Standing By


 もうすぐ大学受験。
 結婚したから、成績が下がっただとか、入試に失敗しただとか言えやしない。
 だからこそ、ずっと勉強は頑張ってきた。
 アリオスはお仕事がかなり忙しいみたいだけれども、ずっと勉強に付き合ってくれている。

「だいたい、今日のノルマは果たしたな。少し休憩するか」
「うんっ!」
 アンジェリークはしっかりと頷くと、お茶の準備を始めた。美味しいお茶でリラックスするのが良い気分転換になる。
 もちろん、アリオスがそばにいるだけで気分もかなりリラックスする。
 結婚してから成績が下がったと言われるのが嫌だったから、一生懸命頑張っている。
 もともとは大学が決まって高校を卒業してから結婚することになっていたが、ふたりがお互いにこれ以上離れたくなくて、早めに結婚してしまったのだ。
 だからこそ、結果をきちんとした形で残さなければならない。
 だから勉強は頑張っている。
 とは、言うものの。
 そこは甘い甘い新婚さん。
 お茶を飲んでリラックスするよりも、お互いの存在でリラックスする。
 アリオスはいつものブラックコーヒー、アンジェリークはハーブティだ。
「アンジェ、今日も頑張ったな?」
「だってアリオスが勉強を教えてくれてるから、調子いいもの」
「こっちの勉強もしなくっちゃならねえな?」
「やんっ・・・」
 結局はこのお茶の時間を境に勉強は終わり、アリオスの淫らな勉強の時間が始まる。
 そのまま愛し合ってしまい、勉強の時間が崩れてしまうことがあった。
 そして、王立大学の推薦入試に万全を期すために、アリオスが出てくれた懇談の日の夜、ひとつの提案が出された。
「もうひと踏ん張りすれば、おまえの推薦入学は確実のものとなるみてえだ。おまえの推薦が確実になるまでえっちはお預けにしねえか?」
「えっ!?」
 いきなりのえっち禁止令にアンジェリークは息を飲まずにはいられない。
「俺だっておまえと毎晩やりてえよ。だが、ちゃんと結果を出さないとな。俺たちの結婚生活はこれから長いし、その間でセックスレスな時間だって僅かだ。ほんの少し我慢すればいいんだからな?」
「うん、そうね」
 アンジェリークは切ないが合意することにする。
 アリオスの言う通りに、少し頑張れば推薦を受けることが出来るだろう。
 結婚を早めた以上は、何も言われないように、きちんとしなければならない。
 アンジェリークは頷き、アリオスの提案を受け入れることにした。

 提案したのは、確かに自分で、少しの我慢ならやっていけると思っていた。
 だが、健康でしかも妻にメロメロなアリオスにとっては凄まじく辛いものとなっている。。
 キスも余り深いものにするとしたくなってしまうので、我慢するしかない。
「アリオス、大丈夫?」
「何がだ?」
「うん、あの・・・」
 今まであんなに激しく求めていたというのに、急にしなくなったというのは、アリオスにとっては酷などではないかと思う。
 すぐにアンジェリークが言わんとすることが判り、アリオスは小さく溜め息を吐いた。
「大丈夫だ。おまえは今、受験のことを考えろ」
「うん・・・」
 くしゃりと栗色の髪を撫でられて、アンジェリークは少ししゅんとした。
「うん。アリオスがそこまで頑張ってくれているから、頑張る」
「ああ、頑張れよ」
「うんっ!」
 アンジェリークは素直に頷き、もっと頑張れるような気がした。
 アンジェリークのためなら、何だって我慢できる。
 それはアリオスが心からアンジェリークを愛している証しであった。
 お互いの愛でバランスを取って、思う心で支えあう。だが、アンジェリークはどこか集中出来ない自分を感じる。
 もう少しだから、我慢が出来ると思いながらも、どこか切ない。
 アリオスの温もりを凄く感じたい。愛しているから、肌と体温を共有したい。

 私って・・・、おかしいのかな・・・?

 夏だから暑いせいか、アリオスはシャツをはだけさせながらソファに腰をかける。
 雑誌をぱらぱらと読んでいる姿は、本当に欲情してしまう。

 カッコいいなあ、アリオス・・・。
 アリオスをこのまま押し倒したいって思ってしまう・・・。

 むらむらときてしまい、妄想花盛りなアンジェリークである。
 なかなか勉強が手に付かず、溜め息が出る。
「どうした、アンジェ。何か判らねえことでもあるのかよ?」
「ううん、大丈夫」
 アンジェリークは首を振った後、小首を傾げて少し考え込むような表情をする。
 その表情が愛らしくて、アリオスもまたドキリとする。
 本当に艶やかさと可愛らしさが同居するような見事な表情であった。
 欲望が突き上がってくるのを感じる。
 アリオスはそれを抑え込むのに全神経を集中するしかなかった。

 その夜、ふたりとも余り眠れなかった。
 欲望が更に高まり、抑えるのが困難になってしまう。
 同じベッドで眠っているのに、躰で愛し合うことが出来ないのは、かなり辛いことであった。
 アリオスがベッドから静かに出ていくのが判る。
 アンジェリークはその後をそっと追うと、リビングで煙草を吸っていた。
 欲望を抑えるために吸っているのが判る。
 一服終わると、リビングのカウチで横になる姿を見て、アンジェリークは泣きたくなった。
 どうして、こんなに愛し合っているのに肌を合わせるこてが駄目なんだろうか。
 アンジェリークの我慢は限界にきていた。
「アリオスぅ・・・」
 泣きながら切ない声を上げるアンジェリークにカウチから起き上がる。
「アンジェ?」
 名前を呼ばれるともうどうしようもなくて、アリオスの胸に飛び込んでいった。
「アリオス〜、もう我慢できないの・・・。アリオスとしたいの・・・。そうじゃないと、勉強なんてはかどらないの。アリオスの温もりが感じられないと出来ない・・・! 何もできない!」
 泣きじゃくる柔らかな温もりを、アリオスはしっかりと抱き締めてくる。
「・・・アリオス・・・」
 ようやく与えられた温もりに、本当に泣きそうになっていた。
「アンジェ、したいのはおまえだけじゃねえんだぜ?」
 甘く囁かれた後、いきなり熱くて堅い下半身を押しつけられる。
「あっ・・・」
「もう我慢できねえ・・・」
 そのまま抱き上げられ、ベッドへと運ばれた。


 烈しくも甘いふたりの時間を過ごした後、ベッドでしっかりと抱き合う。
「お互いに我慢するとかじゃなく、少し自制するぐらいにしような…。今回のことですげーそれが判った」
「うん…。私もむやみやたらに我慢したら、逆に集中力がなくなるって判ったわ…。
 これからは、ね?」
 真っ赤になりながら小さな躰をすり寄せると、アリオスが答えるように抱きしめてくれる。
「ああ。おまえが大学決まるまで、少し自重するが…、今夜は溜まってるから判ってるだろうな?」
「やん!」
 このままアリオスに組み敷かれてアンジェリーク情熱に溺れる。
 お互いのことを思うあまりの今回の騒動だが、またふたりの仲が深まったような気がした-----
コメント

エロとそうじゃないのの間です(笑)





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