星月学園にいた頃は、まさに青春のクリスマスだった。 生徒会の皆で、力を合わせて準備したことを今でも忘れない。 星月学園全体で、みんなでわいわいと楽しんだクリスマスは、ご機嫌で楽しい想い出。 ロマンティックかと言われたら、かなり遠い気がするのだが、それはまたご愛嬌といったところだろうか。 何処か体育会系のノリだった。 あのクリスマスも今や懐かしいものになっている。 今年はロマンティックなクリスマスを夢見ている。 だって大好きなひとと一緒に過ごすクリスマスなのだから。 2歳しか変わらないのに、強引で俺様で、大人の大好きなひと。 今年はどのようなクリスマスの奇跡を見せてくれるのだろうか。 大学生になってからの初めてのクリスマスは、とびきりロマンティックなものが良い。 冬の星座を見つめながら、素晴らしい時間が過ごせればと、思わずにはいられなかった。 「クリスマスイヴは、ドレスアップして来てくれ。お前の好きな、ロマンティックな気分を味合わせてやるよ」 一樹は携帯電話越しで甘い声で囁いてくる。 クリスマスにドレスアップ。 それだけでつい期待をしてしまう。 息苦しくて、ドキドキしてしまい、どうして良いのかが解らない。 話を聴いた瞬間から、ロマンティックは始まっているのだと思わずにはいられない。 「楽しみにしてますね、一樹さん」 「ああ。お前をとびきり幸せな気分にさせてやるよ」 「はい、楽しみにしていますね」 携帯電話を切ると、幸せがほわほわとせりあがってくる。 一樹と過ごすロマンティックなクリスマス。 想像するだけで、月子は踊り出してしまいたくなった。 クリスマスイヴ当日、月子は緊張しながらドレスアップをして、一樹を待ち構えた。 「待たせたな」 一樹は、スーツをクールに着こなした姿で現われた。 見つめているだけで、息が出来なくなるぐらいに素敵だと思う。 月子はついうっとりと見つめてしまう。 本当に一樹は完璧だ。 何処にも隙なんてないような気がした。 つい、月子は一樹を見つめてしまう。 こんなにも素敵な姿は他にはないと思わずにはいられない。 「月子、何、俺に見とれているんだよ」 「…あ…」 一樹に図星を指摘されて、月子は真っ赤になった。 「…だって、一樹会長がカッコいいから…」 月子が素直な気持ちを伝えると、一樹は力強く躰を引き寄せてきた。 「月子、お前は本当に可愛いな」 「…一樹さんっ」 いくら大好きなひとでも、抱き寄せられると恥ずかしくてしょうがない。 つい耳朶まで真っ赤にしてしまう。 「…さあ、行くぞ。お前には最高のクリスマスを味あわせたいからな」 「…嬉しいです、会長」 月子は恥ずかしいのと同時に、堂々と愛されているかとが感じられて嬉しかった。 一樹は、かつて一度連れて行ってくれたことがある、ディナークルーズ船にエスコートしてくれた。 クリスマスイヴの夜に、あの時と同じようにディナークルーズに招待して貰えるのが、嬉しかった。 ディナークルーズはやはり緊張してしまう。 特に大好きなひとが相手だと。 「後で甲板に出るか。今夜はすげえ綺麗な星が見られるだろうからな」 「楽しみです」 「俺は法学部に進んだから、星との縁が薄くなったが、お前はこれからずっと縁があるもんな」 「はい…。ずっと星と関わって生きていきたいです」 「お前らしいな。ふたりで後でゆっくりて星を見ような」 「はい」 ふたりは運ばれて来たクリスマスのスペシャルディナーを楽しむ。 周りも皆、カップルだらけで、幸せが沢山詰まっている船にいるようで、月子は嬉しかった。 前回のクルーズディナーよりも、幾分かではあるが緊張がほぐれた。 月子は甘い緊張をしながらも、食事を大いに楽しむ。 