Heart Warming Night


 未来は珍しく風邪を引いてしまった。最近、里見からの容赦ない課題レポート責めに真剣に取り組み奮闘した 結果、かなりの労力を要した。優をせしめたのは良いが、その引き換えが風邪だった
 明日までに直らないと、相馬の手伝いに行けない。それは何とか避けたいと、大学から帰るなり、早目に寝てしまおうと思う。
 大体、あの原因不明の病以来、相馬は未来の健康には過保護過ぎるぐらいのところがある。疲れて目の下にうっすらと隈が出来ているだけで、心配するのだ。
 相馬に無駄な心配は掛けたくないので、地力で治そうと、スーパーで薬を買ったり、消化の良いものを買ったりする。
 だが、相馬の診療所にも近いスーパーだと、逢いたくない人物にも遭遇する。
 今、一番逢いたくない相手。それは病院の顔見知りの看護士た。
「あら、未来さん、こんにちは!」
「あ、こんにちは…」
 間が悪いことに看護士とばったり出会ってしまった。休憩中のお菓子でも大方買いに来たのだろう。未来はお約束にも鼻声なので、すぐにばれてしまう。
「どうしたの? そんな鼻声で…。風邪?」
「引いちゃったみたいです…」
 嘘はつけなくて未来は正直に話す。これで相馬にばれたのと同様だ。
「でも鼻だけなので、大丈夫そうです。薬を飲んで寝ていれば…」
「まあ、風邪は万病の元だけれど、あなたなら心配ないわよね。先生がついていらっしゃるから」
 意味ありげな視線を向けられて、未来はとことん真っ赤になる。相馬クリニック看護士の暗黙の事実。相馬が未来と付き合っていて、彼が恋人にめろめろだということ。
「あらこんな時間。早く戻らないと先生に叱られてしまうわ! じゃあ未来ちゃん、また明日ね」
「はい!」
 看護士の姿を見送った後、未来は大きく溜め息をつく。頭が重くてどうしようもない。
「…隼人さんにSOS出したほうがいいのかな…」
 未来は風邪で重い躰を引きずりながら家に戻り、風邪薬とビタミン剤を飲んで横になる。
 きっとおしゃべりな看護士からは、未来が風邪なことはばれてしまっているだろうし、少し酷くなってきたので愛する男性に助けを求めることにした。
 ”隼人さん、風邪を引いたみたいです。明日から隼人さんのお手伝いに行くので、今日は大人しくしています。未来”
 メールを打つと直ぐに送信する。これで安心したので、未来はゆっくりと眠ることにした。

 薬が効いたのかぐっすりと泥のように眠っていた。夢も見ずにただ眠っている。
 眠りを目覚めさせたのは、携帯電話の着信メロディーだった。恋人専用のもの。未来は直ぐに枕元にあった携帯電話を手に取り、出る。
「はい」
「未来、具合は大丈夫かい?」
 心配そうな優しい声が受話器を通して聞こえてくる。安堵がしっとりと体中に広がった。
「…さっきよりもマシかな…。一晩寝たら大丈夫ぐらいかな…」
「そう今日看護士の鈴木さんから聞いたけれど、結構悪そうだったって。心配だから、これから往診に行くよ」
「隼人さん、有り難う」
 未来の躰を人一倍心配してくれる恋人の存在が、何よりもの薬で、病を治してくれるような気がする。
「夕食は食べた?」
「まだ…。今まで寝ていたから…。隼人さんは?」
「僕もまだだよ。消化の良さそうなものを買ってくるから、待っていなさい」
「…うん。有り難う…」
「じゃあ、後で」
「うん」
 電話を切るなり、未来は直ぐに鏡を見た。寝起きなので幾分か顔がむくんでいるような気がする。こんな顔を大好きな男性には見せたくないとばかりに、顔だけでも洗って、ローションをたっぷり塗り、髪をとかした。そうしているうちに、相馬がやってくる。
