Crazy In Love


 アリオスとの11の年の差が気になる今日この頃。
 時々考えることがある。アリオスがせめて同じ世代だったらって。

 同級生カップルが仲睦まじく帰っているのを横目で見つめながら、アンジェリークはまたひとつ溜め息をつく。
 もう、どれぐらい恋人(アリオス)と逢っていないだろうか。
「どうしたのよ、アンジェ、そんなに溜め息ばかりついてさ☆」
「…うん。前にアリオスに逢ったのは何時かなって考えてただけ」
「そうか…。アリオス、仕事忙しいもんね〜。でも、携帯とかでは話しているんでしょう?」
「メールが多いかな」
 逢いたさを滲ませながら呟くアンジェリークに、レイチェルも眉根を寄せる。
「…うちも似たようなものだからさ、気持ちは解るよ。エルなんてさ、一度研究に没頭したらそれまでだもん。宇宙にロマンを感じるエルも大好きだけれど、たまにはワタシにもロマンを感じてよってカンジ」
 レイチェルの笑顔に、アンジェリークは癒されると同時に反省をした。
 彼女も全く恋に関しては同じ立場にいるのだから。
「そうよね、元気出さなくっちゃ!」
「そうそうそのいき!」
 二人は顔を見合わせて微笑み合う。そうすると少し元気が出てきた。
「ねぇ、女の子ふたりでさ、ケーキでも食べに行かない?」
「うんっ!」
 ふたりは、デートに行けない代わりに、いきつけのケーキショップでしこたまケーキを食べることにする。
 結局、ケーキショップでは、ふたりして”恋人ののろけと愚痴”を肴に、会話とケーキをたっぷりと愉しんだ。
「”女子高生”って肩書が外れたら、何が何でも”おしかけ”る予定だもん。アンジェのとこは、逆にアリオスが奪いにきそうじゃん」
 これにはアンジェリークも頬を赤らめてしまう。
「そうかな…。だったら嬉しいけど」
「そうだって! だってアリオス大人げないじゃん。アンジェが絡むとさあ。だって、この間になんて、アナタとこうやってケーキ食べてたら、アリオスったらイキナリ来てさ、アナタをワタシから奪っていったじゃない〜!」
 かなり前の話なのに、レイチェルは相当良く思っていないらしく、蒸し返して来た。
「あの時はまだ、アリオスに時間の余裕があったもの。今はないから…」
 レイチェルは不意にアンジェリークの顔を覗き込んできた。
「アンジェ、アリオスといつえっちした?」
 これにはアンジェリークは真っ赤になってレイチェルを見る。
「アリオスの誕生日にしたっきりだから…、二週間ぐらい前。それから逢ってないし…。メールだけだし…。最近は、月に一回か二回会えるか会えないぐらいだから…」
 しょんぼりとするアンジェリークに、レイチェルは切なくなった。
 逢いたいという気持ちが、心の中を駆け巡る。
「だったら、この週末さ、アリオスのところに押しかけたら?」
「押しかける…」
「そう。押しかけて、居着いちゃたらいいのよ。だったら多少なりとも会えるよ」
 レイチェルの提案が妙案とばかりにアンジェリークは頷く。
「うん、そうする!」
アリオスのマンションに押しかける。そう考えるだけで、アンジェリークは楽しい気分になるのだった。


 週末、ケーキと二人分の食材を買って、アンジェリークは堂々とアリオスのマンションを訪れた。
 会えないから、強行突破である。
 アリオスのマンションはオートロックだが、暗証番号は解っているし、合鍵も持たせて貰っている。
 ただ、今までは、アリオスに気を遣っていたのと、恥ずかしかったせいもあり、中々使わなかった。
 ゆえに今日が初の実行日である。
 寒々としたアリオスの部屋に入るとびっくりした。今は本当に眠りに帰っているだけなのだろう。
 割にきちんとしているアリオスの部屋が、殺伐としていた。
「しょうがないな。少し片付けてあげるか!」
 ぱたぱたと掃除機をかけながら、洗濯乾燥機を回す。その間にお風呂を沸かしてやったりする。
「たまには疲れを取って貰わないとね」
 鼻をすすりながら、アリオスの為にあらゆる準備をした。
 夕食はアリオスの大好きなシチューだ。
 片づけた後は、シチュー作りに没頭した。
 掃除も温かな食事の仕度も終わったのに、一向にアリオスは帰ってこない。
「遅いな…」
 アリオスの好きなシチューを作って待っているというのに、相手は中々帰って来ない。
「アリオスのバカ…」
 拗ねるように呟きながら、アンジェリークは頬杖をつく。
 テレビなどを見て時間を潰していたものの、11時を回ったところで切なくなった。
 もうすぐ帰らなければならないギリギリの時間だ。

