大晦日は、一樹の実家同様の神社で過ごすことになった。 こうして一樹の家族と一緒にお正月を過ごすというのは、嬉しい。 家族の一員であるということをしっかりと受け入れて貰っているということだからだ。 神社の年末準備を手伝ったり、お節料理を御重に詰めるのを手伝ったりした。 二年参りをするひとも多いから、大晦日は大忙しだ。 月子は年越しそばを、器に入れるだけの手伝いをし、中身は一樹が作った。 「俺とふたりだけで年越しをするんなら、お前に作って貰っても良かったんだが、流石に他も食べるからな」 「うん、解っているよ」 自分の料理の腕が、どうしようもないぐらいにハチャメチャなことぐらいは解っているから、しょうがないのは解る。 「ま、お前のことだ。そのうち上手くなるだろうから、余り気にするな」 「うん、頑張る」 月子は自分の手のひらを見て、頷いた。 「お茶を淹れるのは随分と上手くなったからな」 「有り難う」 一樹に褒められると、やはり嬉しい。 ふたりで年越しそばを作って、みんなで炬燵に入って食べる。 素朴で温かい家族が、きっと一樹をずっと見守ってきたのだろう。 月子はほのぼのとした温かい家族がとても素敵だと思った。 年越しそばを食べた後、二年参りの準備で、他の家族がいなくなる。 一樹と月子は、明日の朝から手伝うことになっているので、二年参りの手伝いには参加しなかった。 「ふたりきりになったな」 「うん」 「新婚だからって気を遣ってくれたみたいだ。ここは継がなかったけれど、月子が沢山子供を産んで、そのひとりが継ぐから心配するなって言っておいた」 一樹が悪びれることなく言うものだから、月子は真っ赤になった。 「…一樹さんがいないと、出来ないことだよ…」 ちらりと上目遣いで呟くと、一樹はフッと微笑む。 「解ってる。たっぷりと協力をしてやるからな。早速、うちに帰ってからたっぷりと協力をしてやるから、楽しみにしていろよ」 一樹と過ごす甘えるのには時間は、月子にとっては幸せな時間であるから、全く問題はないからか、つい素直に頷いてしまった。 「おい、お前っ! そこで素直に頷くかよっ! 普通! 可愛い過ぎてこのまま抱き締めて押し倒してしまうだろ。お前は可愛いのに程があるんだよ。ったく…」 一樹はほんのりと目の周りを真っ赤にすると、そのま月子をしっかりと抱き締めた。 すると、月子の心臓はかなりスピードを増して打つ。 「これ以上、俺の理性を崩すなよ? 本当に、家族のいる前で、お前を押し倒してしまうかもしれないからな」 そんなことを言われると、月子は益々恥ずかしくなってしまい、そのまま俯いてしまった。 「本当にお前ってヤツは…。これじゃあ、一刻も早く、帰りたくなる」 「一樹さん、ダメだよ。ちゃんとお手伝いをして帰らないと」 「解ってるよ。それぐらいは…」 一樹はバツが悪い表情を浮かべたかと思うと、そのまま月子の唇を奪った。 いつものように密度の濃いキスではなくて、軽く触れるだけの、春の陽射しのようなキスだ。 それだけをすると、一樹は早々と月子から離れてしまった。 「これ以上は無理…だからな。俺の理性が持たないから」 「はい…」 月子が苦笑いを浮かべると、やはり一樹もまた苦笑いを浮かべた。 ふたりは、大晦日の醍醐味でもあるテレビを見ながら過ごす。 すると一樹の伯母がやってきて声を掛けてくる。 「一樹、月子ちゃん、部屋にお布団を敷いておいたから、いつでも眠れるわよ。後、テレビもそちらで見られるから見たら良いよ。お風呂も沸いているから入ってね」 伯母はそれだけを言うと、また仕事をしにどちらかへと行ってしまった。 「有り難うな」 お風呂に仮眠。 たしかにどちらもそろそろ取らなければならないだろう。 「一樹さん、先にお風呂に入って」 「解った」 一樹が浴室に行ってしまい、月子は更にドキドキしてしまう。 流石に明日の朝から手伝う以上は、愛し合うことは到底出来ない。 月子は恥ずかしくてしょうがないと思いながら、一樹がお風呂から上がってくるのを待った。 「あー良いお湯だった! 月子、お前も入ってこいよ」 「は、はいっ。あ、有り難う」 月子は言われるままに、浴室へと向かった。 浴室に向かうと、いやがおうでも意識してしまう。 肌を丁寧に洗いながら、つい艶やかな想像をせずにはいられなかった。 髪を綺麗に結い上げて、用意して貰っていた寝間着を着て、先ずは先ほどのリビングに向かう。 すると、一樹がぼんやりとお馴染みのテレビを見ていた。 「一樹さん、お風呂入ったよ」 「ああ」 一樹は頷くと、月子をじっと見つめてきた。 甘くて何処か官能的すらある瞳で見つめられて、月子はどうして良いのかが解らないぐらいにときめいていた。 「部屋に戻ろうか。とりあえずは」 「うん、そうしようか…」 ふたりはしっかりと手を繋ぐと、寝室へと向かった。 寝室に入ると、いきなり布団が敷かれていて、月子は驚いてしまった。 ぴったりと布団がくっついて敷かれているのを見るだけで恥ずかしくて、月子は思わず俯いた。 「どうしたんだ?」 「何だかお布団が…」 「ああ。伯母さんはきっと夫婦だから当然だと思って敷いたんだと思うぜ」 「そ、そうなんだ」 「何照れているんだ? いつもはもっと密着しているだろう?」 「確かにそうなんだけれど…」 月子がはにかんでいると、一樹に引き寄せられてしまった。 「一樹さんっ」 「流石にここでは俺も何だと思うから…、せめてくっついていよう」 「そう…ですね…」 月子がはにかんで言うと、一樹は更に力を込めて抱き寄せてくる。 「新年になるまではこうしていよう」 「はい」 こうして一樹の腕の中で一緒にいるだけで、安心するのと同時に、かなりドキドキしてしまった。 テレビをつけると、いつの間にか歌番組から、行く年来る年に変わっていた。 「間も無く新年か…」 「…うん…」 年が変わる。 それだけで身も心も引き締まってくる。 月子は、愛する一樹に寄り添いながら、新年を迎えた。 ふたりは新年になった瞬間、唇を重ね合わせる。 新年のキスはとても神聖だ。 キスを交わしている間、月子は気持ちが澄んでゆくのを感じた。 「あけましておめでとう、今年もよろしくな」 「あけましておめでとう、一樹さん。今年もよろしく」 ふたりは新年の挨拶をお互いにしあった後で、微笑み合う。 もう一度キスをして、お互いに抱き合って、新しい年の息吹を感じ合った。 「今年は去年よりももっと良い年になるような気がするな」 「私もそう思います。きっと素晴らしい良い年になると思います」 「ああ。家族が増えるかもしれないしな。来年の今頃、ここで新しい家族と一緒にいることになるかもな」 くすぐったいぐらいに幸せな未来を想像しながら、一樹は呟く。 まるで既にその未来は確定とばかりに。 未来を見透かすことが出来る一樹のことだ。 何か感じるものがあるのだろう。 こんなにも明るい未来であるならば、月子は大歓迎だと思う。 幸せであることが約束されている未来なのだから。 「きっと今年は大吉。その通りになります」 「そうだな」 ふたりはしっかりと手を繋ぐと、そのまま眠りに落ちる。 しばしの安らいだ眠りは、素晴らしい未来を運んで来てくれる。 そう思わずにはいられなかった。 |