 車が自宅のガレージに止まる音がしたので、直ぐに来てくれたことが解った。カーディガンを引っ掛けて、携帯電話を片手に下に下りる。
 相馬には合鍵を渡しているので、彼がそれで玄関を開ける音を聞いた。
「お疲れ様、隼人さん」
「わざわざ迎えに来なくても良かったのに…」
 目の前の相馬が心配そうに眉根を寄せるものだから、未来は笑って見せた。
「隼人さん、大丈夫だよ、私…。かなり具合もましにはなっているんだ…」
「油断は大敵だよ、未来」
 相馬は本当に心配そうにしている。未来はそれが嬉しい。重いのに黒の往診バッグを持ってきてくれた彼の優しさが、じんと心に染みた。
「うん。だけど隼人さんを見たら、薬を飲むより元気になれるみたい…」
「困った子だよ。君は…」
 苦笑しながら、相馬は未来の額を優しく触れてくれる。その仕草は、胸の奥をきゅんと締め付ける。素敵な仕草。
「熱は少しだけあるみたいだね。詳しくは診察してからだけど、思ったより熱もなくて安心したよ」
「先生…」
 小さな頃から幾度となく繰り返してくれたくしゃりと髪を撫でる仕草。子供なりに大好きな男性にされると、とてもドキドキとしたのを覚えている。胸が甘酸っぱくなるのは、今も同じだ。
「”先生”じゃないだろ? ちゃんと名前で呼んでくれよ」
「だって、隼人さん今は先生の顔だったから…」
「僕は君にはかなり大甘な医師だと思うけれどね。他の患者さんにはここまではしないよ」
「隼人さん…」
 嬉しさと恥ずかしさに、未来は更に頬を赤らめる。それが愛らしくて、相馬は笑った。
「簡単な冷凍鍋焼きうどんを買ってきたから。一緒に食べようか? それとも食欲はあまりないかな?」
「大丈夫…。私が作るね?」
 コンビニの袋を取り上げようとしたら、相馬は苦笑した。
「ダメだよ、未来。君は病人なんだから僕がする。座って待っていなさい。それとも、僕が調理をしている間は、ベッドに行くか?」
「ううん、座って待ってる。それほど悪いわけじゃないから…」
「だったら、待っていなさい。あたためるだけだけれど、たまには君の為に料理も悪くないね。いつもは作って貰ってばかりだからね」
「じゃあ先生に甘えちゃおうかな」
 おどけたように言うと、相馬の人差し指が未来の唇を捕らえた。
「”先生”じゃないだろ? ちゃんと名前で呼んでくれなきゃ。僕は君の主治医である前に、恋人でいたいからね」
「隼人さん…」
 甘いとろけそうな言葉に顔が赤くなる。このままもっと溶けてしまいたいが、そうはいかない。溶けるようなことをしてしまえば、相馬に風邪が移ってしまうから。
「さてと、夕食を作るから、座って待っていなさい」
「隼人さんお医者様になってる!」
「僕はお医者だよ。君の心と躰のね」
 くすりと笑った後、相馬はキッチンに立つ。誰かに食事の世話をしてもらうのは本当に久しぶりで、それだけでも嬉しいのに、しかもその相手が愛する男性であれば余計に喜びは高まるというものだろう。
 相馬が調理をする様をずっと見つめる。それだけで幸せな気分になった。
「今日のうどんは何?」
「うん、寄せ鍋うどん。インスタントで申し訳ないよ」
「隼人さんの心が篭っているのには違いないでしょう?」
「まあね」
 少し照れ臭そうに言う相馬がついカワイイと思ってしまう。ずっと年上でいつも頼ってばかりいる彼のこんな一面を見るのが、未来は何よりも好きだった。
「出来たよ。少しは食べないとダメだからね。薬とかビタミンは診察後に渡すから飲みなさい」
「はい」
 上げ膳据え膳状態というのは、嬉しい半面どこか心地が悪い。しかもしてくれる男性が好きな人だったら尚更だ。どちらかと言うと、してあげたい未来であった。
