*Sweet Whiteday*


 もうすぐホワイトディ。
 アンジェリークに何をプレゼントしようかと色々と考えるが、いつも食べ物ばかりを思い付いてしまう。
 アンジェリークが幸せそうにスウィーツを食べている顔が、アリオスは好きだ。
 アンジェリークの好きなガレットを山程買ってやるのも良いだろうし、たらふく夕食を食べさせるのも良いだろう。
 だが、形に残るものをプレゼントしたいという思いもある。
 アンジェリークが好きなスウィーツとアクセサリー。
 その方向でアリオスは考えることにした。

「あ、マシュマロ! そろそろマシュマロ入りのココアのシーズンが終わってしまうなあー」
 アンジェリークはカフェに置かれているマシュマロを見ながら、残念な気分で呟いた。
 ホワイトディのシーズンだからか、マシュマロのお徳用パックや、綺麗にパッケージされているプレゼント用のマシュマロが飾ってある。
 だがアンジェリークが見ているのは、徳用のパッケージだ。
「格安だから買おうっと。マシュマロは焼くと本当に美味しいんだよね」
 アンジェリークはほくほくした気分になりながら、マシュマロを手に取る。
「俺が払う」
 アリオスはスマートに言うと、サッと支払ってくれた。
「有り難う」
 アンジェリークは嬉しくて満面の笑みを浮かべると、アリオスを見た。
「マシュマロってなんか共食いみたいだな」
「何で…?」
「だって、お前の頬ってそんな感じだろ…?」
 アリオスは苦笑いを浮かべながら、アンジェリークの頬をふんわりと触れた。
「…何だか嬉しいような恥ずかしいような嫌なような変な気分…」
 アンジェリークが素直な気持ちを言うと、アリオスは笑った。
「確かにな」
 アリオスはフッと笑うと、アンジェリークの手を握り締めた。
 こうして手を繋いで歩くだけで嬉しい。
 嬉しくてスキップしてしまいそうになった。
 甘いお菓子も大好きだけれども、アンジェリークにとって一番大好きなものはやっぱりアリオスだ。
 アリオスが一番。
 それは一生変わることはないだろう。
 アンジェリークはそう思った。

 アンジェリークの笑顔を見ているだけで、何でもしたくなる。
 本当は甘やかせてはいけないことぐらいは解っているのだが、それでもあの笑顔見たさについ甘やかせてしまう。
 アンジェリークの素直な気質も、柔らかな優しさも、天然だと思ってしまうほどに可愛いところも、大食いのところまで総て愛しい。
「もうすぐホワイトディだね。街にお菓子が溢れるから大好きな季節なの。クッキーだとかマシュマロだとか…」
「お前は年がら年中甘いお菓子のことばかりを考えているんじゃねぇのか?」
「失礼ね。そんなにしょっちゅうは考えていないわよ」
「そうか?」
「そうです」
 ふたりでじゃれあいながら、アリオスのマンションへと向かう。
「マンション着いたら、マシュマロ焼いて食べるよ」
「火事にならねぇように気をつけろよ」
「はい」
 アンジェリークの笑顔は、アリオスには天使に見える。
 その名前の通りだ。
 いつまでも離したくはない。
 そのためにもアンジェリークにはいつまでも笑顔でいさせたいと、アリオスは思っていた。

