星月学園にいた頃は、まさに青春のクリスマスだった。 生徒会の皆で、力を合わせて準備したことを今でも忘れない。 星月学園全体で、みんなでわいわいと楽しんだクリスマスは、ご機嫌で楽しい想い出。 ロマンティックかと言われたら、かなり遠い気がするのだが、それはまたご愛嬌といったところだろうか。 何処か体育会系のノリだった。 あのクリスマスも今や懐かしいものになっている。 今年はロマンティックなクリスマスを夢見ている。 だって大好きなひとと一緒に過ごすクリスマスなのだから。 ずっと年上なのに、何処か守りたくなってしまう大好きな大人のひと。 今年はどのようなクリスマスの奇跡を見せてくれるのだろうか。 付き合い始めて、もう三年以上が経ち、月子もようやく大人と呼ばれる領域になった。 今年は“大人”になった初めてのクリスマスだ。 琥太郎と夜遅くまでデートをしても構わないのだ。 まだ学生ではあるが、成人はしたのだから。 月子は今年のクリスマスは本当にロマンティックに過ごせるのではないかと、想いを馳せずにはいられなかった。 今年のクリスマスは、大胆にも泊まりがけなのだ。 両親の許可もきちんと貰い、月子は心行くまでクリスマスを楽しむことが出来るのだ。 クリスマスは都会でロマンティックに過ごすのも良いが、郊外で星を見ながら過ごすのは最高の贅沢だ。 今回のクリスマスは、星を見ながら過ごすのだ。 お洒落をするよりも防寒をキチンとしなさいと琥太郎に言われて、今回は厚手のスタイルで出かける。 ダウンコートに、ボアのマフラー、ニットの帽子に、ブーツにはブーツカバー。 防寒をしっかりして、月子は琥太郎との待ち合わせ場所へと向かった。 「お待たせしたね」 琥太郎は颯爽と車でやってきてくれ、月子はそれに乗り込む。いよいよ、クリスマスが始まる。 車に乗った瞬間から、月子はときめいてしょうがなかった。 「それぐらい防寒をしておいたほうが良い」 「はい。風邪を引かないようにきちんとしてきましたよ」 「ああ。月子は風邪を引きやすいからな」 琥太郎は柔らかく微笑むと、月子の頬を撫でてくれた。 頬にそっと触れられると、胸が爆発するのではないかと思うぐらいに、ときめいてしまう。 琥太郎の指先にはかなりの威力があった。 「何処に行くのですか?」 「うちの別荘だ。星が綺麗に見える。今年はクリスマスと土日重なって良かったな。一緒に出掛けられるから」 琥太郎は全寮制の学校の保険医兼理事長であるから、やはりクリスマスも仕事なのだ。 だが今年は、神様が味方をしてくれて、見事にクリスマスと休みが重なったのだ。 とはいえ、終業式だけを済ませなければならず、ふたりは午後ののんびりとした時間での出発となった。 車は高速に入り、山のある方向へとひたすら進む。 爽快なドライブ。 とても心地が良くて、思わず目を閉じてしまう。 「琥太郎さんが運転する車でドライブをするのが、本当に大好きなんですよ」 月子が甘く呟くと、琥太郎はフッととっておきの笑みをくれた。 車は山手に入り、雪や枯れ葉がよく似合う、西洋風な建物の庭に入っていく。 「ここが別荘ですか?」 「そう。自炊しないといけないが、鍋なら中に材料を入れるだけだから、お前でも問題はないだろう」 「そうですね」 琥太郎はクーラーボックスから食材を取り出して冷蔵庫に入れてゆく。 直ぐに夕食の準備に入る。 ふたりで協力をしてやったが、やはり琥太郎がかなりの部分をやってくれた。 女の子としては恥ずかしいがしょうがなかった。 ふたりで鍋をつつくクリスマスイヴ。 だが、山の美しい場所に、今はふたりきりなのだ。 それ以上にロマンティックなことなんてないような気がした。 ロマンスをあちらこちらで感じながら、月子は幸せな気分に浸っていた。 ときめき過ぎて、鍋がなかなか進まない。 「どうした? しっかりと食べなさい」 「はい。有り難うございます」 鍋は心から温まって美味しい。 「食事の後は天体観測をするからな。しっかりと食べて、しっかりと温まっていなさい」 「はい」 月子は躰を温めるために、鍋をしっかりと食べる、 クリスマスイヴにふたりきりで天体観測。 これ以上にクリスマスに相応しいものはないのではないかと思った。 食事を終えて、マグカップに温かな紅茶と紙皿に可愛らしいクリスマスケーキを置いて、ふたりはウッドデッキに出た。 寒いが、夜空を見上げると見事な星々だ。 空気が綺麗で、周りにも灯が全くないから、星はかなり鮮明に見える。 うっとりと見つめてしまう。 「赤い星はないのかな?」 「赤い星?」 「…キリストが生まれた時に、不思議に赤く光っていた星だ」 「探してみましょうか。クリスマスイヴですから」 ふたりで星談義に話を咲かせながら、温かな紅茶を飲んで、ケーキを食べる。 心に染み渡る幸せだ。 月子はつい笑みを零してしまう。 こんなにも幸せなことはないよ。 そう感じずにはいられなかった。 愛する琥太郎に寄り添って見上げるクリスマスの夜空。 清らかで心が澄み渡るような気がした。 「月子、寒くはないか? もう少し、こちらに寄りなさい」 「…はい」 恥ずかしくてしょうがなかったが、ときめく欲望には勝てなくて、月子はしっかりと琥太郎の躰にくっつく。 琥太郎の躰は見た目とは裏腹に、綺麗に筋肉が付いていて逞しくて、こうして甘えるのには最適な躰だと思った。 ふたりで寄り添って躰を温めていると、琥太郎が小さな箱をさりげなく月子に差し出した。 「メリークリスマス、月子」 「有り難うございます」 琥太郎からのクリスマスプレゼントが嬉しくて、月子はついにんまりと微笑んでしまう。 月子もまた、琥太郎へのクリスマスプレゼントをコートのポケットから取り出した。 「メリークリスマス、琥太郎さん」 「有り難う」 お互いへのプレゼント交換をすると、ときめきは最高潮になる。 「お互いに開けましょうか、プレゼント」 「そうだな」 月子はプレゼントのパッケージを開けようと頑張ったが、手が悴んで、上手くいかなかった。 「しょうがないな、貸してみろ」 「有り難う」 既にパッケージを開けていた琥太郎が、するりと開けてくれた。 するとジュエリーケースが出て来る。 「お互いに一斉に開けましょうか」 「解った」 琥太郎は優しく微笑んで頷くと、お互いにそっと箱を開けた。 「わあ!」 琥太郎がプレゼントしてくれたのは、月にオパールが縁取られた、とても可愛らしいペンダントだった。 そして、月子がプレゼントしたものも、同じように月にオパールが縁取られたネクタイピンだった。 月子の名前にちなんだ物と、琥太郎の誕生石のコラボレーション。 ふたりとも考えることが同じだというのが、また感動を生んだ。 嬉しくて、つい涙ぐんでしまう。 「有り難う…」 「俺こそ有り難う」 ふたりはお互いを想い合う気持ちを笑顔に乗せて、見つめ合う。 「愛している、月子」 「私も愛しています」 お互いにクリスマスの神聖なキスを交わす。 こんなにも幸せなキスはないと、月子は思わずにはいられない。 キスの後、琥太郎は月子にペンダントを掛けてくれた。 かけがえのないプレゼント。 美しい星空とクリスマスプレゼントを、月子は一生忘れないだろうと思った。 |