「いただきます」
「どうぞ」
 風邪の時に温かいうどんというのは、やはり嬉しい。つるつると喉越しが良いのは嬉しいことだ。
「美味しい…」
「中々いけるな、これ」
 愛しい人が傍にいる。それだけで笑みが零れてきた。

 食事後、簡単に相馬が後片付けをしてくれる。未来はそれを感謝しつつも、楽しく見ていた。
「さてと、患者さんはベッドに入って診察だ」
「きゃんっ」
 軽々と抱き上げられて、そのまま未来の部屋がある三階まで連れていかれる。
「隼人さん…、私、歩けるから、大丈夫よ?」
「ダメだ。君は病人なんだから」
 鼻孔を擽る相馬の香りにくらくらときながら、未来はしっかりと頑健な肩に縋り付いた。
 ベッドに寝かされて、相馬に見下ろされる。
「少し待っていなさい。すぐに診察をするから」
「はい…。先生」
「良い子だ」
 頬に軽くキスをすると、相馬は一旦一階に降りていく。直ぐに戻ってきた時には、ちゃんと往診バッグを持って上がってきた。
「さあ、診察を始めるよ」
「はい、先生…」
 相馬が白衣を着て、聴診器を首から掛ける。その仕草は本当に艶やかなような気がした。未来はうっとりと見つめずにはいられない。どうしてこんなに素敵何だろうかと思った。
 背中に手を宛てられて、先ずは上半身を起こされる。
「口を大きく開けて」
「はい。あーん」
 医療用の懐中伝統で未来の喉を覗き込む。口の中では金属のプレートで舌を抑えられ、ひんやりとしていた。
「喉が軽い炎症を起こしているな…」
 相馬が口から金属プレートを出すと、未来も口を閉じた。
「次は聴診だから、パジャマの前を開けて」
「…はい…」
 相馬の前で肌を開けるのは初めてではないし、何度も肌を重ね合っている。にも関わらず、未来は肌がばら色に染まり、指先が震えるほどのドキドキを感じていた。
 ぎこちない動きで、パジャマの前ボタンを外していく。それが切ないほど甘い気分になった。
「…先生、恥ずかしい…」
「診察するだけだから、気にしないの」
「…隼人さん…」
 パジャマをはらりと手に取って、相馬は聴診を始める。
 未来の胸の頂は既に立ち上がっていて、相馬の指先や唇を求めていた。意識しすぎて、妙に恥ずかしい。
 ひんやりとした聴診器が肌に宛われ、未来は甘さの含んだ声を上げた。
「いやん…」
「ちょっと冷たかったね。はい、深呼吸を一回して」
 未来が深呼吸をすると、相馬は真剣に様子を見ている。
「…もう一回…」
 今度は更に大きく深呼吸をすると、豊かな胸がふるりと上下した。
「次は背中」
「はい…」
 今度は背中に聴診器が宛てられる。
 パジャマの上半身を完全にぬがされた。
「…風邪、引いているみたいだな…。でも軽い感じがするよ
「良かった!」
 ほっとしたものの、ドキドキは続く。
 相馬は医師としてきちんと診察をしているだけなのに、患者の未来と言えば、妙に意識してしまう。繊細な指先で胸の頂を愛撫されれば、どれくらい心地が良いだろうか…。そんなことすら考えた。
「診察は終わりだよ。風邪が重くなると困るから、早くパジャマを着なさい」
「…はい」
 ぎこちなくなんとかパジャマを着て、相馬に向き直る。優しい瞳を覗き込んでしまった。
「ほら、薬。抗生物質、胃腸薬、解熱剤。後はビタミン剤だよ。これを飲んで、ゆっくり寝たら治るから。明日も診療後また診てあげるよ。明日は手伝いは無理しなくても良いからね」
 相馬の優しい声に何度か頷きながら、未来は薬を受け取る。
「これを飲んだら、寝なさい」
「…隼人さん、これを飲んだら帰っちゃうの?」
 もっと傍にいたくて、未来は泣きそうな瞳を相馬に向ける。これには彼も困ったように苦笑した。
