとそばにいてくれる。
 だけど恋する私には、そんなものでは足りないのよ! って、叫んでやりたい。
 私のために、忙しくしているのを知っているから、傍にいて欲しいとは、はっきり言えない。
 窓の外を見つめながら、私はキリリと指を噛んだ。
 落ち着かない。もうすぐカレが帰ってくるから。
 頬杖をついて私はじって待つ。
 もう待ちくたびれたと想うぐらいに。
 今日から、月の曜日の朝まで、久しぶりに私のそばにいてくれる。
 昨日の夜は、この三日間の事を考えるのに、はりきり過ぎて、殆ど寝ていない。
 まどろみが気持ち良く、瞼を覆う。
 お願い、眠りたくはないの。
 笑顔でお迎えしたいから。
 だけど…。
 瞼に天使が下りて来て、私を完全に支配してしまう。
 …おやすみなさい…。


「ったく、折角、ダッシュで帰ってきてやったのに、肝心の女王陛下は居眠りかよ」
 あどけなく眠る、まだ幼い女王を見ながら、ストレスが溶けていくように感じた。
 俺は、ふっくらとした頬に手を伸ばし、髪を除ける。
 コイツのことだ。
 この週末の過ごし方を考えていたんだろう。寝不足になるなんて、全くらしすぎる。
 あんまり気持ち良さそうに眠っているものだから、このまま起こしてやるのもかわいそうな気もする。
 俺もトコトンまでこいつに甘いもんだぜ。
 レイチェルとの取り決めで、木の曜日には必ず報告に戻り、金の曜日には出発する。
 木の曜日。俺達には大切な曜日だ。アルカディアにいたころ、俺達が必ず逢っていた曜日だったから。
「アリオス! 私に木の曜日をちょうだい! 必ずその日は会えるようにして欲しいの!」
「ああ」
 あの約束を、こうして同じ目的で仕事をするようになってからも、ちゃんと守り通している。
俺達にとっては思い出深い曜日だからだ。
「特別な曜日に寝るなよ…」
 白く滑らかな肌に吸い寄せられながら、俺はアンジェリークの頬に唇を押し当てた。

 冷たくて、優しい感触。
 天使にでもキスされたみたいに気持ちが良い。
 優しいまどろみが破られて、私はゆっくりと瞳を開けた。
「よく寝てたみてえだな」
「あ…」
 目を開ければ、王子様が…。ではなく、アリオスが傍にいる。
 綺麗な瞳に私は吸い寄せられる。
 この眼差しを独占したい。
 だって私だけのものだから。
 ずっと願っていた眼差しを手に入れ、私は微笑む。
「女王陛下が居眠りしていてもいいのかよ?」
 甘さを含んだ抗議を聞きながら、私は微笑む。ぎゅっと逞しい首に、両腕をしっかりと回した。
 そして大切な言葉を、呪文のように口にする。
 ずっと言いたかった言葉を…。
「おかえりなさい。木の曜日は私にくれるんでしょ?」

コメント

久しぶりに「トロワ」がやりたくなった。



モドル