やはり忙しい年上の恋人を持っていると、なかなか会うことができない。 それでも大好きだから幸せだけれども、同じ世代の友達と同じように、いっぱいラブラブして、いっぱい一緒にいたいもの。 逢えない時は本当に逢えなくて、彼の家に押しかけたくなる。 けれどもそんなことをすれば迷惑がかかるのは十分に判っているから、あえて行かない。 悶々としながら連絡を待つのも、すっかり馴れてしまった。 ふいに携帯が鳴り、慌てて見るとただの迷惑メール。 「あ〜あ」 アンジェリークはがっくりと肩を落として、恨めしそうに携帯電話を指で弾いた。 続いてすぐに着信音が鳴り、アンジェリークは再びときめいた。 今度こそはアリオスだ。 慌ててメールを見るとアリオスからで、心が浮上していく。 ”今日は定時に帰られそうだ。メシ食いに行こうぜ。事務所で待ってる。アリオス” メールを読むだけで、アンジェリークは顔がにやける。 時間を見ると午後五時すぎ。 アリオスの仕事も定時ならそろそろ終わる頃だ。 アンジェリークはごろごろとしていた躰を起こして、もつれた髪を素早く梳かす。 早く逢いたいが、これぐらいの身嗜みはしなければならない。 後はグロス効果のあるリップクリームを塗って完成。 自分の部屋から転げるように出て、母親にアリオスと一緒に出かける旨をきちんと伝える。 アンジェリークの両親はアリオスとの仲を認めてくれている。 父親は複雑な気分だが、しっかりとアンジェリークを幸せにすると宣言したアリオスに信頼を置いてくれている。 「お母さん、いってきまーす」 「はい、いってらっしゃい。泊まるんなら、ちゃんと連絡なさいよ!」 「うん」 アンジェリークは頬を染めて頷くと、家を後にした。 アリオスの事務所までは電車で10分ほどだ。 電車で揺られている間も、アンジェリークは心臓が大きく高まるような気がした。 「アリオス! 来たよ!」 事務所に入るなり元気良く挨拶をすると、彼はいつもの魅力的な微笑みで迎えてくれる。 「待ってたぜ、アンジェ」 「私こそ待ちくたびれた」 くすりと笑うと、いつものようにアリオスに抱き付いていく。 少し煙草の味のするキスを受けた後、アンジェリークはアリオスにくっついて離れない。 「旨いものでも食いにいくか。久し振りだしな。まあドライブがてら」 「嬉しい!」 喜んだものの、アリオスの目の下にうっすらとくまがあるのが判る。 「・・・ねぇ、疲れてない?」 心配で訊いてみると、強く抱き返された。 「おまえとやったら、栄養ドリンクより効果あるぜ?」 「もうっ!」 はにかみながら怒るように言うが、それがまた愛らしい。 「いっぷくしたら、行くぞ」 「うん!」 煙草を吸うアリオスを見ていると、何だか幸せな気分になる。 やっぱりこうして側にいるのが嬉しいな・・・。 「行くぜ」 「うん! 久し振りのデートだからたっぷりと甘えちゃうもんね〜!」 「お手やわらかにな」 ふたりで戸締まりをした後、アンジェリークはアリオスの腕を取って、まずは駐車場に向かった。 街には車でいつものようにドライブ。 いつもと同じ風景で見慣れているというのに、アリオスといると素敵な空間に思える。 「何笑ってんだ? 何かいいことでもあったか?」 「うん、ちょっとね」 アリオスといるだけで、とても素敵な気分になれるのが嬉しい。 アリオスといるだけで世界は薔薇色になる。 「今日は何を食べにいくの?」 「ふぐ懐石。たまには贅沢させてやるよ」 「嬉しい!!!」 飛び上がって喜ぶものの、本当はアリオスと一緒だったらどこだってよかった。 ふぐ懐石は割とカジュアルな雰囲気があったので、アンジェリークは安心した。 てっさ、てっちり、ふぐ寿司、から揚げ・・・。 ふぐづくしでたっぷりと堪能する。 「ホント、美味しい〜!!」 「季節外れだが、旨いだろ?」 「うん!」 素直に返事をしたが、本当はアリオスと一緒なら何だって美味しいのだ。 アリオスは食通で、つきあい始めてから色々なレストランに連れていってくれ、様々な味を教えてくれた。 アリオスは建築家で、斬新な建築の数々で色々な賞を得ている。 テレビでも”リフォームの美剣士”として有名で、仕事の依頼がひっきりなしだ。 アンジェリークはどこにでもいる女子高生で、ほんとうに普通だ。 背伸びをしていると感じることもあるが、アリオスに上手く包みこんで貰っている。 「メシ食ったら、少しドライブでもするか?」 「うん! 楽しそう!!」 久し振りにあったのだから、もっと恋人に甘えたい。 時間が早く過ぎるのがどこかもどかしかった。 食事が済んだ後、アルカディアの港に向かってゆっくりと進む。 夜の街の様子が薔薇色から切ない色になっていく。 港に着き、対岸の夜景を見つめる。 時折、一際と目立つ観覧車がイルミネーションの明かりが色を変えて、そこはかとなく幻想的で美しかった。 「綺麗ね・・・」 「ああ」 アリオスは煙草を口に銜えると、ライターで火を付ける。 ライターの炎はアリオスの横顔を艶やかに照らしている。 それがとても美しい。 カチリという音と共に、アンジェリークは見つめていた。 「きっと朝焼けも綺麗なんだろうな・・・」 本当はずっとアリオスと一緒にいたい。 だが、激務が続いているせいか、アリオスはどこか疲れた様子だ。 煙草を吸いながら、少しぼんやりもしている。 きっと疲れているのだろう。 朝まで一緒にいたいっていうのは、わがままだと思う。 観覧車の時計を見ると間もなく10時だ。 「アリオス、そろそろ帰ろうか?」 アリオスはふと時計を覗くと頷いた。 「そうだな。行こうか」 アンジェリークの手を引っ張って、アリオスは車に戻る。 すぐに車は出発をして、夢の時間は終わりを告げる。 これでまた頑張れそうな気がするな・・・。 アリオスの車が、不意に見掛けない駐車場に止まった。 「ここは?」 「部屋に入ってからのお楽しみ」 ただアリオスに連れられるまま車を出て、上に向かう。 そこがホテルだと言うことは、フロントに行って判った。 すぐにアリオスが手続きをしてくれて、部屋へと案内される。 部屋は最上階。 ロケーションも素晴らしい。 部屋に入ると、アンジェリークは驚いた。そこからは、先ほどいた港が一望できる。 「アリオス…」 感激の余り彼の名前以外に言うことは出来ずに、少し涙ぐむ。 「ずっとほったらかしにしてたからな。今日から明後日の日曜日まであまあまデーだ。一緒にいようぜ、ここでな」 「アリオス…」 ぎゅっと背後から抱きしめられて、甘いときめきの余りに息が出来ない。 「…ありがとう…」 アンジェリークはアリオスの感謝を込めて呟くと、彼の手を強く握りしめた。 ずっと年上のアリオスとの恋は、同級生たちの恋と比べると、同じ時間はもてないかもしれない。 だが、こんな素敵なひとときを過ごせるから、お互いに我慢が出来るのだ。 私、凄く、凄く幸せです。 神様。 私にとっても素敵な恋をくれて、どうも有り難う。 ふたりは甘いときめきを感じながら、しばらくは夜景を見入っていた------ |
| コメント 久々にあまあま短編。 建築家アリオスのシリーズです〜。 |