「君が眠るまで看ていてあげるよ」
「有り難う」
 温かな手に包まれて、安心する余りに優しい気分になる。本当に相馬の傍にいるだけで癒される。
「じゃあ、薬を飲もうか?」
「うん…」
 薬を相馬が丁寧に出してくれて、未来はそれを掌に置いて貰おうと手を出した。
 だが、相馬は自分で薬を口に含むと水を軽く口の中に入れる。
 そして未来に何か言う暇を与えずに、直ぐに唇を重ねてきた。
「んんっ…」
 唇から唇に、薬がバトンされる。水と薬を流し込まれて、未来はそれを飲み干した。
「あっ…」
 コクリと喉が音を立てると、相馬は唇を離して抱きしめてくる。
「これで治るよ。きっとね」
「…隼人さんに移っちゃうわ」
「僕に移っても構わないよ、未来。次は君がきっと看病してくれるだろうからね」
 甘く微笑まれて、未来は恥ずかしさに俯くしかなかった。
「ほら、薬も飲んだし…、眠りなさい」
 背中に手を宛てながらゆっくりとベッドに寝かせてくれる。それはひどく優しい行為で、未来はその甘さに酔った。
 横になってからは手を握ってくれる。
「ん…。隼人さんは一緒にベッドに入らないの?」
「ベッドに入ると、添い寝以上のことをしてしまいたくなるからね」
 相馬は苦笑しながら未来の頬を撫でてくれる。
 添い寝以上のこと。大体何か解るだけに、未来は頬を紅に染めた。
「…隼人さん、私は構わないのよ? むしろ手を握ってくれることだけじゃ、足りないもの…」
「しょうがない患者だ」
 逆らうことなんて出来ないほどの甘い微笑みを浮かべた後、相馬はベッドの中に潜り込んできた。未来はその温もりを貪欲なまでに求めて、しっかりと抱きしめてきた。
「温かい…」
「それは良かった」
 愛する男性の温もりを真に感じる。心地良く官能を生む。
「…さっきね…、診察してもらっていた時に、凄くあなたに触れてもらいたかった…」
「診たら解ったよ。僕も凄く君に触れたかった」
 優しくパジャマの上から触れられ、目を閉じる。服の上から触れられるだけでも、凄く感じてしまう。
「あっ…」
「まだ服の上からしか触れていないのに、敏感なんだね…」
 くすりと笑った後、相馬は未来のパジャマのボタンを外し、隙間から手を差し入れる。
「やあんっ!」
 胸をじかに触れられて、揉み込まれた。ようやく触れてもらえた嬉しさに、甘い吐息が漏れる。
「…隼人…さん…」
 パジャマのボタンを全て外され、肌をあらわにされた。艶やかな視線に捕らえられると、今でも恥ずかしい。
「…やん…」
「可愛いね、君は本当に…」
 隠そうとする手を解けさせられた後、唇を奪われる。しっとりした甘いキスを受けるだけで、全身がざわめく。
「んんっ…」
 相馬が唾液を注いできた。淫らにもそれを交換しあい、舌を絡ませて吸い合う。
「んんっ…」
 唇を離された後は、首筋を口づけられた。深く吸い上げられる。
 相馬と恋人同士になった当初は、未来はオフショルダーの服を好んで着ていた。だが、彼が”未来は自分の物だ”とばかりに、所有の花を首周りに沢山付けるものだから、それ以来オフショルダーは着ていない。しかも発見したのは春子で、公平や堂本の前だったものだから、凄く恥ずかしかったのだ。
 首筋に唇を受ける度にそんなことを思い出す。
 だが思い出していると、直ぐに思考を快楽に奪われる。
「…あっ! 隼人さんっ!」
 パジャマの上を完全にぬがされると、白く豊かな胸を丹念にマッサージされる。ズンと子宮の奥に言いようのない快楽を感じた。
「…んんっ!!」
「さっき、君のここは凄く僕に触れてもらいたそうだったよ…」
