*家族の絆*


 玄徳の世継ぎは安泰だと、誰もが囁きあっている。

 玄徳は、花以外の妻を娶ることなくきているが、世継ぎは安定していた。

 息子がふたりに娘がふたり。

 今、そして5人目がお腹にいる。

 花は若いから、まだまだ子供は望めそうだ。

 しかも、玄徳が結婚してからずっと花にメロメロなところもあるかもしれない。

 花とずっと同じ部屋で生活をしているのだから当然だ。

 花しか愛せないのだろうと思うぐらいに、深く愛している。

 それは傍から見ていても解ることだった。

 玄徳は、子供よりも花のほうが好きなのだろう。それぐらいに妻に対しては甘くてメロメロなのだ。

 これには周りの者たちは、あてられっぱなしといったところだ。

 

「母様ーっ!」

 花の姿を見るなり、子供たちがかけてくる。

 本当にかけがえのない子供たちだ。

「みんな」

 子供たちを一気に抱き締めて、花は幸せな気分になる。

 こんなにも子供たちを持つことになるとは、花は思いもよらなかったが、今はもっと子供が欲しいと思うぐらいだ。

 玄徳の子供たちだからかもしれない。

 愛する人との子供たちは、花にとってはかけがえのない宝物となっている。

 本当に可愛い。

「おい、お前たち、勉強の時間ではなかったか?」

 玄徳に声を掛けられて、子供たちは顔を上げる。

「父様!」

 子供たちは父親に群がって行く。

 玄徳とも理想的な親子関係を築いてくれているのは、花にとっても嬉しいことで、それがまた幸せだ。

「勉強は終わったよ! 父様、お仕事は?」

「少し休憩だな。お前たちの顔を見に来た」

「一緒に遊ぼう!」

 娘に声を掛けながら掛けられて、玄徳は目を細める。

 そこには子供たちへの温かな愛情が刻まれていた。

「じゃあ少しだけな」

「うんっ!」

 子供たちは誰もが笑顔になって幸せそうな顔をする。

 やはり、ほんの僅かな時間であったとしても、父親とは一緒にいたいようだった。

 子供たちが玄徳と遊んでいる間、花は椅子に腰掛けて様子を眺める。

 見つめているだけで、なんて幸せなのだろうかと、花は思った。

 理想的な夢のような家族を持つことが出来た。

 子供の頃は、いつもこうして笑顔でいられるような家族を作りたいと、夢見ていたものだ。

 それは花の家族がそうだったからに、他ならない。

 花がのんびりと見ていると、子供たちがまた寄ってきた。

「母様、一緒に遊ぼう!」

「おい、おい。花には、お前たちの妹か弟がお腹の中にいるんだからな。余り無理をさせてはいけない」

 玄徳はやんわりと子供たちを嗜めるように言う。

 玄徳は過保護過ぎると花自身が思ってしまうぐらいに、とても大切にしてくれる。

 それはとても幸せなことなのだ。優先順位はいつも花であることも、嬉しかった。

「大丈夫ですよ、玄徳さん」

「しかし、加減は必要だからな」

「確かにそうですね」

 花は苦笑いを浮かべた後、子供たちの遊びに加わった。

 