 どうして帰って来ないのよ〜!

 社会人だというのは解っているし、忙しいのも理解しているつもりだ。
「ホント、過労死するよ〜」
 アンジェリークが切なく叫んだときだった。
 ドアが開く音がして、アンジェリークは子犬のようにぱたぱたと玄関に向かう。
「おかえりなさい」
「来てくれてたんだな」
 アリオスの顔を見るだけで、先ほどまでの恨めしい気持ちはどこかへいってしまった。
「初合鍵使ってくれたんだな。待ってたぜ」
「…ずっと逢いたかったもん…」
 ぴとっとアンジェリークはアリオスにくっつく。
「アンジェ…」
 背伸びをすると、屈んできてキスをしてくれた。
 触れるだけのキスだが、僅かにアルコールの味がする。
 その途端、アンジェリークの顔色が変わった。
「…アリオス、お酒飲んで来た?」
「敏感だな。ああ、付き合いでな」
 アンジェリークは少し口を尖らせると、哀しそうに拗ねる。
「そういうのでいつも忙しいの? 飲みに行くから、アンジェと会えないの?」
「仕事だからな」
 アリオスはきっぱりと言い切ると、アンジェリークを見つめた。その眼差しはどこかきつくて怖い。
「分かれよ、それぐらい」
 アリオスの言葉は明らかに子供扱いしているのが、気に入らなかった。
「どうせ子供だから解らないもの! 私はこんなにアリオスに逢いたいって、毎日逢いたいって思っているのに、飲みに行く時間は取れても、私との時間は取れないの?」
 言っているうちに涙が出て来た。アンジェリークは切ない想いをアリオスにぶつける。
「どうせ…大人みたいに物分かり良くないもん」
「アンジェ」
 名前を呼ばれて顔を上げてアリオスを見ると、その表情はかなり怖かった。

 怒られる…!

 そう思った瞬間に、アリオスに強く抱きすくめられた。
 息が出来ない。
「アンジェ、俺だって好きで接待絡みの飲み会に行っているんじゃねえんだ。その辺りも解ってくれ」
「解ってるよ…、でも…。精神的に大人にならなくっちゃならないのは解っているけど、そうできないの!」
 苦しげなアンジェリークをアリオスは更に腕に力を込められる。。
「俺だっていつでもおまえに逢いたいし、抱きたいって思ってるぜ。何とか気持ちを抑えているだけだ」
「…アリオス」
 涙で濡れた瞳を向けると、瞳にキスをしてくれた。
「アンジェ、おまえは自分のことを”ガキ”だからって済ましているが、俺だって”ガキ”だぜ。おまえに逢いたくて気が狂いそうだったんだからな」
 甘く囁くなり、アリオスはアンジェリークを抱き上げる。
「家まで送ろうと思っていたが、変更だ。今夜はうちで泊まれ。どれぐらいおまえを求めているか、教えてやるよ」
「教えて」
 アンジェリークはアリオスにベッドにそっと寝かされた。

「------アンジェ、俺だって完全な”大人”じゃねえよ。俺がまだまだ成長過程のガキだってこと、教えてやるから」
「うん」
 いつもなら帰らなけれならない時間に、大好きな男性としっかりと愛をたしかかめる
 逢えない日々の後の甘い時間の訪れに、アンジェリークは至福を感じて楽しんでいた。
コメント

久々に甘甘です〜





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