 勃ちあがった乳首をしっかりとマッサージするように摘み上げられた。
「ああっ!!」
「何だか、君の胸がここまで大きくなったなんて、凄いよね。昔は一緒にお風呂に入ったこともあるのに…」
「もう、恥ずかしい…。隼人さん、”ハヤトお兄ちゃん”になってる…」
 未来が顔を背けると、相馬はおかしそうに笑って、更に胸の愛撫を続ける。
「やっん…」
 肌が熱い。どうしようもなく熱い。未来は相馬の肩にしっかりと抱き着いた。
「ああっ…!」
 相馬の唇がようやく乳首を捕らえてくれた。音を立てて吸われるのも悪くない。だが一番して欲しいのは、相馬隼人とひとつになること…。
「あっ…!」
 スーパー外科医の相馬の手は、大きくて繊細。子供の頃と同じく器用で優しくもある。
「…隼人さん…」
 この指先に何時絶頂を味合わされたことだろうか。この繊細な指先は、どこを触れて欲しいかいつも判っている。
 胸がどうしようもなく傷むほどに張り詰めてくると、今度は下腹部に手が下りてくる。
「ああんっ…!」
 一気に下着を脱がされ、熱い場所に指を入れられた。すでにそこは相馬を受け入れたくて、たっぷりと蜜を滴らしている。
「…未来、随分、濡れているね…」
「いや、言わないで…」
 相馬の指が濡れて滑り、未来の肉芽を撫で付ける。全身に眩暈がするような快楽が走り、唇を噛んだ。
「愛してるよ…。君の総てが好きだよ、未来…」
「隼人さんっ…!!」
 くにくにと指先が熟れた肉芽を摘む。じんわりと涙が滲むほど感じて、相馬の逞しい肩に縋った。
「隼人さん…っ!」
「ホントに未来は可愛いね…」
 甘いキスを何度も受けて、未来は腰を揺らす。早く隼人とひとつになりたくて、そこをしっかりと指に擦り付けた。
「まだ早いよ、未来…。君を充分に愛していない…」
「隼人さん…っ!」
 相馬の熱い息がかかった。甘いそれに、未来は腰を僅かに上げる。
「隼人さん…っ!」
 腰をぎゅっと抑え込まれると、濡れた部分を丹念に愛撫される。未来は感じ過ぎてどうにかなりそうだった。
「あっ、あああっ、ああ…」
 音を立てて思い切り吸われながら、相馬の指が容赦なく胎内に入った。
 くちゅくちゅと淫らな水音が響かせながら、指を二本挿れられて、出し入れを繰り返される。
「…んんっ、ああっ…」
 先程まで未来を診断していた指は、淫らなものに変わっていた。
「…隼人さん…」
「凄く…濡れているね…。それだけ感じてくれていて、嬉しいよ…。僕では吸い上げきられないくらいだ…」
「やだ…っ! 言わないでっ!!」
 ここまで掠れた声で淫らに囁かれると、未来はたまらなくなった。全身で感じてしまっている。
 肌が紅に染め上げられ、どうしようもないほど震える。感じ過ぎて、思考もぐちゃぐちゃになっていた。
「…隼人…っさんっ!」
 舌と指で容赦なく秘密の場所を攻め立てられる。限界が近い。
 相馬にきゅっと熱い場所を甘噛みをされた。
 限界の余りに、未来はがくがくと震える。もう感覚に素直になるしかない…。
 そこまでしか記憶はなく、気がつくと微笑みを浮かべている相馬と目が合った。
「良かっただろ?」
「もう…、隼人さんのバカ…」
 顔をそっと隠そうとすると阻止された。
「可愛い顔を隠すなよ…」
「隼人さん…」
 優しい艶やかな眼差しが好き…。
 見つめ合うだけでは熱い部分がもどかしくて、未来は相馬の熱い部分に濡れた部分を押し付けた。
「挿れて欲しいのか?」
 恥ずかしかったが、未来は素直に頷く。
「可愛いね…、君は本当に…」
 くすりと笑った後、相馬は甘いキスをくれた。
 脚を大きく広げられる。熱く昴まった硬いものがゆるやかに未来の入り口を撫で付ける。