 ホワイトディのスウィーツとして、アリオスはアンジェリークが好きなガレットを山程買い求める。
 そしてアンジェリークに似合うジュエリー探しにとりかかった。
 アンジェリークはその名前の通り、イノセントなものが似合うとアリオスは思っている。(恋人の欲目かもしれないが)
 アンジェリークに似合うジュエリー探しは骨が折れた。
 なかなかアリオスが納得いくようなものが、見つからなかった。
 アンジェリークが着けるものだから、最高に可愛く似合うものをプレゼントしてやりたかった。
 アリオスは様々なジュエリーショップを探して、ベストなものを見つけた。
 アンジェリークの名前にはぴったりな、天使の羽根をイメージしたものだ。
 天使の羽根をモチーフにしたジュエリーは、アンジェリークの雰囲気にぴったりだ。
 ピアスとリング。それぞれにとても可愛い。
 ピンクトパーズの石とプラチナのコントラストも素敵だった。
 箱に綺麗に入れてラッピングをして貰うと、アリオスはほんのりと嬉しい気分になった。
 スウィーツとジュエリー。
 アンジェリークはどちらをより気に入ってくれるだろうか。
 出来たらジュエリーを気に入って欲しかった。
 アリオスの想いが込められているのだから。

 ホワイトディの日、スペシャルなデートだから、アンジェリークはいつもよりもお洒落をした。
 アリオスが気に入ってくれたら良い。
 アリオスと逢う時は、綺麗だと思って貰いたかったから。
 スペシャルデートの日だからと、アリオスは家までアンジェリークを迎えに来てくれた。
 それがとても嬉しい。
 何だかお姫様になったような気分だったから。
 アリオスは車で迎えに来てくれ、レオナードの店まで連れて行ってくれた。
 今日はホワイトディ用のスペシャルメニューを出してくれているのだ。
 以前はこのようなイベントには一切乗らない、オヤジ好みのレストランだったが、エンジュと付き合うようになってからというもの、シーズンイベントには必ず企画メニューが出るようになった。
 それがかなり好評であることを、アンジェリークも知っている。
 アンジェリークにはこういうイベントメニューが嬉しかった。

 アリオスとふたりで、レオナード特製のホワイトディメニューを楽しむ。
「本当にレオナードさんの作るご飯は本当に嬉しいし美味しいよ」
「あいつは酒と料理に関しては天才だからな」
「そうだね。私もそう思うよ」
 アリオスと顔を見合わせながら、お互いにくすりと笑う。
 温かくて美味しいホワイトディメニューだ。
 アンジェリークが大食いであることを知っているからか、いつもサービスで大盛りにしてくれていた。
「…あ…。アリオス、レイチェルとエルンストさんだよ…」
 視線を移動させると、レイチェルとエルンストが幸せそうに微笑んでいる。
 それがアンジェリークには嬉しかった。
「やっぱり大切なイベントはレオナードさんのお店だから」
「そうだな…」
 アンジェリークはほんわかとした気分になりながら、アリオスを見た。
「ようこそおふたりさん」
 レオナードがわざわざ給仕をして顔を出してくれる。それが嬉しい。
「楽しんでいってね! アンジェ!」
 エンジュも幸せそうに笑っている。
「有り難う」
 ふたりが幸せを振りまいてくれた後、アンジェリークはにっこりと微笑んだ。
「さてと、バレンタインのチョコレートのお返しはちゃんとしなくちゃな」
 アリオスはそう言うと、かなり大きな箱を差し出してくれる。
 箱を見た時から、アンジェリークが密かに期待していたものだ。
「有り難う…!」
「天使の庭園特製ガレットのスペシャル詰め合わせだ」
「嬉しい!」
 アリオスのプレゼントは本当に嬉しい。
 アンジェリークはにんまりと微笑んだ。
「有り難う、嬉しいよ」
「どう致しまして」
 アンジェリークは箱ごと抱き締めて、夢見心地になる。
「…後、これ」
 アリオスは咳払いをすると、アンジェリークに小さな箱を渡してくれる。
 これには乙女心がときめいた。
「…有り難う…。開けても良い?」
「ああ」
 アリオスの了解を得て、アンジェリークは静かに箱を開ける。
 そこにはピンクトパーズがあしらわれたピアスとペンダントが入っていて、しかも天使がモチーフだった。
「有り難う…」
 アンジェリークは泣きたくなるぐらいに嬉しくて、涙を浮かべながら微笑む。
 最高のホワイトディになったよ…。
 アンジェリークは心からそう思った。



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