Dreaming Banquet


 明日はとても可愛がってくれた女性の結婚式。アンジェリークの気合いも自ずから入る。
 アリオスに艶やかに輝くように、特別なシャンプーをして貰ったり、軽いエステもしてもらう。勿論、本業であるカットをしてもらうのも忘れてはいない。
 あのスーパー美容師アリオスが恋人でなければ、マンツーマンでここまではとてもでないが出来ないだろう。
 早目に閉店したサロンの中で、甘いビューティフルタイムを過ごしていた。
「おまえの肌ぷにぷにだな」
 肌のマッサージを念入りにされながら、アンジェリークは少し不満そうな顔をする。
「えっ!? 太ったかな?」
 頬をむちっと抓られて、更に不機嫌な表情になった。
「もうっ! いひゃいっ! アリオスっ!」
「くっ、おまえの肌がそれだけむにむにで気持ちが良いってことだろ? 吸い付くみてえだもんな。餅肌、餅肌。羽二重餅みてえ」
 マッサージを受けながら、少し嬉しい。
「ホント!?」
「ああ。おまえはどんなモデルにも負けちゃいねえよ」
 嬉しさがじわじわと沸き起こり、思わずにんまりと笑ってしまった。
「相当、おまえの肌は強靭だよな。だって、”結婚式出席合宿”て称して、俺のところに一週間も泊まっていて、毎日寝不足なのに、こんなに肌は綺麗なんだからな」
 アリオスは感心するとばかりに、何度も頷く。
「合宿提案したのもアリオスだし…、寝かしてくれなくて、寝不足にさせているのもアリオスじゃないっ。アリオスだって、よくあれだけ頑張って仕事しているのに、…その…」
 これ以上は恥ずかしくて言えなくて、アンジェリークは口をもごもごとさせた。
「夜もあんなに頑張れるか…?」
「もうっ! アリオスのバカっ!」
 ぷんすかと真っ赤になって怒るアンジェリークが、可愛くてしょうがない。
「おまえは俺のストレス解消だからな。中々ふたりきりになれねえんだから、たまにはこんな合宿のやり放題もいいじゃねえか」
「たまにはじゃないじゃない…。アリオス、毎週じゃない…」
 はにかむアンジェリークを見るのもまた可愛い。アリオスは顔を近付けると、低い声で囁いた。
「…おまえだって慶んでいるじゃねえかよ。すげえ可愛い表情でな?」
 アリオスの囁きは流石に恥ずかしくて、アンジェリークは真っ赤になって顔を背ける。
「もう…っ! アリオスのえっち!」
 その表情が余りにも可愛すぎて、アリオスはついむらむらきてしまう。
「…なんて表情するんだよ…。したくなっちまうだろうが…」
 深い声での低い囁きは、余りにもセクシィで、アンジェリークは胸が甘く掻き乱された。
「…もう、バカっ! アリオスのスケベっ!」
「今すぐここでしてえ」
 ぎゅっと抱きしめられて、アンジェリークは嬉しいような困ったようなそんな気分になってしまう。
「…おうちに帰ってからなら…」
 恥ずかしそうに言うと、アリオスが喉を鳴らして笑った。
「オッケ。デコルテまでしたら、後は一緒に風呂に入って、全身マッサージしてやるからな? 覚悟していろよ」
「…もう…」
 言葉では怒ってはいても、アンジェリークの声は艶を帯びたものになっていた。
 デコルテのマッサージが始まる。当然エステなので、専用のケープの下にはー上半身は何も着けてはいない。
「おまえの肌はやっぱりすげえ綺麗だな…」
「んんっ…」
 首筋から肩にかけてマッサージをされ、余りにもの気持ちよさに、アンジェリークは甘い声を上げずにはいられなかった。
「あっ…!」
 アリオスの手が胸を掠める。官能的な痺れが全身を走り、アンジェリークは思わず身震いをした。
「何て声を出しているんだよ…」
 アリオスはもう堪らないとばかりに、しっかりと抱きしめてくる。その声は、完全にアンジェリークを欲している声だった。
「エステはこれで終わりだが…、もう、我慢出来ねえぞ…」
「ダメ…。お家に帰ってからじゃないと…。ここだったら、何だか…」
 アンジェリークもアリオスに抱かれたいぐらい肌がざわついている。だが、どうしてもこれだけは譲れなかった。
「…解った。家についたら速攻な?」
「うん」
 甘いキスをした後、とりあえずは帰る準備をすることにした。