「はあっ…! 隼人さんっ!」
 撫でられるだけではもどかしい。未来は切なげな声を上げると、相馬に更に腰を擦り付けた。
「…君は開発しがいがあるよ…。ホントにね…」
 緩やかに入り口を押し広げるように、相馬の熱い物が挿ってきた。
 未来の胎内の襞はうごめき、相馬を締め付けて飲み込む。ここまで来ると、もはや彼にも理性は効かないようで、 ぼやける視界の中で相馬の表情が苦しくなるのが映った。
「くっ…! 君はどうして、こんなにいいんだろうね…」
 一瞬動くのを止めた相馬は、本当に堪えるのが苦しそうだった。
 相馬の大きな熱が未来を押し広げる。まるで化学変化を起こしたように、全身が熱い。
「ああっ…!!」
 圧迫される相馬の熱に、未来はたまらず縋り付く。ぐっと躰を起こされ、更に密着した。
「あっ、ああ、ああんっ!」
 烈しい注送に眩暈がするぐらい感じる。鋭く突き上げられて、未来は自分を忘れてしまうほどに激しく感じていた。
「あっ、ああ…」
 感じる余りに唾液が流れてしまい、それを相馬がキスで拭ってくれる。
 烈しい腰の動きと同じく、唇を割って入った舌がうごめいた。
「んんっ…、ああっ!!」
 胎内の熱が爆発を待っている。何度も激しく突き上げられ、高まりの限界を迎えていた。
 貧るように求められる。だが未来も貧るほどに相馬が欲しくて、いやらしくも腰をくねらせ、締め付けた。
「未来っ…!!」
 更に相馬の突き上げが強くなる。未来の感じる場所を良く知っているせいか、その部分ばかりを重点的に突き上げてくる。
 もうどうしようもない。相馬しか感じない。鮮烈に彼だけを想う。
 頭の先から爪先まで、総て彼を愛している。
「…ああ…、隼人さんっ…!」
 ぐっと力強く彼に突き上げられた。
 全身総てが痙攣する。もう何も考えなくて良い…。感じられればそれで充分だ。
「あっ、あああああんっ!」
 未来はひどく震えるとそのまま絶頂を迎える。
「未来っ…!」
 相馬の躰も震え、力強く温かな液体が胎内に注ぎこまれた。

 やんわりと意識が戻ってきた。肌が凄く敏感に感じる。
「…風邪引いて、薬を飲んでいる君を攻め過ぎてしまったね…」
 いつも愛し合った後はとても優しい相馬が、未来は大好きだった。
「…大丈夫よ、隼人さん。風邪だったこと、私が忘れたぐらいだから…。隼人さんのお陰で、凄く良くなったよ、風邪」
「だったらいいんだけどね」
 相馬は苦笑すると甘いキスをくれた。未来はそれがひどく嬉しい。
「…朝まで一緒にいてね」
「もちろん…」
 甘く囁くと、相馬はとびっきりのキスをくれた。

 いつもより少し早く目覚めた。
 昨夜はあんなに喉が痛かったのに、今日はまったくすっきりとしている。
「これも、隼人さんのお陰かな…」
 横でぐっすりと眠る恋人を起こさないように、未来はそっと躰を起こす。
 このお礼にとっておきの朝食を作って上げよう。
 未来はそっとベッドから用心深く出ると、身支度の用意をしてシャワーを浴びる。
 その後は、大好きな男性のために腕を振るって上げるのだ。
 キッチンに立ち高速で先ずはご飯を炊く。
 その間に朝食の準備だ。
 普段はひとり暮らしで、きちんとした朝食を食べていないであろう相馬のために今朝は腕によりをかけよう。
 みそ汁を作って、だし巻き、ウィンナー、そして、幼い頃一緒に食べたイカナゴの佃煮も出して上げよう。野菜も必要だから、簡単なサラダも作って上げよう。
 未来は馴れた手つきで手早く料理をしながら、とても楽しい気分になった。
「未来…、もう起きていたのかい?」
 少し遅れて起きてきた相馬が、背後から抱きしめてくる。
