生まれたての清らかな年を、大好きな男性と迎えられるなんて、こんなにも素敵なことは他にない。 ロマンティックで甘い幸せに浸りながら、真新しい年を一緒に過ごせるなんて、なんて素敵なのだろう。 今年一年の“どうぞよろしく”を沢山込めて、素敵なスタートをきる。 アリオスとふたりだけのお正月。 ずっと夢見ていた。 大晦日から三が日をずっと一緒に過ごせるなんて、これ以上に素敵なことはないのではないかと、アンジェリークは思う。 大晦日は年越しそば。しかも老舗のおそばで量も大盛りにしてもらっている。 具材も海老の天ぷらだけではなくて、かき揚げもある豪華なものだ。その上に蒲鉾や、とろろこんぶ、葱もたっぷり入っている。 アリオスが、アンジェリーク仕様として用意してくれたのだ。 そしておせち料理。 おせち料理は、レオナードが作った洋風タイプのものと、デパートで買った和風タイプのものの2種類。 普通の家では腐らせてしまうほどの量であったが、アンジェリークならば三が日で充分に平らげてしまえる量だった。 アンジェリークは、沢山の料理ににんまりとする。 なんて幸せなのだろうかと、思わずにはいられなくなる。 こんなにたっぷりと食べられるのが、何よりも嬉しかった。 「祝い鯛まであるよー。物凄く嬉しいよ。あ、数の子が沢山あるねー。嬉しい♪」 アンジェリークのご機嫌な声に、アリオスは嬉しそうに目を細めて見つめてくれている。 ドキリとしてしまうほどの魅力的なまなざしに、アンジェリークは耳まで真っ赤にさせた。 「…凄く魅力的だよね…」 「ああ。お前がたっぷりと食べられるように準備をしたつもりだぜ」 「あ、有り難う」 本当は料理のことを言った訳ではなく、アリオス自身のことを言ったのだが、本当のことを言うのが恥ずかしかったので、アンジェリークは黙ってしまった。 「何だか今年は特別なお正月になるような気がするの」 「そうだな。俺もお前の食べっぷりが見られるから嬉しいけれどな。これ以上のエンターテイメントはねぇだろう?」 アリオスが見せ物のように言うものだから、アンジェリークはついむくれてしまった。 「…もう、アリオスの馬鹿…」 「…お前の食べっぷりを見るのは、本当に楽しみだからな」 アリオスは喉をくつくつと鳴らしながら、本当に楽しそうに言う。 それがほんのりと癪に障った。 「くれぐれも腹だけは壊さないでくれよ? いいな」 「解っているよ。そんなことぐらい…」 アリオスに子供扱いされたのが気に入らなくて、アンジェリークはプイッとそっぽを向いた。 大晦日はふたりでゆったりと過ごす。 アリオスと過ごす大晦日は、美味しくてそしてロマンティックだった。 年越しそばはふたりで用意をし、向かい合わせで食べる。 ずっとずっと、それこそ共に白髪が生えるまでアリオスとは一緒にいたいと、アンジェリークは思う。 それ以上のことはない。 アリオスとふたりで一緒にいられれば、これ以上の幸福は他にはないのだから。 大量の年越しそばを食べた後、ふたりは近くの神社にひっそりと初詣に出掛けた。 アリオスは、神様の類は信じないから、先ず、神社のような場所には行くことはないのだが、アンジェリークと 付き合うようになってからは、着いてきてくれるようになった。 それが何よりも嬉しかった。 アンジェリークと手を繋いでくれて、神社に参拝する。 幾つになっても、アリオスとこうしていられれば良いと思わずにはいられなかった。 初詣では、アリオスと一緒にいられるようにとだけ、強く祈る。 それが何よりもの願いだった。 アリオスはアンジェリークの付き添いといった形で、特には何も祈ってはいないようだった。 「アンジェ、お前に付き合ったんだから、俺にもちゃんと付き合って貰うからそのつもりで」 「わ、解っているよ…」 アリオスの意味するところを充分に解っているせいか、アンジェリークは耳を真っ赤にしながら頷いた。 ふたりで熱くて幸せな時間を過ごした後で、ゆったりと眠る。 お正月は大好きなひととゆったり出来るのが醍醐味だとアンジェリークは思った。 ふたりは結局、お昼前に起き出して、食事をする。 雑煮はアリオスが作ってくれた。 「雑煮も色々とあるみてぇだから、先ずはお澄しで。次は白味噌でいくか」 「嬉しいなあ。沢山の雑煮が食べられるのが、何よりも嬉しいし、おせちをいっぱい食べられるのも嬉しいよ。本当に幸せー」 アンジェリークは満面の笑みを浮かべて、目の前に並べられた食事を見つめた。 「…美味しそう…」 「たっぷり食べろよ」 「うん!」 アリオスとふたりで向かい合って座り、新年の挨拶をする。 勿論、これからのどうぞよろしくも込めている。 ふたりはかしこまって頭を下げた後、お互いに、くすぐったくて笑ってしまった。 こうしてふたりだけで過ごすお正月は、なんて素晴らしいのだろうかと思わずにはいられない。 目移りしてしまうほどの食事をたっぷりと頂き、アンジェリークは笑顔が止まらなかった。 こんなに美味しいものは他にないと思う程だった。 「たまにしか食べないからおせちって美味しいんだよね」 アンジェリークがのんびりと言うと、不意にアンジェリークを真摯なまなざしで見つめた。 「アンジェ」 「何、アリオス?」 「…お前、お年玉は欲しくはないか?」 「欲しいけれど…。だけど三が日のご馳走で本当に充分なんだよ。アリオスと過ごせるのが、何よりものプレゼントなんだよ」 アンジェリークはにっこりと笑うと、最愛のひとを見つめる。 「まあ、お年玉を用意したから、受け取ってくれ」 「…アリオス」 アリオスは照れくさそうなに言った後で、アンジェリークを少し真面目腐ったまなざしで見つめる。 その視線がほんのりと恥ずかしかった。 「…ほら、俺からのお年玉だ」 アリオスはスッとスマートにジュエリーケースを差し出す。 ルビー色したヴェルヴェットで出来たそれは、特別な輝きを持っていた。 「左手を出せよ」 「うん」 左手のひらに乗せてくれるのだろうと思って差し出すと、手の甲を向けろと怒られてしまった。 「どうして?」 「どうしても」 アリオスはキッパリと言うと、アンジェリークの左手を取る。 ジュエリーケースから出されたのは、天使の羽根をモチーフにした、綺麗なダイヤモンドのリングだった。 「…お前は学生だから、今すぐというわけにはいかねぇが、お前の左手薬指は俺が予約をするからそのつもりで」 アリオスの一言に、アンジェリークは大きな瞳を更に大きく見開く。 大好きなひとに予約されるなんて、泣きたいぐらいに嬉しかった。 「…有り難う、嬉しいよ。アリオスだけに予約を許可するよ。アリオスだけに…」 嬉しくて涙が沢山出て来てしまいアンジェリークは洟を一生懸命に啜りながら、何とか笑う。 「…嬉しいよ、アリオス」 アンジェリークが涙を腕で拭うと、アリオスは笑いながら、指先で拭い直してくれた。 「…アリオス、有り難う…。物凄く嬉しかったよ…」 「それは俺も嬉しい。ちゃんと幸せにしてやるから、着いて来いよ」 「うん。私もアリオスをめいいっぱい幸せにするから着いてきてね!」 「…解った…」 アリオスは苦笑いを浮かべながら、ゆっくりと頷いてくれる。 これからはふたりでスタートだ。 それを教えてくれる日だった。 |