*夏衣*


 夏になり、花の漢服も薄くなり、なまめかしくなる。

 玄徳軍の軍師として、公瑾に従軍していた頃は髪を下ろしていたが、今は綺麗に結い上げている。

 白い項が見えて、大人びた美しさを帯びている。

 本当に綺麗だ。

 つい花の首筋や横顔ばかりを見てしまう自分は、どうしようもない男だと思う。

 他の女性にはそんな気は少しも起こらないというのに、花だけは特別なのだ。

 花を見つめているだけで、抱き締めたくてどうしようもなくなる。

 そのまま寝台に連れ込んでしまいたくなるのだ。

 冷静沈着を信条としている公瑾にとっては、今までにないことだ。

 今夜は仲謀が部下たちを労うための宴だ。

 花はいつもよりも綺麗に着飾っている。

 尚香や大喬、小喬がいるというのに、そこにいる誰もが、花に見惚れているのが分かる。

 気に入らない。

 花は自分だけのものだ。

 花を熱いまなざしで見つめて良いのは自分だけだ。

 激しい独占欲が公瑾の内側に芽生える。

 花は誰にでも分け隔てなく優しくて、軍の中ではとても人気がある。

 どちらが上だとか下だとかは関係無く、誰に対しても平等に接するのだ。

 それだからだろうか。

 花を密かに想って、憧れている者も多いと聞いている。

 だが、流石に都督夫人には手を出す者はいなくて、誰もが遠くから見ている。

 それは解っている。

 どう考えても、花が自分のものであることも。

 花を見つめると、視線に気付いたのか、にっこりと微笑んでくれる。

 本当に美しい。

 このまま花を連れ去りたい。

 ここで、花を連れ帰ったら、からかい好きの仲謀軍の仲間に何を言われるかが分からない。

 それが恥ずかしくもある。

 なのに躰には欲望がふくれあがり、ジンジンするぐらいに熱くて、公瑾は息が詰まりそうになった。

  頭を冷やさなければならない。

 最悪だ。

 あの冷静沈着な周都督が、こんなにも妻に溺れているなんて。

 本当に格好が悪い。

 公瑾は頭を冷やす必要があると思い立ち上がる。

「少し涼んできます」

「公瑾さん…?」

 花が切なそうにこちらを見ている。

「直ぐに戻りますから」

 公瑾は賑やかな宴会場から廊下に出る。

 花をひとりにしておくことは余り良くないとは思ってはいたが、離れなければならないと、痛切に感じていた。

 このままそばにいたら、本当に花を襲ってしまいそうだ。

 しょうがない。

 夜風に躰を晒して、熱を取らなければならない。

 本当になんて格好が悪いのだろうかと思う。

 無駄盛りで血気盛んな若い者ならともかく、花とは既に結婚しているというのに。

 抱く度に、笑顔を見る度に、益々花に溺れてしまう。

 こんなにも誰かを愛したことは他になかった。

 花を愛し過ぎるぐらいに愛している。

 花が美しく着飾るだけでこの様なのだ。

「…私もまだまだだということでしょうか…」

 公瑾が溜め息を吐いて夜空を見上げると、気配を感じた。

「公瑾さん、こちらにいたんですね」

 花の愛らしい声を聞いて、公瑾は驚いてしまった。

「……!!!」

 花がにこやかに愛らしい笑みを浮かべて、こちらを見ている。

 冷や汗が出る気分だ。

 宴会場から出て来た花は、愛らしさと艶やかさを同居させていて、とても綺麗だ。

 公瑾は再び欲望が高ぶるのを感じた。

 非常に危険な状態だ。

 花に触れられたら、このまま邸へと連れ去りたくなる。

 一応、役目を果たしたから、このまま帰っても構わない。

 だがあからさまだと、またからかわれるのではないかと、公瑾は危惧する。

 周公瑾が妻に夢中なただの男だということが知られ、誰もが微笑ましいとばかりに見守ってはくれる。

 それはそれで構わないのであるが、からかわれるのが面倒臭かった。

「ひとりだと寂しかったんです。公瑾さんがいないと寂しいですから。ここで一緒に涼んでも構いませんか?」

 花は笑顔で言うと、寄り添ってきた。

 こんなにも可愛いことを言われてしまったら、もうどうでも良くなる。

 からかわれても構わない。

 公瑾は花の手を取ると、そのまま力強く取って城を出る。

「公瑾さん…!?」

「帰りますよ、花」

 公瑾はそれだけを言うと、花を連れて邸へと戻った。

 

