*外は吹雪*


 孟徳とふたりで馬に乗って領地の視察と、交渉ごとを済ませに行って来た。

 どちらも上手く行き、ふたりは無事に帰路についた。

 孟徳とふたり、一頭の馬に乗って出かけるのも悪くはない。

 冬だから、お互いの躰が密着して温め合えるのも良かった。

 少しドキドキするが、もう結婚をした身だ。

 こうして密着をしていても堂々としていられるのが良かった。

「無事に終わって良かったですね」

「そうだね。近いところだから、共は着けずにいたが、正解だったかもしれないな」

 孟徳は何処か嬉しそうに言っている。

「正解…?」

「君とこうしてのんびりとふたりきりで帰ることが出来るから」

 孟徳が堂々と言うものだから、花は甘くはにかんでしまった。

「私も…ふたりのほうが嬉しいですけれど…」

 照れながら花が言うと、孟徳も嬉しそうに笑った。

「君の世界に“新婚旅行”というのがあるって聞いて、一緒に行きたかったからね。仕事めあったから、完全な休養とはいかなかったけれどね」

「だけど、嬉しかったです」

「うん。俺も楽しかった。これでまたしっかりと仕事が出来るよ」

 木枯らしが吹いてきて、花は思わず躰を小さくする。

「寒くなってきましたね…。少し…雲行きが怪しくなってきたような気がします…」

 花は曇ってきた空を見上げる。

 最近、空を見て星を読んだり天気を見たりすること学んでいる。

 だから、ある程度の天気の崩れは分かるようになった。

 空を見上げれば、雪雲がと見える。

「吹雪が来そうですね…」

「…そうだね…。そんな感じだ。しかも…近い…」

「…はい…」

 ふたりが空を見上げると、雪が降り出す。

「とうとうきたか…。急ぐよ、花」

「はいっ」

 孟徳は巧みに馬を操り、走らせる。

 だが、ふたりが馬に乗っている以上は、余りスピードを出すことが出来なかった。

 そのうちに吹雪が酷くなる。

「これは何処かで雪やどりをしたほうが良いな…」

「そうですね」

「この近くに小屋があったような気がするけれど…、あった…、あの向こうだ」

 この吹雪の中なのに、孟徳は直ぐに小屋を探し出したようだった。

 これには花は驚く。

「孟徳さんって目が良いんですね」

「目が良くないと、先を見通すことは出来ないからね。だから戦には目が良いことは必要だ」

 孟徳は物理的な目は勿論だが、恐らくは未来を見通すという意味でも目が良いのだろう。

 ようやく花にも小屋が見えてきた。

 花はホッとして孟徳に掴まった。

 ここで吹雪をやり過ごしてから、一気に許に向かえば良い。

 小屋の前で馬を止める。

 馬を入れて自分達も中に入ると、いっぱいになってしまった。

 吹雪をやり過ごすことは出来るものの、場所はかなり狭い。

「本当に雪を凌ぐだけだね。寒さはそんなに防げないね」

「そうですね…」

 じっとしていると震えてしまうぐらいに寒い。

 孟徳は花を抱き寄せると、かなり密着をしてきた。

 密着されるだけで、かなりドキドキしてしまう。

 大好きな孟徳だからこそ、余計にそう感じてしまうのだろうと、花は思った。

 孟徳と密着していると、安心するのと同時に、喉がカラカラになるぐらいに甘く緊張してしまう。

「…花は柔らかくて…温かいね…」

「孟徳さん…」

「とても温かくて心地良いよ」

 孟徳は低くささやくように言うと、花の背中を柔らかく撫でる。

 触れられるだけで躰が震えた。

 寒さによる震えなのか、それともそれ以外のものなのかは、花には分からなかった。

 ただ鼓動が激しいリズムで甘いダンスをする。

 くらくらしそうだった。

「…花…寒いのかな? 震えているじゃないか…?」

「寒いのかもしれませんね…」

「…うん。そうだよね…。俺もこれでは物足りないと思うぐらいに寒いよ…」

「…はい…」

 物足りない。