 翌朝、昨日の甘い行為の鈍いけだるさの中、準備を始める。アリオスは結婚式の準備も請け負っているので、結局は朝早くから、メイクをすることになった。
「夕べは結構寝られると思ってたのに、アリオスってばあんまり寝かせてくれなかったから、眠いじゃない…」
 アンジェリークは拗ねるように言ってはいるが、その肌はぴかぴかのつるつるだ。
「だけど、肌はすげえ綺麗なんだからな。心配するな。化粧も良く映える」
「うん…」
 アリオスにメイクされるのは、やはりどきどきする。男の人にメイクされるというのは、どうしてこんなに胸が高まるのだろうか。
 キスの時よりもドキドキしながら、アンジェリークはメイクをしてもらった。真剣なアリオスはやはり素敵だ。
「よし、後はおまえのルージュだけだな」
「うん」
 ルージュを塗る仕草が、一番ドキドキとする。
 アリオスに顎を上に向けられて、ゆっくりと丁寧にルージュを塗った。
「アンジェ、最後の仕上だ」
「うん」
 アンジェリークだけのティッシュオフのやり方は、アリオスの唇で直接行う。
 キスとは違った官能的な仕草だ。
「ほら、出来たぜ。支度して行くぞ」
「うん」
 ふたりは仲良く、式の会場であるレストランと教会が隣接された会場に向かった。


 アンジェリークはアリオスと一緒だったお陰で、花嫁の支度の一部始終が見られて、ある意味嬉しい。
 真剣に花嫁にメイクをするアリオスが、とても素敵に思えた。
「ロザリアさん、凄く綺麗です!」
 「ふふっ、アリオスのお陰かしらね。アンジェちゃんもとても綺麗よ」
 花嫁であるロザリアは、本当に感動するほど美しかった。
 アンジェリークはうっとりと見つめながら、感動の余り泣いてしまう。
「おい、今からおまえが泣いたらどうする?」
 苦笑しながら、アリオスはアンジェリークの涙を拭ってやる。その姿がほほえましくて、ロザリアは優しい笑みを浮かべていた。
 式が終わり、レストランでの披露パーティーにふたりは参加した。
「凄く綺麗だわ、ロザリアさん」
「花嫁は一番輝いているからな」
 アリオスの言葉に、アンジェリークは最もだとばかりに頷く。
「おい、ブーケトスがあるぜ。行って来いよ」
「うんっ!」
 独身の女性たちに混じって、アンジェリークは一生懸命腕を延ばして待ち構える。
 ブーケを取ったものが次に結婚する。そんな伝説がくすぐったい。
「はいっ!」
 背中を向けて、ロザリアがブーケをトスする。まるで行方等最初から解っていたように、アンジェリークに向かって落ちてきた。
「わーい! アリオス、取ったよ!」
 ぴょんぴょんと跳ねながらブーケを見せるアンジェリークに、アリオスは甘く笑いながら近づく。
「よかったな」
「…うん。凄く嬉しい…。だってアリオスのお嫁さんに早くなりたいもの…」
 アンジェリークは少し涙ぐみながら、アリオスにもたれ掛かった。
「おい、涙は本番まで取っておけよ」
 アリオスは笑顔と同時に、アンジェリークの唇を優しく奪った-------
コメント

友人の結婚式前日に書いたものです。
かなりあまあまになりました(笑)
エトワールでふたりが結婚してたらいいなあ。





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