*愛の証*


 公瑾の隠し子騒動があってからというもの、花は、公瑾との子供を益々意識をするようになってしまった。

 いつか、あの子のような子供をそばにおくことになるのだろうか。

 それはそれでくすぐったい幸せを得られそうだった。

 花は、想像するだけで、甘い幸せに浸ることが出来る。

 あの時は、公瑾の本当の子供なのかと、焦ったりもしたが、そうではなく、本当にホッとしたのも事実だった。

 公瑾との子供ならば、男の子が良いと、花は思う。

 最初の子供は、公瑾によく似た男の子が良いと、花は思った。

 それを考えるだけで、どうしようもないぐらいに、笑顔になれた。

 公瑾との子供のことばかりを、ここのところ、ずっと考えてしまう。

 それだけで幸せなのだから、しょうがなかった。

 

 隠し子騒動は、本当に肝が冷えた。

 身に覚えは、少なくともないとは思っていたが、あれほど自分に似ていたこともあり、少しだけ不安になったのも確かだ。

 不安。

 それは、突然、父親になってしまう不安というよりは、花がいなくなることが不安だった。

 花は傷つきやすく、そして潔癖症だ。

 だからこそ、不安になったのだ。

 花がいなくなることを。

 もし、花がいなくなってしまったら、世界は変わってしまうだろう。

 花がいなくなれば、いつ死んでも良いとすら、思ってしまうかもしれない。

 それほどまでに、公瑾にとっては大切な女性だった。

 だからこそ。

 公瑾は、花を本当に大切にしたかった。

 花を安心させたい。

 二心はないことを。

 一生、花を大切にすると。

 そのためにしなければならないこと。

 それを色々と考える。

 素晴らしき軍師と言われる割には、自分の恋心の軍略がからきし苦手なのだ。

 特に、花に関しては。

 花には邪心などか存在しないから、余計に難しかった。

 逆をいえば、だからこそ、花を選んだのだが。

 花は純粋に公瑾を思ってくれている。その心根を愛しているのだ。

 花を安心させるには、妻にするしかないことは、公瑾も充分過ぎるぐらいに分かっている。

 それと同時に、子供を持つのが良いかもしれないと、公瑾は思う。

 ふたりの子供。

 それに、公瑾もそろそろ子供を持つには良い時期だ。

 男子が良いかもしれないが、花によく似た女の子も良いかもしれない。

 想像するだけで、公瑾は胸の高まりを覚えた。

 花とのあいだに子供が欲しい。

 必ず可愛い子供が生まれるのは、分かっている。

 そう考えると、いてもたってもいられない。

 花のところに駆け付ける。

 花とのあいだにが欲しい。

 こんなことをいきなり言ったら、軽蔑されてしまうだろうか。

 公瑾はほんのりと不安を覚えながらも、駆けてしまう。

 もちろん、それには婚儀ありきではある。

 花を妻にすることがあるのだが。

「花、いますか?」

 いきなり執務室を開けたものだから、花は驚いて、目を見開いた。

「どうかされましたか?公瑾さん?」

「あ、あの、あなたにお話が」

 花はキョトンとしながら、小首を傾げている。この姿を見るだけで、公瑾はドキリとする。

 花は何て可愛いのだろうかと。

 こんなにも可愛い女人は他にいないのではないだろうか。

「花、あの、ですね」

「はい?」

「あなたと私の子供が欲しいです」

公瑾は、包み隠さず、あるがままを言う。

「あ、あの、こ、公瑾さんっ!?」

 花は公瑾のいきなりの申し出に、目を丸くする。耳まで真っ赤にして、照れる姿が可愛くて堪らない。

「可愛いひとですね。あなたは」

「こ、子供って」

「はい。私はあなたとふたりの子供が欲しいです」

 公瑾がうっすらと微笑みながら言うと、花は深刻そうに押し黙った。

「花?」

「……公瑾さんのご実家で、後継ぎのこととかがあるからですか?」

 花は思い詰めたような表情で言う。

「いいえ、そのようなことはございませんよ」

 公瑾はキッパリと否定する。

 花と自分の血を引いた子供が、純粋に欲しいのだ。

「だったら、どうして……?」

「純粋にあなたと私の血を分けた子供が欲しいだけなんですよ」

 公瑾は、フッと柔らかな笑みをつい浮かべる。

 花と家族を作りたい。

 強い絆を持つ家族を。

 もちろん、花が同意をしてくれればだが。

 公瑾の話を聞きながら、花ははにかんで、何処か優しい笑みを浮かべている。

 本当に愛らしい笑みだ。

 公瑾は、思わず抱き締めてキスをしたくなる。

「……それなら、とても嬉しいです……」

 花は恥ずかしそうに言った後、公瑾に笑顔を向けた。

 花がここに残ってくれたのは、自分の為だと公瑾は思っている。

 花は、公瑾と一緒にいるために、ここに残ってくれたと。

「有り難うございます、花。あなたを幸せにしますよ、花」

「公瑾さん……」

 これだけは、言える。

 自分は花の為に存在しているのだ。

 だからこそ、強く言える。

 花を幸せにすると。

「婚儀の準備をしなければなりませんね……。これは急がなければと思っていますよ。ですが、子作りは始めなければなりませんね、早速」

 公瑾の言いように、花は戸惑いを見せた。

 今までは、花を驚かせないようにと、口づけ止まりにしておいた。

 不用意に驚かせることは出来ないと、思っていたからだ。

 だが、それももう限界だ。

 我慢が出来ないぐらいに、公瑾は花を欲している。

 誰よりも愛しいからこそ、欲望を抑えることも、欲望が限界にまで燃え上がることにもなる。

「公瑾さん、あ、あの、子、子作りって、あ、あの」

 初で何事にもすれていない花の様子を見ると、公瑾は益々愛しく思ってしまう。

「あなたは何も心配されなくても、大丈夫ですから……」

 公瑾は、花の円やかな頬に指先を伸ばす。すると花は、蕩けるような表情を浮かべながら、目を閉じた。

 その表情は蕩けるようで、とてもきれいだ。

 このまま、寝所に連れて行きたい衝動にかられた。

「花、今日から私たちは同居をしますよ。良いですね?」

 結婚前の同居。

 だが、結婚が決まっているから良いではないか。

 公瑾はそう思いながら、愛しい花を見た。

 花は、戸惑うというよりは、恥ずかしそうにしていた。

 それがまた可愛い。

 まんざらでもなさそうな花に、公瑾はホッとした。

「では決まりですね。今日から一緒に住みましょう」

 公瑾はにこやかに言う。

 すると花は、小さく頷いた。



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