「ごはんの準備しているの…。美味しい朝ご飯を作るからね」
「無理するなよ?」
「大丈夫…」
 柔らかく笑うと、相馬がキスをくれる。”おはよう”のキス。結婚をすればきっともっとしてくれるだろう。そう思うと、未来は嬉しくてしょうがなかった。
「もう少しでご飯が出来るからね。隼人さんもその間出かける準備をしてね?」
「判った。シャワー浴びて支度してくるよ。今日は途中まで一緒に行こう」
「うん」
 相馬が離れてしまったのを少し切なく想いながら、未来は精一杯の朝食作りに精を出す。
 美味しく食べて貰いたい…。
 それだけを思って朝食作りに励んだ。

 相馬が支度を終えた頃、ご飯も炊きあがって良い感じに朝食ができあがった。
 メニューは、白ご飯、みそ汁、だし巻き、イカナゴの佃煮、野菜サラダにウィンナー。どこか懐かしい雰囲気のある朝食だ。
 そう。ふたりが育った孤児院の朝食に似たメニュー。こんなにも多い量でなかったが凄く似ている。
「懐かしい朝食のメニューだね」
「あり合わせのものと、私の記憶では、隼人さん、だし巻き、イカナゴの佃煮、ウィンナーは好きだったのを覚えてるから」
「そうだったね…。美味しそうだし、頂こうかな」
「どうぞ!」
 相馬が席に着くと、未来も向かいの席に着く。何だかくすぐったい。
「いただきます」
 共に手を合わせて、いただきますをしてからふたりは朝食を食べた。
 どうか気に入ってもらえますように。
「ホントに未来は料理が上手だね。だし巻き凄く美味しいよ。みそ汁も旨いしね」
 イカナゴの佃煮を美味しそうにほおばる相馬を見て、未来は本当に嬉しい。
「イカナゴの佃煮、美味しいですか?」
「うん。美味いよ。ひょっとして、これは君が作ったの?」
「はい。両親がいたときは、それこそ明石までイカナゴを買いに行って家で作っていたんですけど、今は私独りだから、スーパーで少しだけ買って作っています。常備出来るから、今も作っています。余り食欲ないときとか、作るのがおっくうだと感じるときには、良いおかずになってくれますから…」
「買ってきたと思ったよ。僕も懐かしくて良く総菜で買って食べるんだよ。白いご飯に合うからね」
 ふたりは”お袋の味”であるイカナゴの佃煮の話ですっかり盛り上がった。
「今度、隼人さんの分も作って良いですか?」
「ああ。お願いするよ。楽しみだな」
「楽しみにして下さい!」
 今朝の朝食は何て美味しいんだろうと思う。
 それは相手がいるから。「美味しい」と言って食べてくれる相手がいるから。
 いつか、一緒になれたら、毎日美味しいご飯を作って上げたい。隼人さんの子供に美味しいごはんを食べさせて上げたい…。
 未来はそう遠くないだろう幸せな将来を想い、幸せな気分になっていた。

 食事の後、身支度をして、ふたりとも家を出る。
 相馬が大学の近くまで送ってくれるのだ。
「じゃあ、未来。夕方に…」
「うん…。隼人さんいってらっしゃい」
 甘い”いってらっしゃい”のキスをしてから、車を降りた。
 相馬の車が行き過ぎるのを見送ってから、未来は姿勢を正して学校に向かう。
 たまには風邪を引いて看病して貰うのも良いかな…。
 隼人が心配するのは心苦しいが、甘い半日を過ごして、未来はそう思わずにはいられなかった。

コメント

甘い看病のお話です。
話の中に出てきた「イカナゴの佃煮」ですが、これは関西しか食べられないものみたいです。
特に大阪と兵庫県しか食べないのかな?
これが出てくると「春」って感じがするんですよね。




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