 邸に戻ると、直ぐに寝室へと向かう。

 公瑾が無言でいるものだから、花は少し不安そうにしていた。

 花をいきなり寝台に押し倒す。

「あっ、公瑾さんっ!」

 いきなりのことで、花はうろたえている。

 だが、もう止めることは出来ないのだ。

「…あなたがとても艶やかだから悪いんです。責任を取って頂きたい」

 公瑾はキッパリと言うと、花の唇を深く塞いだ。

 花の可憐な唇がぷっくりと膨れ上がるぐらいに吸い上げて、舌で口腔内を愛撫する。

 花が口づけに夢中になって、躰から力を抜くと、衣服を総て脱がせた。

 髪を解くと、本当に色香がある。

 公瑾は、鼓動が激しくなるぐらいにドキドキしながら、花の白くて滑らかな肌に唇と舌を這わせていった。

 首筋から鎖骨にかけて、紅い所有の花を咲かせる。

 当分消えないように、音を立てて、しっかりと吸い上げた。

 柔らかくて気持ちが良い乳房に触れると、花の肌が大きく震える。

 公瑾は、花の柔らかな感触を楽しみながら、張り詰めるまで揉みしだいてゆく。

 花が甘く喘ぐ度に、もっと愛撫をして感じさせたいと思った。

 胸の先端の薔薇色の蕾を指先と舌先でくすぐると、快楽のせいか、花の肌は滑らかに熱を帯びた。

 綺麗過ぎて、夢中になる。

 公瑾は唇で吸い上げたり、舌先で転がしたりして、花の蕾を味わい尽くした。

 花が恥ずかしそうに動く度に、なまめかしい水音が響く。

 そっと熱い場所に手を伸ばすと、既に花は公瑾を受け入れる準備を整えていた。

 指先で中心に触れるだけで、熱い愛の蜜が溢れてくる。

 堪らないほどに高まった公瑾の欲望が、我慢出来ないと悲鳴をあげていた。

 花の入り口を指先でほぐすと、既に公瑾が欲しいと呻いているようだった。

 花の中にたどり着きたい。

 公瑾は思い切り花の脚を広げると、待ち構えている熱い場所に、欲望と愛の楔を打ち込んだ。

「…んっ、ああっ…!」

 花は思わず声を上げる。

 苦しさと快楽が入り交じった声だ。

 胎内はとても熱くて、公瑾の形になる。直ぐさま締め付けられて、頭がくらくらするぐらいの快楽を感じた。

 花は公瑾にただしがみついて、細い腰を揺らしている。

 これも公瑾が教えたものなのだ。

 公瑾は花の奥にたどり着き、胸を震わせながら一旦、大きく深呼吸をすると、この上なく優しく動いた。

 動く度にふたりの密着度が増して、更なる一体感を産む。

 爆発する前の快楽は狂おしいぐらいに素晴らしかった。

「…っ…!」

 花は本当に素晴らしい。

 自分のために作られた躰ではないかと思わずにはいられなくなる。

 突き上げは激しさを増して、公瑾は、もう欲望をこれ以上止めることが出来なくなる。

 公瑾は渾身の力で花を突き上げる。

 花の躰が快楽に弛緩する。

 そのタイミングで、公瑾は熱い欲望を花の胎内に吐き出し、快楽の素晴らしさに躰を震わせた。

 

 花を抱き締めながら、公瑾は幸せを噛み締める。

「…疲れてはいらっしゃいませんか? 今夜のあなたはとても美しかったから…」

「大丈夫です。嬉しかったですから…」

「…花…」

 公瑾は花の言葉が嬉しくて、再びくちづける。

「…愛していますよ、花…。あなたの美しさは罪です…」

「…公瑾さん…」

 夏の夜はまだまだ長くなりそうだった。

 



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