 だからもう少しお互いの躰を密着させるのだろうか。

 すると孟徳は、花の漢服の袷に手を入れてきた。

「…やっ…」

 思わず甘い声をあげてしまう。

 孟徳は、花の滑らかな肌を慈しむかのように触れた後で、服を器用に脱がしてしまう。

「あ、あのっ!?」

 いきなりのこと過ぎて、花はうろたえてしまう。

 だが孟徳は平然と続けた。

「肌と肌を合わせたほうが温かいことは君も知っているだろう?」

 孟徳は甘く微笑むばかりだ。

 花はどうして良いのかが分からなくて、孟徳を見た。

「…ふたりでしっかりと抱き合って温めあおうか…」

「…孟徳さん…」

 孟徳の甘い言葉には逆らえない。

 孟徳は素早く自分の衣服を脱ぎ捨てると、花を引き寄せてギュッと抱き締めた。

 肌が密着する。

 とても温かい。

 沸騰するぐらいに温かい。

 これならば吹雪でも、充分に耐えられる。

 孟徳と肌を直接合わせるのは、なんて気持ちが良いのだろうかと思う。

「…花…温かいね…」

「温かいです…」

 花は目を閉じると、孟徳に躰を総て預けた。

「花…この状況は拙いよね…」

「…え…?」

 いきなり下半身を押しつけられて、花は驚いてしまった。

 孟徳の熱くて硬い欲望が押しつけられて、花は息を呑む。

「…だから拙いことになるんだよ…」

 孟徳は苦笑いを浮かべると、張り詰めた花の柔らかな胸に触れてきた。

「…やっ…!」

「…君もやっぱり俺が欲しい…?」

 欲望に満ちた艶のある声で囁かれると、花は堪らなくなった。

 こんなにも艶のある声は他にはないから、五感以上を刺激してくる。

「…花…」

 孟徳は欲望を滲ませた声で名前を呟くと、固くなったバラ色の蕾に触れてくる。

 いつもよりも敏感な蕾に触れられて、花は呻き声を上げた。

 孟徳は満足そうに微笑むと、花の潤った場所を柔らかに触れて来た。

 触れられるだけで敏感になり、花は更に熱く潤わせる。

「…声は我慢しなくても良いよ…。誰も聞いていないから…」

「…孟徳…さんっ…!」

 孟徳は欲望が満ち溢れるキスをしてくる。

 そのまま花は欲望に満ちた時間に溺れていった。

 孟徳が欲しい。

 このまま躰をもっと深く重ねたい。

 突き上げる欲望に、花はどうして良いのかが分からないまま溺れていく。

 寒さなんて関係ない。

 それどころか、外が吹雪であることを忘れてしまう。

 ただふたりの世界がそこにはあるだけなのだ。

「…花…」

「孟徳さん…っ!」

 恥じらいなどは消え去り、後に残るのは熱い情熱だった。

 

 愛し合ってしっかりと躰が温まった頃、吹雪は消え去っていた。

「さてと…この状態だったら、許までは直ぐに帰れそうだね」

 先ほどまでの熱い時間はなかったかのように、孟徳は爽やかに言う。

 花は恥ずかしくて、ただ俯くことしか出来なかった。

「さてと行こうか」

「あ、はいっ」

 まだ愛し合った余韻が残っていて花は上手く歩けない。

 花がぎこちない動きをしていると、孟徳は苦笑いを浮かべた。

「…攻め過ぎてしまったかな…?」

 艶やかに囁かれて、花は恥ずかしくてこの上ない。

「そんな表情をしていたら許に急がなくてはならないね。邸の寝台で、君を休みなく堪能したくなるよ…」

 孟徳の官能的な囁きに、花は拗ねるしかない。

「…もう…」

「じゃあ、行こうか!」

 孟徳はさらりと言うと、花を馬に乗せてくれる。

 もうすぐ許だ。

 ふたりにとっては素晴らしい場所。

 花にとっては第二の故郷になった。

 再び馬を走らせる。

「早く着いて、君をしっかりと抱いて眠りたいよ」

「孟徳さん…」

 花は返事の代りにギュッとその背中を抱いた。

 きっとこの甘い時間は忘れないと思った。



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