 楽しい時間が終わり、玄徳とのふたりきりの甘い時間が始まる。

「今日もお前を子供たちに独占されてしまったからな。ここからは俺がたっぷりと独占させて貰うから」

 まるで子供のようなことを言う玄徳が可愛いと思いながら、花はフッと甘い笑みを送った。

 いつも子供たちと張り合っているような気がする。

 花のこと限定なのではあるが。

「子供たちも可愛いが、俺もお前と沢山の時間を一緒に過ごしたいからな」

「私も沢山過ごしたいですよ」

「そうだろう?」

 玄徳は花に甘えるように抱き締める。

「…子供たちも少しは俺に譲ってくれても良いのにな」

「何をですか?」

「…お前と一緒にいる時間に決まっている」

 玄徳はキッパリと言い切ると、花を更に強く抱き締めてきた。

「子供たちよりも、玄徳さんとふたりきりの時間のほうが圧倒的に多いですよ」

「…それでも、足りない」

 玄徳はストレートに言い切ると、花の胸に顔を埋めた。

「子供たちは可愛い。本当に最高の子供たちだと思っている。しかし、お前の愛情に関しては、好敵手というか…」

「…玄徳さんったら…」

 これには花も笑いながら、玄徳を抱き締めた。

「子供たちも可愛いですが、玄徳さんが大事ですから。私たちはずっとこれからも一緒です。だけど、子供たちは独立をしてしまいますからね。今のうちだけです」

 花がくすりと笑っても、玄徳は抱き締めてくる。

「…花…。こうしてふたりでいられる時間が俺は最高に嬉しい。これからも、子供たち以上に、お前を求めるのは目に見えていそうだ」

 玄徳は花を堪能するかのように躰をしっかりと密着してくる。

「愛している…。お前をたっぷりと愛したい…」

 お腹の中に子供がいても、玄徳はそんなことはお構いなしのようだ。

 いつもそうなのだ。

 そこまでストレートに求められているのも、とても嬉しいことだと思う。

 愛するひとと濃密な時間半たっぷりと取りたかった。

 

 玄徳としっかりと愛し合った後、花は腕の中でまどろむ。

 この瞬間は、花が玄徳に最も甘えられる時間でもあるのだ。

 髪を撫でられて、躰を愛しそうに撫でられる。

そ れが嬉しい。

「…花…、俺はこうしているだけで凄く幸せだ。また明日から頑張っていけると思う」

「私もそうですよ。玄徳さんのそばにいるのが、一番です。色々な選択肢はありましたが、それでもここに残って暮らすことを選んで良かったと思っています」

「有り難う…花…」

「いいえこちらこそ、有り難うございます」

 花ははにかみながら言うと、玄徳のたくましい躰をしっかりと抱き締めた。

「本当はお前と四六時中一緒にいたいところだがな」

「玄徳さんったら」

「子供たちには、お父様の原動力はお母様であることを、ちゃんと言い聞かせておかなければならないな」

「もちろん、私の大きな原動力も玄徳さんですから」

「ああ」

 玄徳は花をギュッと抱き締めたまま離れない。

 花もやはり離れたくはなくて、玄徳をしっかりと抱き寄せた。

「…お腹の子供が驚いてしまうかもしれないが…」

 そう言いながらも、毎回のように花を愛する。

 玄徳に心から愛されている。

 それが嬉しくて、花は思わずにっこりと笑った。

 

 子供たち以上に花と過ごしたがっている玄徳を見ると、誰もがにやにやと笑っている。

 そして、最高に愛することが出来る相手に巡り逢えることが出来るのならば、他に女性など必要ないのだということを、誰もが教えられている。

 特に玄徳のような地位であっても、妻としっかりと愛し合って子供が出来るのであれば、それで大丈夫なのだということが解った。

 政略的な結婚よりも、愛するひとと結ばれた方がどんなにか幸せになれる。

 それを教えられたと、軍の中枢部は言っては、感心していた。

 必要なのは愛だ。

 ただ、それだけなのだ。

 玄徳夫妻を見ていると、それを感じる。

 そのせいか、玄徳に他に妻を娶るようにと進言する者もいなかった。

 

 今日は朝から花と玄徳は子供たちの様子を見つめる。

 玄徳はずっと花の手をしっかりと握り締める。

「父様と母様は本当に仲が良いですね」

 長男の阿斗が嬉しそうに声を掛けてくる。

「ああ。俺が一番大切なのは花だからな」

 玄徳が堂々と言うのを、阿斗は笑顔で頷く。

「解っています」

 年の割にはしっかりとしている息子は、幸せそうに笑顔で頷く。

 家族に囲まれて、花も玄徳も最高に幸せだった。



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