*星のささやき*


 この世界に来て、星を見る重要性を教えて貰った。

 それまでは、何かを考えながら星を見るなんてことは、一度もなかった。

 星を見れば天候を知ることが出来て、その上、未来のことも知ることが出来るのだという。

 星をきちんと知って、読むことが出来るのならば、戦略を立てることも可能なのだ、

 軍師としてこの世界にいる以上は、花は星を正確に読むことが出来るようになりたかった。

 その重要性は孔明から学んだのだから。

 星を見て、軍略のために役立てる。

 それは表面的なもので、本当は自分の未来が知りたいのかもしれない。

 いずれは帰ろうと思ってはいるが、本当はあのひとのそばにいたいから、未来にその可能性があるのかだとか、そんなことばかりをつい考えてしまう。

 花の世界にも星占いがあるし、その結果に一喜一憂したものだ。

 普通に見ていた頃は、どちらかといえば恋の結果よりも、今日、全体の運勢のほうが気になっていた。

 恋なんてしていなかったから。

 だが、今は。

 少しでも大好きなひとのそばにいたい。

 役に立ちたい。

 それだけで星を見たいだなんて邪なことを考えてしまっている。

 この世界に来て、星を見る重要性を教えて貰った。

 それまでは、何かを考えながら星を見るなんてことは、一度もなかった。

 星を見れば天候を知ることが出来て、その上、未来のことも知ることが出来るのだという。

 星をきちんと知って、読むことが出来るのならば、戦略を立てることも可能なのだ、

 軍師としてこの世界にいる以上は、花は星を正確に読むことが出来るようになりたかった。

 その重要性は、公瑾と孔明から学んだのだから。

 星を見て、軍略のために役立てる。

 それは表面的なもので、本当は自分の未来が知りたいのかもしれない。

 いずれは帰ろうと思ってはいるが、本当はあのひとのそばにいたいから、未来にその可能性があるのかだとか、そんなことばかりをつい考えてしまう。

 花の世界にも星占いがあるし、その結果に一喜一憂したものだ。

 普通に見ていた頃は、どちらかといえば恋の結果よりも、今日、全体の運勢のほうが気になっていた。

 恋なんてしていなかったから。

 だが、今は。

 少しでも大好きなひとのそばにいたい。

 役に立ちたい。

 それだけで星を見たいだなんて邪なことを考えてしまっている。

 その前に漢字を読めるようにならなければならない。そうすれば、孟徳の手伝いを色々と出来るのだから。

 沢山、沢山、お世話になった。

 沢山、沢山、助けて貰った。

 花は、ただ孟徳の役に立ちたかった。

 星見を上手く出来るのは、孟徳軍の中では誰がいるのだろうか。

 ここにはもう師匠はいないのだから。

 漢字を勉強して、その後に星見の勉強をしたら良いだろうか。

 そんなことを考える。

 孟徳のサポートがしたい。

 いつも甘やかせてくれる大好きなひとのために。

 どうすれば助けることが出来るのか。

 花はそればかりを考えていた。

「…あれ…、花…」

 孟徳の声が聞こえて、花は振り返った。

「孟徳さん」

「こんな夜遅くに女の子の一人歩きは良くないよ。うちの中とはいえ、何が起きるか分からないからね」

「大丈夫ですよ。孟徳さんのところだし、邸から出ているわけではないですから」

「それはそうなんだけれどね。だけど君の世界に比べたら、やはり危険はあるよ」

 孟徳は優しい声で呟くと、花を見つめる。

 優しく明るくて軽い雰囲気の瞳なのに、何処か暗い影が滲んでいる。

 不安が滲んだ迷子の子供のような光を持っている。

 花はその瞳の光が気になる。

 ずっとそばにいたら、いつかはその影を払拭することが出来るだろうか。

 そんなことを考える。

「花ちゃん、どうして空を見ていたの?」

「星を見ていました」

「星?」

 孟徳は不思議そうに見つめる。

「星見が出来たら、もっと孟徳さんのお手伝いが出来るかなあって思っていたんです」

「…有り難う…。確かに星見は兵法と同じぐらいに大切だからね」

「孟徳さんは、星見が出来るんですか?」

「んー、ある程度はね、だけど、俺は軍師よりも読めないよ」

「そうですか」

「だが、少しは教えてあげられるけれどね。文若に言ったら、先ずは漢字を覚えろって言われるかもしれないけれどね」

「そうですね」

 花は苦笑いを浮かべると、孟徳を見た。

「花ちゃんが学びたいって言えば手を貸すから安心して」

「有り難うございます」

 孟徳に色々と教えて貰えるならば、きっと楽しく星見を覚えることが出来るだろう。

 花はそのようなことをのんびりと思った。

「星見が出来たら軍略の他にも、人生が見られるんでしょうか? 私たちの世界にも星を見て人生を占うものがあるんですよ。みんな、恋占いが大好きでした」

「恋占い…ね…」

 孟徳はちらりと花を見た。

「花ちゃん、君は恋占いをしていたの?」

「いいえ。興味が無かったので」

 花はあっさりと言った。

「興味がないんだ」

「はい」

 キッパリと認めると、孟徳に笑われてしまった。

「そうか。だったら占いの何を見ていたの?」

「何か良いことないかなあって」

 花の言葉に、孟徳は笑いを滲ましている。

「好きなひとはいなかったけれど、素敵なひとと出会いがないかなあって、それを考えてしまいました」

 花はくすりと笑うと、孟徳を見た。

 すると何処か暗い煌めきが瞳に滲んでいる。

「…好きなひとはいなかった…。過去形? 今は好きなひとがいるんだ」

 からかうのではなく、何処か冷たさと影がある声だ。

「あ、あの…」

 目の前のひとが好きだとは言えないし、何処か暗い影のある孟徳に、本当のことは言いにくかった。

「…玄徳…とか…?」

「違いますよ。感謝はしていますけれど」

 花のあっけらかんとした言葉に、孟徳は悩むように腕を組んだ。

「…そうか…。星を見たいのは、未来の自分が見たい? 帰りたいと思うから?」

 孟徳はちらりと厳しいまなざしで見つめて来る。

 鋭く、何処か疑っているようなまなざしだ。

「…花…。君はうちに沢山の貢献をしてくれている。ずっとうちにいてくれたら良い。帰る心配なんてしなくても良いから」

 孟徳の言葉は何処か厳しい。

「…有り難うございます」

「帰ることなんて考えなくて良い。君はここにいて良い。ここにいる理由を見つける為に、星見を勉強しなくても良いんだ」

 孟徳は花を見る。

 どうしてそんなにも寂しそうで冷たい瞳になるのだろうか。

 時折見せる孟徳の瞳の切なさに、花は泣きそうになった。

「…君がここにいる理由はちゃんとあるから。いる理由を探さなくても良いんだ。本当にずっとここにいて良いから」

「有り難うございます…、孟徳さん」

 花は孟徳の横顔を見つめながら思う。

 花は時空の迷子になってしまったが、本当の意味での迷子は、孟徳なのかもしれないと思った。

「花ちゃん、深刻に考えなくても良い。君は充分今のままで、俺には役立っているから」

「はい。有り難うございます」

 頭をポンと触れられる。

 孟徳は微笑んでくれたが、花は胸がひどく痛んだ。

 孟徳は花を優しいまなざしで見る。

「早く眠ると良い。明日は冷えるよ。恐らくは」

 孟徳は夜空を見ながら呟くと、そのまま行ってしまう。

 その背中を見つめながら花は複雑な気分になる。

 必要とされている?

 必要とされていない?

 いくら考えなくても、花にはよく分からなかった。



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