「美味しいですね、会長」 「そうだな。なあ、月子、そろそろ“会長”っていう呼び方は卒業出来ないか? 俺はもう生徒会長ではないし、お前も書記ではないんだからな」 「…解ってはいるんですれど…、つい…。癖なんですね」 「なるべく肩書きではなくて、俺は、名前で呼んで欲しいんだけれどな」 「そ、それは、慣れれば」 月子は照れ臭くて、ついしどろもどろ答えてしまう。 「お前は本当に可愛いな」 一樹は月子をからかうように言うと、その手をしっかりと握り締めてくれた。 一樹は車で来ているからと、アルコールは一切口にはしなかった。 月子もまだ未成年なので、二人揃って、ノンアルコールカクテルだ。 ふたりでメリークリスマスの乾杯をして、益々クリスマス気分を味わった。 クルーザーからは、見事に美しい夜景が見える。 人工の星で見る明かりは美しいが、何処か無機質な感じがする。 星のような暖かみが全くと言って良い程に、感じられなかった。 何だか冷た過ぎるから、月子には綺麗には見えなかった。 「夜景は見ないのか?」 「星の光のほうが、つい美しいと思ってしまいます」 「お前らしいな。だが、俺も同じように思うな」 「きっと星が好きな星月学園の生徒は皆、同じことを思うのではないでしょうか?」 「そうかもしれないな…」 一樹も夜景を見ながら、静かに頷いた。 デザートは、クリスマスらしいザッハトルテだった。 濃厚なチョコレートが美味しくて、満足いくものだった。 「美味しいですね、ザッハトルテ」 「そうだな。クリスマスにぴったりだな」 「はい」 カプチーノと一緒に食べるザッハトルテは、幸せを呼ぶ味だった。 デザートを食べ終わると、一樹がエスコートをしてくれた。 「外に出ようぜ」 「はい」 ふたりで手を繋いで甲板に出る。 素敵な一樹と手を繋ぐだけでロマンティックに過ごすことが出来る。 胸が高まり、甘い気持ちで満たされるのを感じた。 「寒くないか?」 「大丈夫です」 一樹と一緒にいるだけで、全身がポカポカとする。 「一樹会長といるだけで、温かくて気持ちが良いです」 顔がほてるから、夜風が気持ち良かった。 「やっぱり海の上から見る星々は、最高にロマンティックですね! 素晴らしく綺麗です」 月子は夜空を見上げて、清々しいクリスマスの夜に、心地良さを覚える。 「…綺麗だな…」 「そうでしょう? 星は本当に綺麗でしょう」 「俺は星のことを言っているわけじゃない。お前のことを言っている」 「…あ…」 甘さたっぷりの言葉を囁かれて、月子の心臓は激しいビートを打つ。 一樹は背中から包み込むように香穂子を抱き締めてきた。 こうして密着していると、温もりとドキドキのどちらにも反応する。 一瞬、体温よりもほんのりと冷たい唇を項に押し当てられて、月子は思わず躰を震わせた。 「あっ…」 思わず甘い声を上げると、一樹はフッと悪戯っぽさと甘い笑みを滲ませて月子を見つめた。 「メリークリスマス月子」 一樹は言いながら、月子の首に何かを掛ける。 それはペンダントで、月をモチーフにして、ダイヤモンドで彩られていた。 「綺麗…」 「ああ。お前のシンボル月と俺の誕生石を合わせている」 なんてロマンティックなプレゼントなのだろうかと思う。 月子が泣きそうになっていると、一樹は再び抱き締めてくれた。 「一樹さん、私からもメリークリスマス」 月子は一樹に小さなジュエリーボックスは手渡す。 そこにはやはり月にダイヤモンドが嵌込まれたネクタイピンが入っている。 それを見た瞬間、一樹は甘く笑う。 「俺たちは随分気が合う筈だ」 「そうですね」 ふたりは微笑むと、唇をそっと重ねる。 見守るのは星々。 輝ける美しさだった。 |